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時論公論 「延命は必要か 高速増殖炉もんじゅ」

水野 倫之  解説委員

高速増殖炉「もんじゅ」について、規制委は原子力機構に運営させておくのは不適切だとして別の運営主体を明示するよう文部科学大臣に勧告する方針。原子力機構は「失格」の烙印を押された形。
もんじゅでは先月も、安全上重要な機器が一度も点検されていなかったことが明らかになるなど規定違反はすでに9回目。
なぜこうもずさんな対応が繰り返されるのか。このまま延命させる必要があるのか。今夜の時論公論はもんじゅが抱える課題について水野倫之解説委員。

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もんじゅは運転停止中だが、燃料のプルトニウムをナトリウムで冷却。
ナトリウムは空気中の水分に触れると激しく燃えることから、停止中といえど漏れないよう機器の点検は一般の原発よりも入念に行う必要。
ところが機器の重要度の分類に誤りがあり、中央制御室の空調にかかわる弁など15の最重要機器が、一度も点検されていなかったことが先月明らかに。
規制委設置法は原子力の安全に関し、規制委が省庁に勧告を出すことができるとしており、おとといの委員会で「機構はもんじゅを運転するための基本的な能力を持っているとは認めがたい」として初めて勧告権を行使する方針を決めたもので、監督する文科省に半年をめどに新たな運営主体を見つけるよう要求。

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規制委が厳しい対応に出たのは、違反が繰り返されてきたから。
3年前、1万点の機器が点検されずに放置されていた違反が発覚。規制委は事実上の運転再開禁止命令。
しかしその後も監視カメラが故障したまま放置されていたり、配管を外観検査だけで済ませるなど安全管理体制の問題が相次いで発覚。この3年間で規定違反は9回。
担当職員が「運転停止が長いから機器は劣化していないだろう」と勝手に判断して点検を先送りするなど、組織全体に緊張感が欠落。

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原子力機構は、もんじゅを理事長直轄の組織にして理事長が定期的に現地入りしたり、もんじゅの職員を100人増やすなど組織を改編。

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また文科省も、現地に職員を常駐させ、機構の指導を強化したとしていた。
にもかかわらず今回も、担当者が分類の基準を正しく理解していないなど、未だ基本的なことができていない。

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点検は一般の原発では普通に行われているわけで、安全に関わる基本的なことができないのであれば、運転再開はもちろん、原子力事業自体をやって行く資格はない。規制委の今回の勧告は当然の判断。

それにしても電力会社はやっているのになぜもんじゅではできないのか。
機構の児玉理事長は「ほとんど稼働しておらず、モチベーションを持ちにくい組織になっており、職員の士気に問題がある」と話す。
また今年退任した松浦前理事長も「このプロジェクトを何が何でも俺たちが仕上げるとの意識が高くなかった」と振り返る。
職員に話を聞くと、「毎日書類のチェックに追われて疲弊し、目標を見失っている」という声も聞こえる。

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なぜ職員の士気が低下するようなことになるのか。
一つには研究組織特有の危機感の薄さ。もんじゅをすぐに動かさなくても電力供給に影響があるわけではなく、予算も毎年つくことから民間のように赤字を心配する必要もなく、緊張感がない状態が続くことになった。

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それ以上に問題なのは、もんじゅの目的がはっきりしなくなってきていること。
日本は、原発の使用済み燃料を処理してプルトニウムを取り出し、燃料として使う核燃料サイクルを目指す。
高速増殖炉は使った以上のプルトニウムができることからその中核、当初80年代に実用化させる計画。
ところがプルトニウムやナトリウムの扱いは難しく、研究段階のもんじゅが運転を始めたのは1994年。実用化は2030年代へと後退。
さらに翌年もんじゅはナトリウム漏れ事故を起こして停止。再開したのは14年後。
結局この20年で原子炉が動いたのは8か月間だけでほとんど止まった状態。実用化は2050年まで遠のいた。

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そして去年決まったエネルギー基本計画では実用化の目標が消えたばかりか、プルトニウム増殖と言う本来の目的も盛り込まれなかった。
代わって前面に打ち出されたのが、核のゴミを減らす研究拠点。
寿命が何万年という放射性廃棄物にもんじゅの放射線を当てて燃やし寿命の短い放射性物質に変換することで、10万年かかるとされた核のゴミの処分が300年で済み、処分場の面積も大幅に減らすことができるという。
もんじゅを核のゴミの焼却炉にしようという構想。

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しかし寿命の長い放射性物質を取り出す技術は確立されていない。
取り出せたとしてもそれを燃やすもんじゅのような専用の原子炉を何基も新設する必要。
さらにもんじゅでさえほとんど運転実績が無いのに専用の原子炉を運転できるのか。
技術的には相当な困難が予想され、当初の目的が達成できそうにもないもんじゅの苦肉の延命策とも言える。

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エネルギー供給の中核からゴミの焼却炉へと目的自体が大きく変わり、実用化の見通しの見極めが難しい状況では、自分が何のためにもんじゅに居るのか目標を見失いつつある職員がいてもおかしくはなく、士気が下がるのも当然。
もんじゅにはこれまで1兆円を超える国費が投入されており、政府内には何の成果も上げずにやめるわけにはいかないという考えも根強くあるが、停止していても維持費だけで1日5000万円。

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エネルギー基本計画の作成過程では原子力については一般の原発をどう位置づけるかに多くの時間が割かれ、もんじゅの位置付けについては集中した議論が行われたわけではない。
今こそ、政府はこのまま延命させる必要があるのかサイクル政策の中での位置付けについて議論し、エネルギー利用ができないのであれば廃炉にしていかなければならない。
原子力機構に代わる運営主体を見つけるのは事実上難しく、再び機構の組織の改編をしても同じような問題が繰り返され、お金ばかりがかかり続けることになりかねないから。

原子力機構は日本で唯一の原子力の総合研究機関で、福島第一原発の溶けた燃料の取り出し方法などの廃炉技術の開発など、もんじゅ以外に果たさなければならない役割は非常に大きい。政府はこうした役割に影響が出ないよう、もんじゅ問題の決着を急がなければならない。

(水野 倫之 解説委員)

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