解説アーカイブス これまでの解説記事

時論公論

twitterにURLを送る facebookにURLを送る ソーシャルブックマークについて
※NHKサイトを離れます。

時論公論 「事故4年 遠い廃炉への道のり」 

水野 倫之  解説委員

世界最悪レベルとなった福島第一原発の事故からきょうで4年。
廃炉に向けた作業は困難の連続。
最大の課題は汚染水。きのうもタンクの堰から汚染された雨水が敷地内に流出。
またタンクでの作業事故や、外洋へ流出し続けていた汚染水のデータが公開されていなかったことも明らかになり、福島の人たちからは信頼回復は困難との声。
現場で何が問題になっているのか、今夜の時論公論は福島第一原発廃炉への課題について水野倫之解説委員。
 
j150311_mado.jpg

 

 

 

 

 

 

j150311_00.jpg

 

 

 

 

 

 

40年かかるとされる廃炉、現在の工程表では2020年に溶けた燃料の取り出しを始めることを当面の最大の目標。
今はその準備期間、ガレキや車両も撤去され、放射線量が下がった区域も増えた。
私は、先日福島第一原発を取材した際初めて、顔全面を覆うマスクではなく、鼻と口元だけを覆うマスクで構内を回った。

最も作業が進んでいたのは4号機の使用済み燃料の取り出し。
プール内の1500体余りの核燃料は取り出しが完了し、底には燃料を収めていたラックだけが見えていた。
ただ順調なのはここぐらい。隣の3号機でも取り出し準備が進むが難航。メルトダウンして線量が高く、遠隔操作しなければならないから。
今回も3号機に近づくにつれて線量が上がり続けた。
『300、400!』

廃炉の入り口にすぎない使用済み燃料の取り出しでさえこの状況で、溶けた燃料にいたっては取り出し方法の具体的なメドは立っていない。
毎日350tずつ増え続ける汚染水が壁となって立ちはだかり、その対策に追われている。

▽構内では漏れにくい溶接型のタンクが毎日1基のペースで設置。
漏れやすいボルト締め型も、堰に雨水が入らないよう屋根がつくなど、漏えい対策が進んでいた。
▽またほとんどの放射性物質を除去できるとされるALPSの新型やストロンチウム除去装置など浄化装置が7種類まで増えた。

しかし対策が進む一方でトラブルも相次ぎ、1歩進んでもすぐに2歩3歩と下がる事態が度々。

今年1月にはこちらのタンクの点検中に天板から元受けの社員が転落して死亡する事故。直接の原因は命綱をつけていなかったことで、東電は研修を行うなど、2週間全ての作業を止めざるを得ない異常な事態。
ただ今回、別の作業員がやるべき作業を、この社員が作業が遅れないよう善意で行った可能性も。
背景には「作業工程厳守」というプレッシャーが現場全体にあったことを東電も認めている。作業を急ぐあまり、安全がおろそかになっていた。
なぜ急ぐ必要があったのか。
オリンピック招致で「コントロールされている」と発言した安倍総理に対して、東電の広瀬社長がタンクの汚染水を今月までに浄化すると約束していた。
この約束はALPSがフル回転することが前提。しかし稼働率が低迷し、東電はあわてて別の浄化装置も導入するなどあくまで目標にこだわり、余裕がない中で起きた事故。
結局全体の工程は遅れ、汚染水浄化の完了は1年以上先になる見通し。
 
j150311_01_4.jpg

 

 

 

 

 

 

 

さらに先月、汚染された雨水が長期間、排水路から外洋に流出していたのに東電が濃度のデータを公表していなかった。東電は『原因がわかってから公表すればよいと考えていた』と説明。
これに対して福島の漁業者から「もう信用できない」と批判。影響で、建屋周りの汚染された地下水が海に流出しないようくみ上げ、浄化した上で海へ放出する計画も見通しが立たなくなった。
 
j150311_02.jpg

 

 

 

 

 

 

 

いずれも共通しているのは、トップのマネジメントに大きな問題。
確かに汚染水の漏えいに備えて浄化することは、たとえ総理と約束しなくてもやらなければならない。
 
j150311_03.jpg

 

 

 

 

 

 


ただ頼みとなる浄化装置ALPSは、今回の事故後に開発されたもの。
使われるフィルターは大学の研究室で事故直後から研究が始まり、3年以上かかってようやく実用化にめどを付け、現場に投入されたもの。
自動車のような工業製品とは違って一品モノで、実験室でうまくいったからといって規模を大きくした実際の装置がうまくいくとは限らない。東電は全て順調に行く前提で処理目標を打ち出していたが、楽観的過ぎた。
廃炉カンパニーの増田プレジデントや広瀬社長ら責任あるトップが、こうした研究開発の現場も理解した上で実現可能な汚染水処理の目標を提示し、作業員に過度な負担がかからないよう目配りしなければ。
 
j150311_04_1.jpg

 

 

 

 

 

 

また情報公開のミスについても、トップの判断に問題。
濃度のデータは増田プレジデントらトップも把握。
しかし『排水路内が汚れていると思い清掃して濃度を下げることに集中し、データ公表まで思いが至らなかった』と釈明。
技術的、科学的に対応したのかもしれないが、そこには福島の人たちがどう感じるのか、どんな情報を知りたがっているのかという配慮に欠けていた。

東電は、原因がはっきりするまで事態の深刻さを認めようとせず、リスクを伝えるのに消極的とも言える体質。
おととし、地下トンネル内の汚染水が海に流出している事がわかった時にも、規制委が流出の疑いを指摘しても、裏付けるデータがないとして認めようとしなかった上に、流出と判断しても公表したのは3日後で、批判を浴びた。
しかし今回もこの教訓が生かされてない。体質は変わっていない。
海水に影響がなくても、原発の敷地の外に放射性物質が流出し続けているということを福島の人たちが知ったらどう受け止めるのか、トップは常に福島、そして国民の視点に立ち、敷地内外で測定したデータはすべて公表していくことが求められる。
 
j150311_05_2.jpg

 

 

 

 

 

 

また今回は東電を監視する政府や規制委もその役割を果たし切れていなかった。濃度が高いという報告を受けていたにもかかわらず、データを問い合わせたりすることはなかった。
政府も東電任せにせずさらに現場への関与を強め、信頼回復を急ぐ必要。

というのも汚染水処理はこの先も、放射性のトリチウムだけは取り除くことができずため続けなければならないという難しい問題も。規制委はタンクが増え続けては廃炉の支障になるとして薄めて基準以下にし、海に放出する検討を東電に求めている。東電は当面ため続ける方針だが、どのような方法をとるにせよ福島の人たちの理解なしに進む話ではない。

廃炉作業は遅れ気味で、政府と東電は近く廃炉工程全体の見直しを行う方針。現在の工程表にはこの汚染水や溶けた燃料を含めて廃炉に伴って出てくる様々な放射性廃棄物を最終的にどう処分するのか具体的に示されてない。本当に40年で廃炉は完了するのか、トップが実現可能な目標をしっかり見極めてより具体的な工程表を提示し、福島の人、そして国民に丁寧に説明していってほしい。
 
(水野倫之 解説委員)
 

twitterにURLを送る facebookにURLを送る ソーシャルブックマークについて
※NHKサイトを離れます。

キーワードで検索する

例)テーマ、ジャンル、解説委員名など

日付から探す

2016年06月
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30    
RSS