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時論公論 「電力自由化を生かすには」

関口 博之  解説委員

▽4月からの電力の小売自由化が間近に迫ってきました。
消費者が電気を買う会社を選べる、選択肢を手に入れるという画期的な出来事です。
まずは混乱なく新制度が始まるよう、万全の準備を電力会社はじめ、
関係者には望みたいと思います。
その上で、自由化のメリットを最大限生かすための課題を考えます。
 
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▽今日の解説のポイントはこの3点。
 
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(1)自由化の最大の狙いは、やはり料金を下げること、その現状を見ます。
(2)また、自由化は再生可能エネルギーの後押しにもなります。
(3)そして、長期的な供給力の確保も忘れないように、です。

▽まずは料金、新規参入する会社は「お得感」を出そう躍起で、
大手電力の現行料金より安い価格を、次々打ち出してきています。
その対抗上、大手も新しく設けた自由料金では、値下げに踏み切り、
競争原理は想定通り働いているように見えます。
こうして、大手電力がコストの削減に継続的に取り組むようになれば効果は大きいはずです。
 
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▽ただし、こうした料金メニューは、電気の使用量が平均より多い世帯を
主に対象にしているところに課題もあります。
使用量が少ない世帯は、メリットがなかったり、
切り変えると逆に高くなる場合もあって、
今の規制料金のままでいる方が良いケースも多いのです。
これには、元々福祉の観点から、使用量が少ない場合の
料金単価を割安に設定していたという背景もあるのですが、
こうした世帯にも恩恵が及ぶプランも検討すべきでしょう。
また規制料金が残るのは2020年までの予定なので、
その経過措置が終わった後、料金が跳ね上がったりしないよう、
目を光らせることも肝心です。

▽料金面での「創意工夫」というのも自由化の狙いの一つです。
 
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その点ではセット割が、ガスや携帯電話、ガソリンなどとの組み合わせで様々出ています。
また、「節電割引」といった新しいプランも出てきました。
これは、例えば電力使用量がピークになる夏の午後に、
電力会社からの節電要請のメールに応えて節電すると、
その量に応じた値引きが受けられるというものです。
電気の使い方をしっかり考える、賢い消費者も増えてきそうです。

▽しかし、こうした新料金やサービスがどこでも受けられるわけではなくて、
地域によって差があるのは否めません。
 
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これは今月23日までに電力会社を切り替えたいという申し込みがあった件数です。
世帯数全体からみればまだ、1%にも満たない数ですが、
「出足」を見ると、東京電力の管内が19万件、関西電力管内が9万件とやはり多く、
逆に四国・中国・北陸は少ない件数に止まっています。
新規参入がまだ少ないためで、これを着実に増やしていく工夫が必要です。

▽自由化で消費者が期待するのは料金だけではありません。
「できれば再生可能エネルギーを選びたい」という消費者の声は少なくないのです。
そういう声が生きれば、自由化は再生可能エネルギー拡大の後押しにもなります。
今日のポイントの二つ目です。
 
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▽これは、環境NGOなどが作っているインターネット上のサイトです。
再生可能エネルギーの電力小売りに取り組む会社を、
市民の側から応援しようという動きです。
この団体では、再生可能エネルギー中心に電源を調達していて、しかも
地域に根差した取り組みをしている事業者を選んで、HPで紹介しています。
 
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▽再生可能エネルギーは太陽光発電や風力発電など、
純国産で、環境に優しいエネルギーです。
今回、例えば地元の住宅などで太陽光発電した電気を買い入れて、
それをまた地元の家庭に販売する、
電力の「地産地消」をしようという会社も登場しています。
自治体が主体になって始めているケースもあります。
また、どこの発電所で作られた電気かを示して買って貰うという
「顔の見える」、産直のような仕組みを考えた事業者もいます。

▽ただ、再エネで十分な発電量を確保するのには苦労もあります。
太陽光や風力は出力が天候次第で大きく変動してしまいます。
そのため多くの事業者は今、バイオマス発電や小水力発電に力を入れています。
バイオマスは木くずや間伐材を元にした木質チップを燃やしたりするものです。
燃やせば二酸化炭素は出ますが、それは樹木が育つ過程で吸収した分とで
相殺されているというので、再生可能エネルギーに区分けされています。
また小水力はダムを作らず、川や農業用水の流れを利用して発電します。
どちらも安定して発電ができるのが利点ですが、
実際には、思うように増やせていないということです。
再エネを選ぶという試みは始まったものの、
まだやっと「芽」が出た段階といえそうです。

▽そして、ここからは3番目のテーマ、
長期的な供給力をどう確保するか、という課題です。
 
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自由化で競争が激しくなると、小売事業者は、
どうしても短期的な収益にばかり目を向けがちになります。 
簡単に言えばコストをギリギリまで抑えることで利益を出すという発想です。
将来を見越した投資をし、長期的な供給力を確保することが、
おろそかになってしまう恐れがあります。

▽それが、特徴的に表れるのは原子力発電かもしれません。
政府は、原子力規制委が基準に適合していると認めた原発については
再稼働を進めるとしています。
そして2030年の原子力発電の比率を
発電量全体の20%~22%にするという目標を立てています。
ただ、その実現にむけては様々な議論があります。
「運転開始から40年を超える老朽原発まで、動かし続けて良いのか」
「古い炉を廃止し、最新型に建て替える方が、安全性は高まるはずだ」
という意見もあります。
 
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▽しかし、電力会社に今、そうした動きは見られません。
建て替えには長い準備期間と巨額な投資が必要ですし、
自由化後は、それを料金で回収できるという保証もありません。
また、先に大津地裁が高浜原発3・4号機の運転を差し止めた決定のように、
何らかの理由で稼働ができなくなれば、投資が無駄になるリスクもあります。
しかも、原発への国民の不信は、まだ拭いきれていない中、
そもそも政府自身が、この原発の建て替えの議論を封印しています。
けれども安定的な電源確保の重要性を考えれば、議論はやはり必要だと思います。
 
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原発をやめて、代りに石炭火力を増やせば、
CO2の排出増という別の問題も起きてしまうのです。

▽もちろん将来に目を向ければ、
今あるこれらの電源だけが候補なわけではありません。
高効率の火力発電や、水素の活用などといった技術が具体化する期待もあります。
それらも含めて、供給力確保の道筋をしっかり付けていく必要があります。

▽ここまで「自由化後の料金のあり方」、「再生可能エネルギー拡大への期待」、
そして「安定供給の課題」を考えてきました。
そこに見えてくるのは、自由化になっても電気は極めて公共性の高いもの、
「公共財」だという原点です。
新規参入組も含め、全ての電力会社には、
当然、責任を持って、それを担ってもらわなければなりません。
一方、私たち消費者も、実はエネルギーの将来に影響を及ぼすことになるのです。
そのことも念頭に置きながら、電力をどう選ぶかを考えたいと思います。
 
(関口 博之 解説委員)


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