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時論公論 「大阪ダブル選挙・大阪維新の会勝利 ~国政への影響は」

安達 宜正  解説委員

 「大阪ダブル選挙」は橋下大阪市長率いる大阪維新の会が圧勝しました。今夜はこの結果を分析し、国政に与える影響を考えます。
 
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 おととい投票が行われた大阪府知事と大阪市長のダブル選挙。いずれの選挙も大阪維新の会の公認候補と自民党が推薦し、民主党や共産党が自主的に支援する候補の事実上の一騎打ちとなりました。
 
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松井知事が立候補した知事選挙は当初から、松井氏の優勢・リードが伝えられていましたが、競り合うと見られていた、市長選挙でも橋下市長の後継・吉村氏が圧勝したことで、与野党からは大阪維新は予想以上に強かったという驚きの声も出ています。
 
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 今回の大阪ダブル選挙。大阪維新の会にとっては「後のない戦い」でした。ことし5月の大阪都構想の是非を問う住民投票が1万票あまりの僅差で否決されたことで橋下大阪市長が政界引退を表明。8月には政治路線の違いなどから、橋下・松井両氏が維新の党を離党。先月末には新党「おおさか維新の会」を結党し、ダブル選挙を迎えました。おおさか維新の会に参加あるいは参加を表明している国会議員はあわせても19人。ダブル選挙に敗れれば国政での影響力は極めて限定的になるところでした。しかし、2つの選挙をともに制したことで、政界では大阪維新は来年夏の参議院選挙に向け、息を吹き返すという見方が大勢です。
 
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 さて、このダブル選挙・とりわけ、焦点の大阪市長選挙の勝敗の決め手は2つあります。
1つは橋下大阪市長の人気。もう1つは柳本氏が自民党支持層を固めるのに手間取ったことです。
 
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NHKが投票を終えた有権者を対象に行った出口調査。大阪市民のうち、橋下市長の4年間の市政運営を評価すると答えた人は64%、そのうち80%台後半が吉村氏に投票したと答えました。橋下市長は選挙期間中、吉村氏に寄り添い、みずからの選挙並みに運動を行ったことが効を奏したと言えます。
 
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2点目の自民党支持者です。柳本氏に投票したと答えた人は70%あまり。吉村氏が20%台半ば。それなりに柳本氏に投票したとも言えますが、おおさか維新の支持層のうち90%台後半・ほぼすべてが吉村氏に投票したのに比べると、苦労の跡が伺えます。
告示前から自民党支持者の一部が吉村氏に流れるという見方がありました。安倍政権に今後の政権運営を考えると、大阪維新との関係を維持したいと思いがあるという見方からです。告示直前、菅官房長官と松井知事が会談したことはこうした疑念に拍車をかけました。そして、柳本氏を支援した民主党や共産党の動きにも影響しました。自民党支持層を固めようとすればするほど安倍政権との近さをアピールしなければならず、野党幹部は結果的に民主党や共産党に近い団体の動きが鈍ったと指摘します。いずれにせよ、橋下人気を維持して、これまでの支持層を固め、自民党支持層からも一定の支持を受けたことが、大阪維新の勝利につながったと言えます。

 さて、今回の選挙結果は今後の国政にどのような影響を与えるでしょうか。
 
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先ほど申し上げました通り、国政では新党・おおさか維新の会が一定の存在感を示していくことになりそうです。野党勢力のうち、保守色の強い議員が来年の通常国会、さらには参議院選挙に向け、新党・おおさか維新の会との連携を目指す動きを強めています。維新の党の分裂にあたって、中間的な立場をとった小沢元環境大臣のグループやかつて日本維新の会で行動をともにしてきた、次世代の党。さらに勢いを増してくれば、民主党保守派も連携を模索してくると言う見方さえもあります。実際、前原元代表は今後の連携相手として、橋下氏の名前をたびたびあげています。おおさか維新が野党勢力のうち保守色の強い議員の結集軸になれば、民主党や共産党、維新の党、社民党など、安倍政権と対決姿勢を強める側と野党勢力が2分されます。民主党執行部は参院選に向け、野党共闘に加え、安保関連法廃止を求める市民グループとの連携にも意欲を示しています。おおさか維新とは一線を画すことになりそうです。こうなってくると、おおさか維新は安倍政権との連携にさらに軸足を移すと見られます。
 
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安倍政権の政権運営。基本路線の1つに野党の分断があります。重要政策をめぐり、政策協議の対象になる野党を責任野党とし、協力を求めるやり方です。特定秘密保護法の審議では当時の日本維新の会やみんなの党が、安保法では次世代や元気、改革がその対象となりました。今後の国会運営、安倍総理大臣が目指す憲法改正をも視野に入れ、連携強化を目指してくることは容易に想像できます。
橋下氏も安倍政権には是々非々の姿勢、何でも反対の野党にはならないと強調します。おおさか維新は当面、国政で存在感が示すことができても、国会では民主党に比べ、少数です。安倍政権に一定程度の協力し、存在感を維持する選択肢を選んでも当然かもしれません。
 
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さらに立党の原点・大阪都構想の実現。松井知事、大阪市長に当選した吉村氏はともに大阪都構想を改めて議論の俎上に乗せたいとしています。ただ、これには高いハードルがあります。住民投票を改めて実施するには府議会、大阪市議会の賛同が必要です。しかし、それぞれの議会でおおさか維新は過半数を下回ります。このため、大阪市を廃止し、5つの特別区に再編するなどとした原案を修正。ほかの会派の合意を図りたいとしていますが、度重なる政争によって、大阪での維新対反維新の溝は簡単に埋まるものではありません。国政での安倍政権への協力によって、大阪で自民、公明両党との関係を徐々に改善し、都構想実現に向けた歩みを進める戦略を描くのではないかという見方です。
 
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 そして焦点は橋下氏の政界復帰の可能性です。橋下氏は政界を引退し、おおさか維新の会には法律政策顧問のような形で関わりたいとしていますが、先月には政界復帰に含みを残した発言を行いました。選挙結果を受けて、おおさか維新には早くも政界に復帰、来年の参議院選挙への立候補を期待する声も出ています。
 それにしても、橋下氏ほど評価の分かれる政治家は少ないかもしれません。発言に一貫性がないという批判や敵を明確にし、攻撃しながら支持を増やしていく姿勢をポピュリズムと指摘する声もあります。確かに大阪都構想の住民投票にしても、春には「何度もやるものではない。一度切りだ」と述べていました。しかし、何度も挫折を繰り返しながらも、大阪の二重行政の解消の実現、東京と並ぶ大阪をと訴え、最終的には住民に直接問う姿勢、地方都市の大阪から国政政党を立ち上げたことなど、既存の政治のあり方に常に挑戦してきたことも間違いありません。ときには独裁が必要だと述べながら、明確なメッセージを発し、有権者に判断を求めていく、橋下氏の政治手法は大阪で支持を確保し続けています。これが再び、かつての第3極ブームのように日本全体での支持に広がっていくのか、来年夏の参議院選挙が1つの試金石になるように思います。
 
(安達宜正 解説委員)

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