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時論公論 「遅れる住まいの復興 長引く仮設住宅生活」

二宮 徹  解説委員

東日本大震災から3年4カ月あまりが過ぎました。
被災地では、災害公営住宅の建設や、集団で移転する高台の造成が遅れています。
今、仮設住宅で生活している人は、岩手・宮城・福島の3つの県でおよそ9万人いますが、最も長い人は8年間も暮らす可能性が出てきました。
しかも、5年以上、この暮らしを続ける人は2万人にのぼる可能性も出てきました。
そして、仮設住宅は、床が腐ったり、カビが生えたりして、急速に劣化し、被災者の暮らしは、新たな壁に直面しています。
「住まいの復興」が遅れている影響や理由、それに行政に何が求められるのかを考えます。
 
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被災地では5年間の集中復興期間が残り2年を切り、復興事業が本格化しています。
 
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復興の進捗状況ですが、ことし3月末の時点で、福島県の避難指示区域を除くと、がれきの処理は97%と、ほぼ完了しました。
幹線道路は99%が開通し、農地は63%が営農を再開できるようになりました。
取材した実感でも、道路や港などのインフラの整備は目に見えて進んでいます。
一方で、被災者が賃貸で入居する災害公営住宅は、10%しか完成しておらず、集団移転をする高台の造成など、民間の住宅用地の整備が完了したところは、わずか3%にとどまっています。
例えば、宮城県気仙沼市では、完成した災害公営住宅はなく、建設予定のものも、およそ40%が、2か月から1年以上、完成が遅れる見通しになりました。
 
住まいの復興の遅れは、仮設住宅に暮らす9万人あまりの被災者を直撃しています。
今、住んでいる人の多くは、資金面のほか、家庭や職場、学校などの事情で、災害公営住宅の完成や高台の造成を待っている人たちです。お年寄りも多くいます。
 
仮設住宅の入居期限は災害救助法で原則2年と定められています。
ところが、見直された復興事業計画によりますと、最も長い人は、高台の造成の遅れで、8年間も仮設住宅に暮らす可能性が出てきました。
阪神・淡路大震災では、最長で5年間でしたからそれを大きく上回る見込みです。
そして、復興の遅れにより新たに生じた問題は、およそ2万人が、5年以上、この生活を続けなければならない可能性が出てきたことです。
 
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災害時に身を寄せる避難所は、たいていは体育館や公民館などで、大勢で暮らすので、プライバシーや健康面で問題があります。
このため、仮設住宅は、少しでも通常の生活を取り戻してもらうために、早く造ることが最大の目的です。
そして、2年の間に、生活を再建し、自分の土地に家を建て直したり、部屋を借りたりする資金を蓄えてもらうことを想定しています。
 
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しかし、東日本大震災の被災地は、もともと平地が少ないうえ、海沿いの平地は津波が再び襲う恐れがあるため住宅を建てることができません。多くの人が、自分の土地に戻れないのです。
このため、山を切り開くなどして、多くの住宅地を造らなければならず、最長8年の可能性という、これまでにない事態になっています。

長引く仮設住宅での暮らしは、住民の心や体に大きな負担になっています。
そもそも、家族で暮らす人たちには部屋の狭さが大きな問題です。標準的な面積は一戸当たりおよそ30㎡、わずか9坪です。
4畳半が2つと台所の2DK、こうした部屋に家族4人で住んでいる人が多くいます。
収納もほとんどないため、実際はもっと狭く感じます。
 
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しかも、子供が大きくなるにつれて、狭さの問題は深刻になります。
たとえば6年間住むことになれば、赤ちゃんは小学生に、小学6年生は高校3年生になります。
ある男性は、部屋が狭いため、入居以来、敷布団で寝たことがなく、いつも布団の半分くらいの幅の、縦長の座布団で寝ていると話していました。

さらに、今、深刻さを増しているのが、仮設住宅の劣化です。
最近、カビの大量発生と健康への影響が問題になってきました。
床が腐ってへこんだり傾いたりしたところや、雨漏りをするところもあります。
仮設住宅の多くはプレハブです。基礎部分はコンクリートではなく、主に木の杭が使われています。水はけや換気にも問題があり、湿気や結露、暑さ、寒さが建物を痛めています。
 
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自治体は住宅の補修を随時行っていて、基礎や天井の大掛かりな修繕に向けた検討も始まっています。多くの住宅でこうした修繕が行われることを望みます。
 
先行きも心配です。住まいの復興は、今後、さらに遅れるおそれがあります。
その大きな理由の一つが建設業の人手不足です。
復興事業には、全国から工事関係者が集まっています。
ところが、最近は全国各地で公共工事やマンション建設など、官民双方の建設需要が高まっているため、被災地に人が集まりにくくなり、工事がさらに遅れるのではないかと心配する声が上がっています。
 
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建設業の人手不足に対して、国はこれまでも対策をとってきました。公共工事の人件費の基準となる労務単価の推移を見ると、震災後、国は毎年引き上げる中で、3県の単価を全国平均より高くすることで、復興事業の人手を確保しやすいよう、間接的に促してきました。
これにより、3県は震災前よりおよそ4割、全国平均より1500円近くも高くなりました。
国は、早ければ年内にも、再び単価を引き上げることを考えています。
 
労務単価の引き上げにより、被災地に工事関係者を集めやすくなっていることは確かです。
ところが、住宅を買う資金を貯めている被災者にとって、良くない副作用が出ています。
つられて民間の住宅の建築や販売の価格も値上がりしてしまっているのです。
被災地の建築業者に聞いたところ、特に去年以降は、賃金の相場がどんどん上がっているといいます。
気仙沼市の仮設住宅に住む男性は、「最近、住宅メーカーの説明会に行ったら、ひと坪当たりの費用が去年よりおよそ3割も値上がりしていた。買うのを考え直している」と話していました。
 
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仮設住宅は、その名の通り、「仮の住まい」のはずです。
2万人もの人が、5年以上も住むというのは、災害救助法の趣旨からしても、あってはならないことです。
急速に劣化する狭い部屋での生活で、被災者の体と心への負担はすでに限界に達しています。
この状況が続けば、遅れる復興に見切りをつけ、ふるさとを離れる人が増えてしまいます。
 
国や自治体には、住まいに関わる工事を最優先にして、まずは、これ以上の遅れが出ないように、できれば前倒しで進めてほしいと思います。
また、仮設住宅の傷み具合や住民の意向を細かく把握する必要があります。
そして、全面的な修繕をできるだけ早くに行うこと、さらには、新しい仮設住宅を建てたり、比較的良好なところに住みかえてもらったりするなど、新たな対策にも踏み込んでほしいと思います。
 
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これほど多くの人が、これほど長く、仮設住宅に暮らし続ける災害は今までありませんでした。
住民の健康や精神面へのケアをしっかり行なうとともに、思い切った対策を望みます。
 
(二宮 徹 解説委員)

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