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時論公論スペシャル 「新年度予算案を問う~財務大臣インタビュー~」

板垣 信幸 解説委員 / 合瀬 宏毅  解説委員 / 竹田 忠 解説委員 / 今井 純子 解説委員

板垣)通常国会は4日に召集され、今年度の補正予算や、新年度の当初予算案の審議が行われます。麻生副総理兼財務大臣へのインタビューを交えながら、担当の解説委員とともに検証します。
 
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板垣)財政全般を担当する今井さんから一言。

(新年度予算案の印象)
今井)痛みを伴う改革は、先送りで、結局は、夏の参議院選挙を意識した、ばらまき予算という印象。企業の業績が好調で、税収が増えるのであれば、もっと借金を減らせたのではないかと思う。
                 
竹田)今回の予算案を一言で言えば、「国に入る税金がドンドン増えてラッキー!」というもの。前年度の当初予算と比べて税収を3兆円ぐらい多く見積もっている。でもその前提となる経済成長は、景気実感に近い名目で3.1%、実質で1.7%。15年度の見込みの名目2.7%、実質1.2%より相当高くしている。
本当にあてにしても大丈夫?という感じです。

合瀬)借金圧縮の絶好の機会なのに、景気拡大で気分よくばらまいた印象。農業予算でもTPP対策を本気で考えなければならないのに、コメの価格維持のように昔ながらの政策が大きな比重を占めて、財政規律がすっかり緩んだ印象を受けます。

(予算案の全体像)                         
板垣)麻生大臣のインタビューの前に、新年度予算案の全体像を簡単に見てみます。
 
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まず、総額は96兆7000億円と過去最大を更新しました。歳出は政策的な経費73兆円あまり、借金の返済が23兆6000億円です。一方、歳入の方は税収が57兆6000億円と大幅に伸びることを見込んでいます。そして足りない部分は国債の発行、つまりは新たな借金34兆4000億円で埋め合わせするという構図です。
 
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歳出の中身を見ると年々自然に増加する社会保障関係費が伸びたほか、防衛費が初の5兆円台に膨らみ、公共事業費も高水準です。
こうして見ますと、努力の跡も見られますが、相変わらずの借金まみれの国家財政と言えます。
こうした問題に麻生大臣はどう答えるのでしょうか。前半は歳出関連を中心に、後半は税制改正を中心に、二つに分けてお伝えします。それではVTRをご覧下さい。

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【麻生大臣インタビュー】               
板垣)この予算案なんですけれども、またしても過去最大を更新しましたですね。その歳出削減、甘いのではないかという指摘の声もあるんですが、そのへんはどう考えますか?

麻生大臣)よく言われてるように、少子高齢化によって、間違いなく黙ってて1兆円とかいうような予算が、社会保障関係で、伸びていかざるをえない部分がありますんで、その分が概算要求の段階でも、6千7百億円ぐらい出てたものが、結果として4千4百ぐらいになっているなどなど、いくつか歳出削減っていうのは、なされていますんで、そういった意味では、診療報酬等々も、全体としてマイナスになってますんで、いろんな意味では、やるべきところに関しては、結構それなりに収まるとこへ、収められたかなという感じがしますけどね。

板垣)さて増加した項目たくさんありますけれども、防衛費がですね、安倍政権になってから、ずっと増加し続け、今回初の5兆円台乗せということですね。これはですね、どういうふうに大臣は、お考えですか?

麻生大臣)これは中期防衛計画というのが、前々から決まってますんで、これは平成26年度から、5か年計画でずっと決まってますんで、その枠でいきますと0.8パーセントの伸びということで、その数字内に収まっていますんで、我々としては、きちんとした状況に合わせて、きちんとやるべきことは、やっておかないかんということで。

板垣)安全保障関連法案が成立したことと、今回の予算の増額というのは、これはリンクするんでしょうか。

麻生大臣)全然しませんね。

板垣)しないですか。そうしますと1つは、円安による海外からの装備品の購入。これが割高になっているという。

麻生大臣)それは確かです。

板垣)それはアベノミスクの副作用でしょうか。

麻生大臣)そうですね。副作用っていえば、悪いとこだけ見れば、NHK的にはそうなんでしょうけども、我々から見たら、円安のおかげで、多くの企業の利益を生んでますから、そういった面から、法人税収が増えてきてますんで、そっちの面のプラスの面も、考えないかんとこだと思いますけどね。

板垣)さて日本の経済を支える部分で、重要なエネルギーの予算なんですけど、COPの話し合いもあったりして、温暖化対策もちゃんとしなきゃいけない。そのへんの手当は、十分今回行き届いたんでしょうか。

麻生大臣)そうですね。これはパリの会議で、参加国全員で、これをきちんとみんなでやろうという合意に達したんで、全員でやるということになるんだったら、それなりの負担は、それぞれ分かち合うということで、私どもとしては、それに見合った、いわゆる太陽光始め、いろいろな風力、いろんな形の予算いうものを、わたしどもとしては、対応してきたと思っています。

板垣)そうしますとそのトレンドは、今後もずっと続けていかなきゃいけない。

麻生大臣)続けていかざるをえんでしょうね。他の国がどうなるか知りませんけど、日本は日本として、きちんとその方向で、今後ともやっていかなならぬもんだと思ってますけどね。

板垣)エネルギー分野のもう1つの問題は、原子力関連予算ですね。再稼働したところもありますけれども、一方で、やはりもんじゅのように、何も成果が出ないまま放置されている問題。この原子力予算は、まさにもう1回議論しなおして、きちっと効率化すべきじゃないんでしょうか。

麻生大臣)そうですね。今回も輸送船の開栄丸でしたっけ、船の予算を大幅に減らしたり、もんじゅの予算も大幅に減ったりしてますんで、そういったような見直さなきゃいかんところってのは、あるんだと思いますんで、そういったところは、きちんとやっていく傍ら、原子力に勝るほどの効率の良い電気になるようなもの、そういった開発を進めながら、きちんと原子力が、やがて原発に頼らなくてもいいようなものに至るまでの間は、ある程度原子力発電というもので頼らざるを得ないところがありますんで、そういうものは、現実論としては、それで対応していかざるをえんというところは、あるんだと思いますけどね。

板垣)今回の予算編成で、鳴り物入りで始まった1億総活躍予算ですね。確かに保育あり、教育あり、介護あり、あと景気刺激型の政策もあり、総花的にたくさんありすぎてですね、ちょっと焦点が絞りにくいかなという気もしたんですが、いかがですかね。

麻生大臣)1億が全て活躍するとなったら、総花的にならないと1億総活躍にはなりませんから、それは必ずそうなるんだと思いますけれども、教育の部分にしても、保育の部分にしても、いろんな形で、女性が活躍しやすい形をと思っているんで。今やっぱり意識も大分変わってきてるんで、子どもが生まれるから、仕事辞めなきゃいかんとか、いちいちそういったようなことあると、やむをえんと思いますけれども。それからあと続けられるようにという時代になってやしませんかね。全部が全部そうとは言いませんけど。

板垣)今回の予算編成でちょっと気になったのは、その直前に決まった補正予算ですね。この中に本来は、当初予算で議論すべき材料は、かなり入っていると。公共事業も、社会保障関係も。口の悪い人言わせると「選挙対策じゃないか」、とこんなことも言います。どうでしょう。

麻生大臣)毎回言われますから、別に焦ることはないと思いますけどね。毎回の話じゃないですか、そんな話は。大体ためにするような話ってのは、いつもそう思ってますけれども。基本的には、わたしどもから見て、少なくとも急ぐ話でももちろんありますし、そういった意味からいったら、補正予算で今やっとかないと、少なくとも来年の当初にあたって、やっぱり景気というか、GDPというか、いろんな表現がありますけども、そういった経済の成長というものを、少なくとも、きちんと保っていくという形にしておくためには、補正っていうので、なんらかの対応をやっておく。

板垣)緊急的なもの、災害復旧は、それは補正でやるべきだと思いますけど、一方で低所得の高齢者に3万円配ると。これは補正でやらなくても、当初予算できちんと議論しても良かったのじゃないですか?

麻生大臣)これはだけど、もともと6万円のところが3万円っていうことになったんだと記憶しますけれど、ああいったようなものは、間違いなく我々としては、はなからやるつもりだったものですから、給料の上がった人は良いけれども、上がってない人、世の中いっぱいいますから、そういったところの人たちにとっては、低所得者とか、またいわゆる年金生活者とか、そういったところにとっては、少なくとも物価は上がってますから、そういったものに対して、しかるべき対応は必要だということは、間違いない事実だと思いますけどね。

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板垣)御覧のように麻生大臣は、社会保障関係費は出来るだけ削減したことを強調し、防衛費の5兆円超えは計画通りのことで円安の影響も加わり増加したとの見解でした。また、エネルギー予算については、再生可能エネルギーなど新たな電源を開発するのは当然で、原子力予算の無駄の削減も進める考えを示しました。ただ、原発に頼らなくてもいいようなものが出来るまでは、ある程度原子力に頼らざるを得ないとの考えも合わせて示しました。それでは、この予算をどう見るのか各委員に聞きます。

(社会保障関連予算)
板垣)まず、最大の予算項目である社会保障関係費は抑制されたか。

竹田)まず最初に、麻生大臣が触れた高齢者への給付金の話しで、3万円とか6万円とかいう数字が出てきたので、ちょっと補足しますと、まず、来年4月、消費税が8%から10%に上がります。すると、それと同時に、増税の影響を緩和するために、「低年金の高齢者」に対して、毎月、5000円の支給が始まります。月5000円なので、年間だと6万円になるわけです。これはもう決まっていて、法律も通っています。
一方、これとは全く別の話しとして、今回の予算案(補正+当初)の中に入っているのが、「低所得の高齢者」に対して、景気対策的な意味合いで3万円を一度だけ、配ります、というもの。いつ配るかというと、今年の春。つまり、参議院選挙の前。
それで、これは選挙対策ではないのか、とか、なぜ、高齢者ばかりにお金を支給するのか、という批判につながるわけです。

次に、社会保障全体の話しをしますと、毎年、ほぼ一兆円ずつ増えていた社会保障費が、今回は、実質5000億円の伸びに抑えられている。
具体的には、医療費の公定価格である診療報酬が、8年ぶりに引き下げられた。
国民にとっては、医療費の負担もそれだけ軽くて済むわけです。

ただ、本当に今、必要なのは、予算をただ単に削るだけではなくて、これからも増えていかざるを得ない社会保障のお金を、誰がどれだけ負担するのか?つまり、給付と負担の仕組みを変えないといけない。
例えば、医療にしても介護にしても、お金のある人、余裕のある人には、もっと多くの負担をしてもらって、その分、本当に困っている人の負担を軽くしないといけない、そういう痛みを伴う改革が先送りになってしまっている。

今井)財政健全化計画の目標は、とりあえず達成した形になっている。でも、例えば、診療報酬の改定。確かに、全体ではマイナスだが、デフレ時代もプラス改定だった医師の技術料については、今回も、結局プラス改定になった。マイナス改定に医師会が反対したためで、これも選挙対策と言われてもやむをえない。そもそも、財政健全化の計画じたい、不十分と言う声もあるだけに、切り込めるところは少しでも切り込んで、借金の返済を優先すべきだったのではないかと思います。

(農林水産・TPP関連予算)
板垣)大筋合意となったTPPや農林水産関連予算をどう見るか?

合瀬)TPP大筋合意を受けた今年は、農家の生産意欲をそがないように、「とにかく去年より多く」が自民党の目標だった。その結果、農林関係予算は2兆3091億円と、去年より1億円多い額で決着。補正予算と合わせると10年近く前の規模まで膨らんだ。
ただこれがTPP対策の決め手になっているかというと、疑問も多い。多くが公共事業など従来の政策に終始しているためだ。農業の構造改革には時間がかかり、本来は今から競争力強化のための予算を打ち出し、TPP後の日本農業の方向性を示すべきだった。農家の痛み止め最優先の予算になったのは残念です。

今井)合瀬さんも言っていたように、民主党政権で、減らされてきた土地改良などの公共事業が、補正をあわせて大幅に増えたのが気になる。かつて、ウルグアイラウンドの後の対策では、無駄な農道などがつくられて、大きな批判をあびた。その二の舞にならないか。確かに、農地を大型化して、農業の競争力をつけることは必要。だけど、今回、本当に、無駄に使われないか。事前も含めて、きちんと、チェックしていかないといけないと思う。

(エネルギー・原発関連予算)
板垣)経済にとって極めて重要なエネルギー関連予算をどう考えるか。

今井)今回、停まっている原発については、交付金を減らすことになった。停まっているのに高い交付金を出し続けるわけにはいかないということで、やむをえない面はあるが、結果的に「原発の再稼働」を促す要因にもなる。麻生大臣も、しばらくは原発に頼らざるを得ないと言っているので、それを反映した形だが、気になるのは、その一方で、蓄電池や水素など、次の世代の革新的なエネルギーの研究開発への予算の規模が、少ないということ。これでは、本当に原発に頼らない社会をつくろうとしているのか、政府の覚悟が見えてこないと思います。

合瀬)去年合意したCOP21で日本は、温室効果ガス26%削減を約束した。その実現のため排出量が増加する家庭や業務部門での省エネに大きく予算を割いたのは評価。一方で再生エネルギー、現在は太陽光に偏りすぎていると思う。
確かに現在はコスト的に高いが地熱やバイオマスなど地域資源の発掘は地域を活性化するバネの役目も担う。エネルギー開発をテコに、経済の活性化を目指す発想がもっと合って良かったと思います。

(一億総活躍予算関連)
板垣)さて、鳴り物入りで始まった一億総活躍予算をどう評価しますか?

竹田)一億総活躍というタイトルを巡っては、上から目線では?とか、押しつけがましいのでは?という批判も出てあまり評判が良くないようだが、出生率をもっと上げたり、介護離職を減らすことを目指すことは、大変重要なことです。
今回の予算案でも、たとえば一人親世帯のための児童扶養手当を拡充したり、介護施設を整備したり、というお金が手当されている。しかし、一番重要なのは、保育や介護で働く人をもっと増やすこと。そのためには、例えば、介護で働く人の給料が、全産業平均で月10万円安いという現状を改善しないとダメ。保育や介護で働く人の賃金を上げる方法、
たとえば、もっと公費を投入することなどを検討すべきだと思います。

合瀬)新三本の矢の肝は、人口減対策。であれば出生率の高い地方への人口分散を進めることが不可欠。そうした意味からは地方創生の本格展開を一億総活躍の中に位置づけたのは妥当だった。ただ予算の中身を見てみると、どの役所も従来の項目を付け替えたものが多いと思います。
総活躍単体の予算にも目新しい物は少なく、具体的な道筋が見えないとされる批判を払拭する物ではなかったと思います。

板垣)次は税と経済見通しについてのインタビューですが、その前に、税制改正について改正点を簡単に説明します。
 
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今井)
▼    まず、減税項目を見てみると、法人税の実効税率を、このように2段階で引き下げること。
▼    また、来年4月に消費税率が10%に引き上げられる時に、外食と酒を除いた食料品に「軽減税率」を導入することが盛り込まれました。
▼    そして、増税項目としては、法人税率引き下げの財源を確保するため、赤字でも事業規模などに応じて課税する「外形標準課税」を拡大するといった項目が盛り込まれました。
▼    また、軽減税率の財源については、今年の末までに決めるとして、具体的には盛り込まれませんで、軽減税率をのぞいて、全体としては、565億円分、減税の方が多い結果になりました。
▼    一方、「配偶者控除」といった、反対意見も多い制度の見直しについては、今回、見送られました。

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【麻生大臣インタビュー】                 
板垣)消費税の軽減税率。大変なすったもんだでありましたけれども、結局その軽減税率の範囲が広がりすぎて、本来増収部分が1兆円分ぐらい少なくなってしまう。これはでも麻生大臣、最後まで反対されたように伺ってますけど、どうなんでしょうか。

麻生大臣)基本的には、わたしどもの立場としては、少なくとも低所得者層に対する配慮っていうものを、考えておかねばならんということが、この軽減税率のもともとの発想だったと思いますんで。
ただこれは財源が、絶対量がわたしどもとしては、多々問題があると思ってましたから、その意味では、財源を生鮮と加工食品と両方加えるということになると、非常に財源が不足しますんで、加工食品だけにするとか、生鮮は止めて、加工食品だけにするとか、いろんな考え方はあったんだろうとは思いますけれども。結果としては、今、党で決まった話ですから、それに合わせてわたしども対応を、していかざるをえんということですかね。

板垣)消費増税の10パーセント。これは確実にやるんでしょうか。

麻生大臣)我々としては、消費増税の最大の背景は、社会保障と税の一体改革ということを、最初から申し上げておりますんで、
10パーセントでまずはやらせていただくということで、スタートさせていただくのが、来年の4月からということにしたいというように考えて、その方向でことは進めております。

板垣)次は、法人税減税の話ですが、減税しても投資に回らず、給料もあんまり上がらず、内部留保が膨れ上がる。これをなんとかしなきゃいかんというのが、大臣の持論でらっしゃると思うんですが、どうでしょう。今回。

麻生大臣)やっぱり企業の中で出た利益というのは、基本的には、給与、配当、設備投資を引いて、この3つに金は投資させてしかるべきと思いますけれども、その3つが止まっていて、ただただ企業の内部留保が、おととし26兆、一昨々年24兆。合計約50兆円で、トータルで今350兆ぐらいの内部留保が積み上がってると思いますんで、これはどう考えても、国家予算が97、8兆の話の時に、内部留保だけで350兆っていうのは、ちょっと大きな金なんで、法人税が下がった分を、企業は、いわゆる賞与、給料そういったもの、もしくは配当、そういったように回していただく、設備投資もちろんですけど。いう方向でいってもらうような方向で、私どもとしては期待をしているというとこですかね。

板垣)今年の経済はどうなると大臣は見ていますか?

麻生大臣)今アメリカの景気も良くなってきてますし、今の機械受注も増えてきてますんで、設備投資に回るってのは、数か月後に機械受注は、設備投資に回りますんで、石油の値段が3分の1に下がるっていうことは、これは経済には、決して悪い話ではないんであって、そういった意味では、経済成長っていうものを促しうる、コストが下げられると意味で、いろんな意味で石油を輸入してる我々にとっては、非常に大きなプラスの要素として働くと思いますんで。経済見通しに関しては、そんな悲観的なわけではありません。

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板垣)税制改正については、いろいろ問題がありそうですが、それでは各委員に聞きます。

(問題多い税制改正)
今井)2点。まず、軽減税率については、1兆円分の減収分をどこで補うのか、決まっていないのは、やはり、大きな問題。将来につけを残さない形で、納得のいく財源を探せるのかが、今後の大きな焦点。
もう一つは、法人税率の引き下げ、これで、本当に、恩恵をうける企業が、内部留保に回さずに、賃金を引き上げるのか。過去の例をみても、その効果は、疑問です。きちんと検証していくことが必要だと思います。

竹田)軽減税率をめぐる議論で最も大きな問題は、消費増税分の使いみちとして予定されていた総合合算制度のためのお金4000億円が、軽減税率の財源として使われようとしていること。総合合算制度というのは、社会保障と税の一体改革の中で計画されていた低所得対策の柱。具体的には、医療、介護、保育、障害という制度では、それぞれ、1割とか、3割とか、自己負担の割合が決まっているが、家族みんなが利用した場合、低所得の人には大変な重荷となって、必要な介護や保育が利用できない、という場合がある。そこで世帯全体の収入に応じて、自己負担の合計の上限を決めて、それを越える分は公費で面倒をみましょうというもの。そのために消費税が10%に上がれば、そこから4000億円を配分する計画だった。それが、ゴッソリ、軽減税率にまわされようとしている。
大切な低所得対策のためのお金が、低所得者は助かるが、高所得者はもっと助かるという軽減税率に使われようとしている。ここはもっと、慎重な議論が必要なのではないかと思う。

(日本経済展望)
板垣)最後に今年の日本経済をどう見るか。

今井)海外経済が不安定な中、政府見通しの1.7%の成長を遂げるには、内需を盛り上げることが欠かせない。そのためには、今年の春闘で、どれだけの賃金引き上げが達成できるか。来年の消費増税を乗り切るにも、この点が、本当に大事なポイントだと思います。

竹田)日本経済が成長するために必要なのは、やはり何と言っても成長戦略!
新3本の矢もいいが、もとの3本の矢、とりわけ成長戦略の実現にこの政権はもっと力をいれてほしいと思います。
 
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合瀬)去年のTPPに続き、今年は早期に日本とEUとのEPA交渉が妥結を目指しており、日本経済を巡る環境が大きく変わる。これを成長のバネにできるかが問われることになる。
当然、日本農業も大きな転換点を迎えることに。自民党は秋までに農業の成長戦略を纏めることにしているが、農業現場には大きな痛みは避けられず、安倍政権の覚悟が問われることになると思います。

(景気回復と財政再建)
板垣)以上見てきましたが、麻生副総理兼財務大臣のインタビューと、担当の解説委員による討論によって見えてきたものはなんでしょうか?私は、歳出削減の甘さや有効性の不確かな予算付けがやはり残っているということだと思います。
国の借金が1000兆円を超える時代に「これでいいのか」という大きな疑問が残ります。
アベノミクスでは、いずれ経済が健全な成長過程に乗り、少しずつ借金も減らせるという想定です。
しかし、年明けの株式市場は、中国など世界経済の先行き懸念から、株価はこの二日間で600円以上急落しました。
海外情勢がめまぐるしく変化する中で、来年4月の消費税率の10%への引き上げを克服し、景気回復と財政再建への道筋が見いだせるのか、安部政権の実力が今の国会でまず試されることになります。

(板垣 信幸 解説委員/合瀬 宏毅 解説委員/竹田 忠 解説委員/今井 純子 解説委員)

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