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時論公論 「尖閣諸島"国有化"2年 やまぬ中国船の領海侵入」

津屋 尚  解説委員

日本政府が尖閣諸島をいわゆる「国有化」してからきょう11日で2年になります。日本側の抗議にもかかわらず、尖閣諸島の周辺では今も中国の監視船による日本の領海への侵入が繰り返されています。今夜は、この問題で日本が直面する課題について考えます。
 
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尖閣諸島をめぐっては、幸い日中双方が衝突する事態には至っていませんが、今の情勢が続くことは日本政府にとって容認できるものではありません。海上保安庁の現場での対応や政府の度重なる抗議にもかかわらず、日本の領海への侵入が繰り返されています。中国は常に現場の海域に監視船を配置することで、その船があたかも自国の領海をパトロールしているかのような状況をつくりだし、その既成事実化を着々と進めています。
 
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尖閣諸島は、沖縄本島からは400キロ以上、最も近い石垣島からでも170キロ離れた、まさに絶海の島です。

(VTR:領海侵入する中国海警)
この現場では先月から、「中国海警局」の船が、33日間連続で日本の領海または接続水域に侵入しています。きのう(10日)も4隻が領海に侵入しました。海上保安庁の巡視船は24時間、現場の海域に張りついて中国側の船の動きに目を光らせ、警告や退去の要求を発しています。
 
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このグラフは、尖閣諸島周辺の領海とその手前の接続水域に侵入した中国の当局の船の推移を示しています。日本政府が尖閣諸島の3つの島を取得したのは2年前の9月11日。この日を境に中国は、海上での活動を一気に活発化させました。日本側に否があると宣伝するためのプロパガンダだとの見方もあります。グラフの谷間、つまりところどころ侵入が少なかったところは、台風や悪天候で船が活動できなかったか、ベトナムとの対立が激化した南シナ海に一部の船が借り出された時期にあたります。それ以外は、中国当局の船が4隻前後、毎日のように尖閣諸島の周辺にいる状態が続いてきました。それだけでなく、熱気球やヨットで島に上陸しようとした中国人もいました。海上保安庁は、中国があらゆる手段を駆使して海洋進出を進めようとしているとみています。
 
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尖閣諸島について日本政府は「日本が有効に支配しており、解決すべき領有権問題は存在しない」という立場です。これに対して中国は、この主張を徐々に突き崩そうとしています。
今年の全人代・全国人民代表大会では、「海洋の権益を断固として守り、海洋強国の建設に力を入れる」などとする中国政府の方針があらためて示されました。中国による尖閣諸島領有の主張は、東シナ海全体を中国の管理下に置く長期的な海洋戦略の一環とみられています。
 
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中国側が次々と送り込んでくる船に対して、海上保安庁は、全国の限られた態勢の中からやりくりして応援の巡視船を派遣して対応しています。
そこで、全国の海上保安部に及ぶ負担を少しでも減らすため、尖閣諸島の海上警備を専門に行う「専従チーム」を発足させます。拠点となる石垣海上保安部には来年度までに巡視船12隻が配備される計画で、この秋、その第一陣として2隻が配備されます。
 
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しかし中国も今、急ピッチで尖閣諸島での任務も可能な大型巡視船の建造を進めています。このクラスの船は海上保安庁全体でも現在55隻です。
一方、中国はいま、50隻程度とみられています。日本の巡視船は来年度62隻になりますが、中国は5年から10年後には倍増して100隻を越えるとみられ、数の上では将来、海上保安庁の勢力を大きく上回る可能性もあります。
 
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問題は、当局の船だけではありません。尖閣諸島周辺にはこのところ中国漁船による領海侵入も増えています。
尖閣諸島沖の日本の領海に入って操業する中国漁船は、3年前までは年間で8隻でしたが、去年は88隻に、今年はすでに200隻以上にのぼっています。
これについて、海上警備に詳しい専門家は、これらの漁船の目的は必ずしも漁ではなく、中国政府の意向を受けて海上保安庁の活動を撹乱するため送り込まれた可能性があると指摘しています。海上保安庁は、中国漁船の領海侵入に対応するため、より小回りのきく小型の巡視船も新たに現場に投入していく方針です。

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中国は海の上だけでなく、東シナ海の上空での活動も活発化させています。
中国機に対する航空自衛隊のスクランブルは去年、過去最多を更新し、今年も去年を上回るペースで増えています。中国はさらに尖閣諸島を含むエリアに防空識別圏を一方的に設定した他、中国軍の戦闘機が自衛隊機などに異常接近する危険な行為も繰り返されました。
中国軍と自衛隊が直接対応することになる空の事案は、軍事衝突に発展する危険性がより大きく、日中は、衝突防止のための協議を早急に再開させる必要があります。

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この一方で、現場の海域ではこのところ挑発的な行動は報告されておらず、一見情勢は落ち着いているかのようにも見えます。
中国にしてみれば、中国の船が尖閣諸島の周辺に常にいるという状態を作り上げるという最初のステップはすでに達成したというところかもしれません。
中国は11月に北京でAPEC・アジア太平洋経済協力会議を控えていますから、挑発的な行為で国際的な非難を買うよりも、当面は現場に船を送り続け、既成事実を淡々と積み上げていけばよいと判断しているのではないか、そう複数の専門家は指摘しています。
 
では、こうした中国の動きを封じるため、日本はどのような対策をとるのでしょうか。緊張をエスカレートさせないためにも、最前線で任務にあたる海上保安庁の対応能力を高めることは最優先課題です。しかし、海上保安庁による現場の対応だけでは限界があることは言うまでもありません。
そこで、平和的な解決を目指す上で課題となるのは、日本の外交の力です。
外務省は領海侵入などを受けて、その都度、抗議を繰り返していますが、ほとんど効果がないのが実情です。
 
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アメリカの関与をどこまで引き出せるかですが、オバマ大統領は、今年4月に来日した際、「尖閣諸島は日米安全保障条約の対象だ」と明言し、中国をけん制しました。その一方で、領有権を巡る問題については立場を明らかにしませんでした。アメリカとしては、無人島をめぐる日中の紛争に巻き込まれたくないというのが本音でしょうが、日本としては、強固な同盟関係にあるアメリカに対して、領有権についても日本の立場を明確に支持するよう説得できるかどうかが課題です。
中国は今後も、尖閣諸島沖に常に船を配置し、時には力を背景に、時には様々な手段を駆使して国際社会に訴えては、海洋権益の拡大を進めていくものとみられます。日本にとっては、中国との軍事的緊張を高まっていくという最悪の事態を避けるためにも中国の戦略を長期的な目で分析し、有効な対応策を打ち出すことができるのかどうかが問われています。     

(津屋 尚 解説委員)
     
 

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