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時論公論  「原発再稼働 地元同意はどうあるべきか」

水野 倫之  解説委員

鹿児島県の川内原発について、原発が立地する薩摩川内市の岩切秀雄市長が再稼働に同意することを表明。新基準ができてから地元の同意はこれが初めて、今後は鹿児島県知事が同意するかどうかが最大の焦点となってくるとされている。
しかし、薩摩川内市の周辺の自治体の中には、「自分たちも地元だ」として再稼働への同意の権限を求めているところも。
地元の同意は立地自治体と県だけでいいのか、今夜の時論公論は地元同意を考える。
 
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薩摩川内市ではきのう臨時市議会が開かれ、再稼働を求める陳情について採決。
市役所前では、再稼働に反対する住民らが詰めかけ抗議活動も。陳情は賛成多数で採択され、
市議会として再稼働に同意。
これを受けて岩切市長も、立地自治体として再稼働に同意を表明。
(岩切市長)
「再稼働に慎重な市民の立場を考えると苦渋の決断だが、安全安心の確保に最大限努力したい。」

市長は、以前から規制基準に適合すれば再稼働してもよいと述べてきた。
最大の理由はこの30年、地域経済が完全に原発に組み込まれてきた現実が。
事故前、定期点検の時には2000人を超える作業員が薩摩川内市に入り、雇用や宿泊など、商工会議所の推定で年間25億円の経済波及効果。
ところが福島の事故を受けて運転がすべてとまるとそれがほとんど無くなった。そして最近も市内にあった半導体の工場が撤退し、人口も減少。
今でこそ基準を満たすための工事があり原発の作業員は入っているが、それが終われば市の経済が苦しくなるのは目に見えているとして、経済界から早く再稼働してほしいという要望が強まる中、市長は再稼働に同意。

しかし市民の中には慎重な意見も。
私は、住民説明会を取材。
地震や津波、それに過酷事故への対策をもっと厳しくすべきだという意見や、避難計画が審査されていないのは問題だという指摘など再稼働に慎重や反対の意見が多く出た。また1000人を超える参加者の中で質問できたのは10人で、最後は質問が打ち切られた。これでは、再稼働のための手続きのための説明会のようなもの。市民の理解が進んだとは言い難く、もう少し時間をかけた丁寧な説明が必要。
ただ岩切市長は、最後は市民の代表である議会の意見を尊重するとして、今回再稼働への同意を判断。

これを受けて、今後は鹿児島県が同意するかどうかが焦点となってくるとされている。鹿児島県議会は来週にも臨時議会を開いて議論する予定、伊藤知事は再稼働への同意について、「薩摩川内市と鹿児島県で十分」と述べ、薩摩川内市の判断と県議会の意見を踏まえて総合的に判断すると。
 
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しかし、周辺自治体の中には、再稼働への同意の権限を求める動きが相次ぐ。
薩摩川内市の隣、いちき串木野市議会は、再稼働の同意権限を求める伊藤知事あての意見書案を可決し、鹿児島県に提出。
同じような意見書は30キロ圏内の日置市の議会でも採択、阿久根市でもきょうの議会で採決するか議論されることに。
 
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こうした周辺自治体から要求が相次いでいるのは、福島の事故を受けて防災体制をとる範囲が30キロ圏まで広がり、あらたに避難計画を作る義務が発生したのに、再稼働への同意については、制度が何も変わっていないことが背景。
 
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自治体の同意権限は法律に基づくものではなく、おもに立地自治体と県が自主的に電力会社と協定を結び、増設などの際に事前の了解をとるよう求めてきた。
ところが福島の事故で、放射能の被害がかなり広範囲に及び、あらたに避難計画を作る義務を負うことになった自治体の多くが、自分たちも地元だという意識を強く持つように。

鹿児島県でも事故後、30キロ圏のすべての自治体が協定締結を求め、九州電力も応じたが、その内容は情報提供にとどまり、薩摩川内市と県が持つ再稼働の同意の権限は相変わらず認められていない。

特に、いちき串木野市は原発から最も近いところで5キロしかなく、薩摩川内市の一部が30キロ圏外なのに対して全域が30キロ圏に入ることから、避難計画を作るために防災担当の職員を倍増。
しかし安全に避難できないのではないかと再稼働に反対する意見が広がり、住民の半数を超える。
1万5,000人以上の署名が市に。避難計画づくりに苦労し、市民の不安も高まっているのに地元と認められず、言いたいことも言えないのはおかしいというわけ。
 
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こうした不満は他県でも、青森県で建設中の大間原発の30キロ圏に入る対岸の函館市は地元としての権限を求めたが、応じてもらえなかったとして今年、国や電力会社に建設差し止めを求める訴訟を。
今、こうした周辺自治体が、川内原発再稼働で地元同意がどのように扱われるのかを注目。

日ごろから原発を意識した対策、そして生活を強いられることになった自治体はすべて地元ととらえ、少なくとも避難計画づくりを迫られることになった30キロ圏を地元と考えていく必要。
 
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政府も、地元の理解と協力を得るよう取り組むことを基本方針、宮沢経済産業大臣が先週、薩摩川内市長の求めに応じて都内で面談、再稼働の方針に変更がないことを伝えたほか、来週にも鹿児島県を訪問し、知事と会談することも計画。
しかし地元の範囲についてはあいまいなまま、周辺市町村との会談などの予定は今のところない。
 
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このように事故前と同じような地元への対応で関係者の理解を得られることになるか。
鹿児島では地元の範囲について知事にゆだねる形になっているが、周辺自治体の声を受け止め、ここは政府が避難計画の範囲に合わせて少なくとも30キロ圏を地元と認め、その圏内の全ての自治体から再稼働にあたっての意見を聞く仕組みをつくっていかなければならない。
 
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(水野倫之 解説委員)

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