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時論公論 「どう防ぐ? 悪質な訪問・電話勧誘販売」

今井 純子  解説委員

 突然の電話で、投資を勧められたり、突然の訪問で屋根の工事を勧められたりといった、経験をお持ちの方は、少なくないのではないでしょうか。こうした突然の勧誘がきっかけで、トラブルになったり、被害を受けたりするケースが後を絶ちません。政府は、先週、被害を防ぐために、事業者の勧誘行為を規制する法律の改正に向けた検討会を立ち上げました。どうしたら被害を防ぐことができるのでしょうか。きょうは、この問題について考えます。
 
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【被害の例】
まず、最近、全国の消費生活センターに寄せられた相談の例を見てみましょう。
 
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(訪問販売)
▼ 一人暮らしの母親の家に行ったところ、大量の羽毛布団が部屋においてあることに気付いた。調べたら、訪問販売で、10件以上、およそ340万円分も買わされていることがわかった。
▼ おばが、数年前から、訪問販売にきた複数の事業者に勧められるまま、必要もないのに、屋根や台所、床下など1500万円の工事の契約をしていることがわかった。

(電話勧誘販売)
▼ 母親の家を訪ねたところ、開封していないままの大量の健康食品が見つかった。聞いたところ、事業者から一方的に電話で勧誘され、飲みきれないと断っても、代金引換で商品を送りつけてくる。こわいので、これまでに250万円払ってしまったようだ。
▼ 父親が、突然電話をかけてきた事業者から、「昔、投資詐欺で被害にあった社債を買い取るので、別の債券に投資をしないか」と勧められ、カネを受け取りにきた事業者に2000万円を払ってしまった。
こうした被害の相談が寄せられています。
 
【これまでの対策】
(訪問販売・電話勧誘販売の特徴)
訪問販売や電話勧誘販売は、消費者が要請していないのに、突然、事業者から勧誘を受けて、十分に考える間がなく契約を求められることが多いのが特徴です。自分から、買いたい、契約したいと思って、店に出かけたり、インターネットで調べたりして、買うケースとは、この点が大きく違います。
 
(これまでの対策)
このため、後から、解約したいと言って、トラブルになるケースも多く、これまでにも、たびたび規制が強化されてきました。今では、訪問販売、電話勧誘販売、ともに
▼ 消費者は、契約をして8日以内なら、無条件で契約を解約できるクーリングオフが認められていますし、
▼ 一度断られた事業者が、再び勧誘をすることも禁止されています。
▼ さらに、訪問販売で、必要以上に大量に商品を買わせることも禁止されています。
 
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【減らない被害】
 しかし、トラブルは減っていません。
 
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 こちらは、全国の消費生活センターに寄せられた相談件数の推移です。訪問販売は、ほぼ横バイ。電話勧誘販売の相談は、4年間で2倍に増えています。
 
(認知症などの高齢者の被害が増加)
 中でも、深刻なのは、認知症などで十分な判断ができなくなった高齢者の被害です。
 
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2013年度には、相談件数が、はじめて1万件を超えました。相談の内容をみてみると、70%あまりが、訪問や電話で勧誘を受けたケースです。
 
(判断力が鈍った人がターゲットに)
相談の現場からは、こうした弱い立場の人たちが、悪質事業者のターゲットになっている。一回契約を結ぶと、次々と事業者が寄ってきて、被害の額が膨れ上がるケースも多くみられるという指摘があがっています。本人が被害にあったことに気付かなかったり、事業者が特定できなかったりして、クーリングオフができない。事業者に法律違反が疑われるのに、被害のおカネを取り戻せないことも多いといいます。
 
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【どうしたら被害を防げるか】
こうした被害をどうしたら防げるのでしょうか。
 
(消費者側の主張)
先週、開かれた政府の検討会の初会合では、消費者団体などの委員から
▼ 今の制度では、最初の勧誘をするために、事業者が、訪問や電話をすることは認められており、弱い立場の人を言葉巧みに勧誘して被害を招くきっかけになっている。
として、消費者が要請していないのに、訪問や電話で勧誘すること自体について、何らかの規制を検討すべきだ。という意見が強く出されました。
 
(事業者側の主張)
 これに対して、事業者側の委員からは、
▼ 外に出られない高齢者にとって、役に立つ訪問販売や電話勧誘販売もある。
悪質な事業者に対しては、取り締まりの強化で対応すべきだ。として、規制の強化に慎重な意見が出されました。
 
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【どう考えるか】
 では、この問題。どう考えたらいいでしょうか。
 
(線引きが難しい)
 確かに、高齢者に、高額なモノを次々と売りつけるような、本当に悪質な事業者については、訪問や電話での勧誘を規制すべきだ、という点については、大きな反対はないのではないでしょうか。ただ、難しいのは、線引きです。
▼ 訪問や電話で勧誘をする事業者と一言で言っても、布団や健康食品を扱う事業者から、新聞、大手金融機関まで、様々です。いわゆる大手でもトラブルは起きています。何が悪質かは、消費者によっても受け止めが違います。
▼ では、金額で規制をするかと言っても、数万円で、同じ事業者、あるいは、別の事業者が次々同じものを売りつけるケースもあります。
▼ さらに、消費者の年齢で規制をするかと言うと、年齢を確かめるために接触することが認められて、抜け穴ができてしまいます。
 このように、事業者、金額、消費者の年齢、いずれで線引きをするにしても、難しい。だから、これまでなかなか勧誘の規制ができなかったという面もあります。
 
(そもそも多くの人が迷惑)
 このため、消費者団体などからは、悪質性や金額にかかわらず、勧誘を規制する方向で検討すべきだという声があがっています。ひとつの考えだと思います。
 というのも、そもそも、訪問や電話での勧誘を迷惑と感じている消費者が圧倒的に多いからです。
 
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消費者庁の調査では、突然の訪問や電話による勧誘について、「きてほしくない」と答えた人が、それぞれ、95%前後に達しています。事業者側は、はじめ嫌がっていても、商品やサービスの説明をすることで、喜んで買ってくれる人もいる。事業者には「営業の自由」があると訴えますが、これに対して、悪質かどうかにかかわらず、勧誘を受けたくないという、これだけ多くの消費者の声をどう考えて行くのか。検討が必要ではないでしょうか。
 
(外国の例)
 その上で、どのような規制の方法があるのか。この点については、外国の例が参考になりそうです。
 
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▼ まず、電話勧誘については、アメリカやヨーロッパ、さらにアジアでも、多くの国で、「拒否したいという消費者が、あらかじめ政府機関などに電話番号を登録しておくと、その番号に電話をした事業者は罰せられる」という電話勧誘お断り制度があります。
一方、登録制度ではなく、そもそも、突然、電話をかけて勧誘することじたいを禁止している国もあります。
▼ また、訪問販売についても、「訪問販売お断り」のステッカーを貼っている家庭に訪問販売することを禁止している国や自治体があります。
 
(勧誘じたいになんらかの規制を!)
勧誘全体を禁止すべきだという考えがある一方、せめて、明確に拒否している人への勧誘は、禁止する。そういう考えをとっている国や地域も多くあるようです。
国や地域で、事情は違いますが、多くの国で、こうした勧誘になんらかの規制をとりいれていることは、参考にしてもいいのではないでしょうか。
 
【まとめ】
  高齢化が進む日本では、今後、認知症のお年寄り、あるいは、認知症とは言えないまでも十分な判断ができないお年寄りが、急速に増えることが予想されます。老後のために蓄えてきた大事なおカネが、悪質事業者の食い物にならないよう、消費者の目線で、ぜひ、根本的な対策を検討してほしいと思います。
 
(今井純子 解説委員)

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