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時論公論 「交流サイトと子どもの犯罪被害」

寒川 由美子  解説委員

面識のない、不特定多数の人とネット上でやりとりできる「交流サイト」で知り合った相手から、性犯罪などの被害を受ける・・・。
いま、こうした子どもたちが増えています。
背景にはスマートフォンの普及で子どもをとりまくネット環境が大きく変わったにもかかわらず、大人が有効な対策をとっていないことがあげられます。
きのうはこどもの日でしたが、子どもをとりまく交流サイトの実態はどうなっているのか、またどうすれば子どもを性犯罪などから守れるのか、今夜はこの問題について、考えます。
 
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まず、子どもがネットで知り合った相手からどんな被害を受けているのか、みてみます。
 
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例えば、小学生の女の子が、ネット上で高校生になりすました40代の男と知り合い、水着の写真を送ったところ要求がエスカレートし、断ると「写真をばらまく」と脅された。
中学校の女子生徒が、ネット上で悩みの相談に応じる40代の男を「親切なおじさん」と信じて会ったところ、ホテルに連れ込まれて暴行された。
中には去年、17歳の女子高校生がネットで知り合った48歳の男に殺害される事件もありました。
 
こうした性犯罪などのきっかけとして、いま、問題になっているのがネット上の「交流サイト」です。
 
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被害を受けた子どもの数を見てみますと、出会い系サイトが減っている一方で、交流サイトの被害が増え、去年は過去最多となっています。
 
では出会い系サイトと交流サイトはどう違うのか。
出会い系サイトは、異性との交際を目的に、写真やプロフィールを見て相手を探し、1対1でメールなどのやりとりをするものです。
 
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子どもが巻き込まれる事件が相次ぎ問題となったため、規制法ができ、18歳未満の利用が禁止されました。
運営会社は免許証やクレジットカードで年齢確認することが義務づけられ、利用者が子どもに交際を求める書き込みも禁止され、罰則もあります。
 
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これに対し、交流サイトとは、無料通話アプリLINEや、フェイスブック、ツイッターなどのSNS、さらに共通の趣味を持つ人が投稿できる掲示板、ゲームサイトなど、およそ大勢と交流できるもの、すべての総称で、出会い系サイト規制法の対象にはなっていません。
しかし実はこの中に、面識のない人と交際目的でやりとりする、出会い系と同じようなサイトも数多くあるのが実情です。
こうしたサイトは異性との交際を目的としない「友達募集サイト」などとうたっているため、規制を免れているのです。
 
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例えばGPS機能を使った友達募集サイト。
近くにいる利用者が男女別に地図上のアイコンで示され、クリックすると写真やプロフィールが表示されます。
業者に料金を支払って1対1でやりとりできる点で、出会い系と同じですが、規約などで表向き交際目的の利用を禁止して、規制をすり抜けています。
こうしたサイトによって、子どもが相手と知り合ってから被害にあうまでの期間は翌日や当日などと、どんどん短くなっています。
これでは子どもの異変に気づく間もありません。
 
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さらに、おととしから急増しているのが、子どもに人気の無料通話アプリに目をつけた、ID交換掲示板と呼ばれる交流サイトの被害です。
ID交換掲示板とはどのようなものか。
 
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例えばLINEといった、無料通話アプリの利用者が設定する、メールアドレスのようなIDを、写真などと一緒に公開する掲示板です。
無料通話アプリの運営会社とは全く別の業者が運営していますが、IDが分かればアプリの機能を使って相手と1対1でやりとりできます。
名前や電話番号の公開には抵抗があってもIDの公開には抵抗感が薄い子どもの心理につけこむこうしたサイト。
利用者が勝手に連絡を取り合っているという建前で規制を免れているのです。
 
こうした交流サイトをなぜ子どもたちは利用するのか。
 
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被害にあった子どもについて警察が調べたところ「無料だから」とか、「友達のすすめ」といった理由が多くなっていました。
判断力の未熟な子どもたちが軽い気持ちで利用していることがうかがえます。
一方、加害者の多くは年齢や職業、性別まで偽って別人になりすまし、子どもに簡単に近づいているのです。
 
では、このような出会い系まがいのサイトに何らかの規制はできないのでしょうか。
警察は、交際目的のサイトではない以上、規制は難しいとしています。
しかし、国が定めた出会い系サイトの定義では、「実態が交際目的である場合には、出会い系に該当することもある」とされています。
であるならば、少なくとも1対1でやりとりできる出会い系まがいのサイトは、これに該当するとして、規制法の網にかけ、子どもの利用を防ぐべきではないでしょうか。
またID交換掲示板のようなサイトについても、法改正して対象に含めるなど、実態に即した規制を行う姿勢が、国や警察には求められていると思います。
 
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このように規制が現状に追いついていない以上、子どもを守るにはどうすればよいのか。当面は、自衛手段に頼るしかありません。
鍵となるのは急速に普及しているスマートフォンの対策です。
それには安全な利用環境を整えること、そして危険性を正しく理解すること、この2点をあげたいと思います。
 
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まず、安全な利用環境の整備、これに有効なのがフィルタリングです。
フィルタリングは出会い系など有害なサイトへの接続をブロックするサービスです。
 
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従来型の携帯の場合、電話回線を使って携帯専用サイトに接続される仕組みなので、携帯電話会社に申し込めばフィルタリングは完了し、危険なサイトにアクセスできなくなります。
ところが、スマートフォンは、電話回線の他に、無線LANを通じてネットに接続されるほか、アプリを使えばどんなサイトにでもアクセスできます。
このため、スマートフォン自体にもフィルタリング機能を持たせることが必要なのです。
しかし警察の調査では、スマートフォンのフィルタリングを適切に説明できた販売店は半数にとどまり、中にはフィルタリングは必要ないと説明する店もありました。
 
一方、保護者の側があえてフィルタリングを利用しないという問題もあります。
 
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その理由は、子どもがアプリを利用できなくなるからとか、子どもに頼まれて、が多くなっています。
しかし使い勝手が悪くなるからと言って、何もせずにスマートフォンを渡すことは、免許のない子どもに車の運転をさせるようなものだと専門家は指摘します。
また、人気の無料通話アプリやゲームは、子ども向けの安全対策を強化したことでフィルタリングをかけても使えるようなっていますが、こうしたことはあまり知られていません。
国は、保護者や携帯電話会社にフィルタリングの利用を呼びかけていますが、ただ呼びかけるだけではなく、現状や対策をわかりやすく伝える取り組みも必要ではないでしょうか。
 
そして、2つめが、危険性を正しく理解すること。それには、大人が子どもとともに学ぶことが重要です。
 
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いま、学校では保護者会を利用して親子でスマートフォンの危険性について学ぶ教室などが開かれています。
こうした機会を利用して、安易な個人情報の公開や写真提供がどんな事態を招くのか、子どもと一緒に考え、スマートフォン利用のルールを作る。
学校と家庭が連携した、当たり前とも言えるこうした取り組みこそが、実のところ最も有効なのではないかと思います。
 
いまや、携帯音楽プレーヤーやゲーム機、タブレット端末など、ネットにつながる機器はますます多様化しています。
自宅にいながら加害者と簡単につながってしまう環境では、防犯カメラやパトロールなどは役に立ちません。
子どもたちにとっては当たり前となっている環境を、大人が理解し同じ目線で考える。そのことが、子どもを犯罪から守ることにつながるのだと思います。
 
(寒川由美子 解説委員)
 

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