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「超少子高齢化 求められる社会保障は」(時論公論)

藤野 優子  解説委員

これからの社会保障などの制度設計の土台となる、今後50年間の日本の人口推計が公表されました。
前回5年前の推計に比べて、出生率が上昇し、少子高齢化のスピードはやや緩やかになったものの、人口の多い団塊ジュニア世代、今の40代が出産可能な年齢をすぎたため、いよいよ日本は超少子高齢化の険しい坂道を長期にわたって登っていくことになります。

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何十年も先のことなど自分には関係ないと思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、皆さんのお子さんやお孫さんが今よりはるかに重い負担や給付の削減という厳しい現実に直面することになるのです。
ここでは、▼今回の推計でも、高齢者一人を現役世代一人で支える「肩車型社会」になることが避けられないという現実。そして、▼今、私たちの世代が何に取り組まなくてはならないのか。とりわけ、改革が遅れている社会保障の課題を考えていきたいと思います。

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では、新しい人口推計の内容を見ていきます。おととしの国勢調査の結果をもとに推計されています。
▼まず総人口です。現在の人口は1億2700万人。
これが、50年後の2065年には8800万人に減少します。
今の人口規模の3分の2に縮小します。
▼次に、高齢化率です。
今は、65歳以上の人の割合が27%、これが2053年に38%まで上昇し、その後も38%の高い状態が続くと推計されています。
▼一方、現役世代、15歳から64歳までの人の割合は、今の61%から51%に減少します。

前回5年前の推計と比べますと、出生率の見通しなどが上がり、少子高齢化のスピードはやや緩やかになりました。
しかし、今後は出産できる年齢の女性の数そのものが急速に減っていきます。
仮にこれから多少出生率が上がったとしても、出生数そのものが大きく増えることはもはや期待できません。
一人の高齢者を何人の現役世代で支えるかという数字をみても、今は、2.3と、一人の高齢者を二人の現役世代で支える社会ですが、50年後には1.3と、一人の高齢者を一人の現役世代で支える「肩車型社会」になることに変わりはなく、より厳しい時代が近づいているのです。

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日本は今後30年から40年もの間、超少子高齢化の険しい坂道を登り続けていくことになります。人手不足が一段と進み、低成長が予測されています。
高齢者や女性の力、AI・人工知能などを活用しながらどう経済活動を維持していくのか。インフラや交通網の維持にどう取り組むのか。地方のコミュニティーの消滅をどう防ぐのか、外国人の受け入れをどう考えるのかなど課題は尽きませんが、中でも、見直しが最も遅れているものの一つが社会保障です。

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実は、消費増税とセットで行われた社会保障改革では、8年後の2025年までしか将来像が示されませんでした。
2025年は最も人口の多い団塊の世代が全て75歳以上となる時代。
都市部で医療や介護が必要な高齢者が急増する為、今、政府は、在宅での医療や介護に取り組む医師や看護師を増やしていこうとしています。
しかし、二度の消費増税の先送りなどで、財源が今後どの程度確保できるのかわからず、この2025年までの対策でさえ、どこまで実現できるか見通せない状況です。

そして、さらに厳しい時代に入るのが、団塊ジュニア世代(今の40代)が高齢期に入る2030年代後半からです。この時期は、高齢者数が2042年にピークを迎える一方、働く世代も急速に減少します。しかも、この世代は、就職氷河期のころ社会人となったため、やむなく非正規で働き始めた人も多く、収入が少ないために将来低所得となる見込みの人が上の世代より多くいると言われています。また、未婚率も高いうえに、持ち家がある人の割合が低いのです。

ところが、今の社会保障制度は、「高齢期には夫婦二人で持ち家で暮らす世帯」が多かった頃に制度設計されたものです。しかし、今後年金は実質減っていき、持家のない人が年金から家賃を負担するだけの余裕はありません。一人暮らしの増加で家族の支えもない人も増えていきます。今の制度のままでは、生活保護の受給者が膨れ上がると指摘され続けながら、まだ将来に向けた改革論議が進んでいないのです。

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では、「肩車型社会」という厳しい現実が近付く中、これから先の社会保障制度をどう見直していけばいいのでしょうか。
まずは、2030年代後半以降を視野に入れた、給付の将来構想をつくるための議論を早く始める必要があります。
そもそも「高齢期には夫婦二人で持家で暮らす世帯」を標準としていたこれまでの社会保障の制度を、「一人暮らしで持ち家がない人でも支えられる制度」に変えなければなりません。しかし、これからの現役世代の負担の重さを考えれば、年金などの給付を大きく増やすことは難しいでしょう。

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そこで、私は一つの案として、今の年金、医療、介護という社会保障の柱に加えて、低所得者の生活を下支えするために、新たに「住宅手当」の制度を社会保障の土台に組み込むことを検討してはどうかと思います。生活保護等もありますが、それとは別に新たに「手当」を設けて住まいさえ保障できれば、生活保護に陥らなくてすむ人たちが多くいるのではないか、という指摘も専門家の間で出ています。先進国でも住宅手当を設けている国が多いですし、増加する空き家を活用した現物給付を含めて、日本でも低所得者のための住まいの保障を社会保障とリンクさせてはどうでしょうか。

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また、既存の制度についても、先を見据えた論議が必要です。
例えば医療。自己負担のあり方も見直していく必要が出てくるかもしれません。今、高度な治療技術や薬の開発が日進月歩で進んでいます。こうした治療が保険で受けられるようになれば喜ばしい事ですが、一方で保険財政をどう維持するかという問題が生じます。低所得者への配慮は必要ですが、例えば、費用が高い高度な治療の自己負担割合は据え置き、軽い風邪などの治療の負担割合は高くするなど、優先順位をつけていくことも必要になってくるかもしれません。

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さらに、税や保険の負担のあり方についても根本的な見直しが必要です。日本の税と社会保険料の負担は、この20年、高所得者より低所得者層で増えてきました。これを早く、経済力に応じた負担の仕組みに見直さなければなりません。また、経済成長を待っているだけでは社会保障の改革は遅れるばかり。さらなる消費増税等の議論も、もはや避けて通れません。

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そして、何と言っても、希望する人が子どもを産み、安心して子育てできる社会に早く変えていく必要があります。そのためにも、教育費の負担軽減や保育所の整備はもちろん、女性も高齢者も含めて働きやすい社会に変えること。また、元気な高齢者には働いてもらって社会を支える側に回ってもらうことも、現役世代の負担を和らげるうえで、重要なポイントとなります。さらに今後、人材を確保するために、外国人の受け入れの拡大の議論も避けて通れなくなるでしょう。

今後30~40年続く、急速な超少子高齢化の時代を乗り切るために、今の時代を
転換期と位置付け、果敢に新しい社会のシステムを設計していくことができるのか。今、私たちの構想力が求められています。

(藤野 優子 解説委員)

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