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時論公論 「北朝鮮は核実験に踏み切るのか」

出石 直  解説委員

北朝鮮が核実験の準備とも受け取れる動きを見せ、各国は警戒を強めています。
果たして4回目の核実験はあるのでしょうか。
 
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【最近の動き】
核実験は、北朝鮮北東部のプンゲリにある核実験場で行われます。
 
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その様子を人工衛星から撮影したのがこちらの写真です。アメリカの研究グループが分析を続けています。
▽一年ほど前から、新たな核実験の準備と見られる掘削作業の様子が見られるようになりました。
▽先月からは、資材を運び込んでいると見られる大型車両や人の動きが活発になり、
▽最新の映像でも、作業が続いていることが確認されています。

北朝鮮当局も近く核実験に踏み切るかのような発言を繰り返しています。
▽3月30日の北朝鮮外務省の声明は「新たな形態の核実験も排除しない」と核実験の実施を示唆、
▽先月28日には国防委員会が「われわれはそれ以上の措置も講じることができる」とする声明を出し、
▽今月10日付の労働新聞も「核実験を含む対応措置を取っていく」とする論説を掲げています。
 
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【各国の対応】
こうした動きを受けて、各国は監視と警戒を強めています。
先月、日本、韓国を訪問したオバマ大統領は、核実験を思いとどまらせるため圧力を強めていくことを確認、4回目の核実験に踏み切れば追加的な制裁を科す考えを示しました。
これに先立って電話で会談した習近平国家主席とパク・クネ大統領も、核実験を抑止するために連携していくことで合意しています。
 
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【瀬戸際外交と核開発】
北朝鮮による一連の挑発的な動きは、ことし2月から先月まで続けられた米韓の合同軍事演習、さらにはオバマ大統領のアジア歴訪を強く意識したものであることは間違いないでしょう。ただ、これが「見返りを得るため」とか「アメリカを交渉のテーブルに引きずり出すため」という見方は、いささか一面的過ぎるように思えます。
北朝鮮は、自分達にとって核兵器は、自らの安全を守るためのもの、アメリカから攻撃されることを防ぐためのものだと再三にわたって強調しています。その主張は一貫しています。
短期的に見れば、外交上の配慮や損得計算から、この時期の核実験を見送るという判断はあるかも知れませんが、中長期的に見れば、核武装によって自国の安全を守るのだという基本方針を変えない限り、北朝鮮が核開発を放棄するとは思えません。
仮にこの時期の実施は見送られたとしても、いつかは4回目、さらには5回目、6回目の核実験に踏み切ると考えておくべきではないでしょうか。
 
【核保有の既成事実化】
実はキム・ジョンイル政権とキム・ジョンウン政権では、核開発への対応がかなり異なっています。
▽キム・ジョンイル政権は、核の放棄に応じるかのような構えを見せながら、密かに核開発を続けました。国際社会との交渉は、いわば核開発の隠れ蓑だったのです。
 
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▽一方、キム・ジョンウン政権になってからは、北朝鮮はあからさまに核保有を誇示するようになりました。核保有の既成事実化です。
 
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▽おととしの4月には憲法を改正して自らを「核保有国」と位置付け、
▽去年2月には3回目の核実験を断行、
▽3月には、経済建設と核開発を同時に進めるいわゆる「並進路線」を打ち出しました。
▽4月には「核抑止力と核報復打撃力を質・量ともに強化する」などとする法令も制定しています。
 
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表向きは「究極的には核兵器のない世界を目指す」としているものの、「核兵器を放棄するつもりは毛頭ない」というのが今の北朝鮮の本音ではないでしょうか。
 
【6か国協議と国際情勢の変化】
北朝鮮の核開発をめぐっては、11年前にスタートした6か国協議という枠組みがあります。「すべての核兵器と既存の核計画を放棄する」とした2005年9月の共同声明に基づいて、北朝鮮の非核化を目指す取り組みです。しかし、6か国協議は2008年の12月を最後に5年半近くも開催されていません。それどころか北朝鮮は、去年1月に出した声明で「共同声明は死滅し、朝鮮半島の非核化は終末を告げた」と述べ、核放棄を拒絶する考えを明確にしています。
 
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6か国協議が始まってから11年、この間、国際情勢はめまぐるしく変わりました。
▽北朝鮮は3回の核実験を実施、
▽アメリカは、イラク、アフガニスタンでの戦争で疲弊し、シリアやウクライナの問題では指導力を発揮できずにいます。影響力の低下は明らかです。
▽韓国は、南北首脳会談を実現した革新政権が終わり、2代にわたって保守政権が続いています。
▽日本は、小泉総理大臣の2回のピョンヤン訪問があったものの、その後、拉致問題をめぐる協議は進展しないままです。3月末に再開した日朝間の政府間協議も4回目の核実験があればストップせざるを得ないでしょう。
▽一方、中国やロシアには、大きな変化が見られます。これまでは北朝鮮に一定の理解を示し、時には擁護する側でしたが、3回目の核実験の頃から、核やミサイル開発に対して明確に反対の立場を示すようになりました。
とりわけ6か国協議の議長国であり、北朝鮮の貿易の7割以上を占めている中国の変化は重要です。頻繁に“中国詣で”をしていたキム・ジョンイル総書記とは対照的に、キム・ジョンウン第1書記は就任以来まだ一度も中国を訪問していません。「訪問したくてもできない」と言った方がより正確かも知れません。
一方、中国と韓国は首脳会談を重ねるなど関係を強めています。年内には習近平国家主席が韓国を訪問する予定で、これが実現すれば、北朝鮮と中国の関係に大きなインパクトを与えることは確実でしょう。
残念なのは、せっかく「日本、アメリカ、韓国」対「中国、ロシア」といういわば対立の構図が変わってきたのに、日本と中国、日本と韓国との関係がしっくりいっていないことです。ウクライナ問題をきっかけにアメリカとロシアの間の溝も広がるばかりですし、南シナ海をめぐっては中国とアメリカの対立が強まっています。
 
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各国バラバラでは、6か国協議の再開どころか突っ込んだ話し合いもできません。利害の対立や思惑の違いはあっても、こと北朝鮮の核問題については、もっと危機感を共有すべきではないでしょうか。
 
【まとめ】
とかく、核実験があるかどうかにだけ関心が集まりがちですが、4回目の核実験が近々あるにせよ、あるいはしばらく遠のいたにせよ、北朝鮮が核開発の意志を明確化し、着実にその技術を蓄積していることは紛れもない事実です。その方が、より重要で深刻と考えます。あたかも非核化に応じるかのような北朝鮮の態度に騙され続け、ここまで核開発を許してしまった国際社会の責任は大きいと言わざるを得ません。
核の放棄を約束した6か国協議の共同声明には、エネルギー支援やアメリカとの国交正常化など、北朝鮮が強く求めている項目も盛り込まれています。少なくとも北朝鮮が一度は国家として約束したこの共同声明にまで押し戻す、そのための方策を真剣に考える時期に来ているように思います。
 
(出石 直 解説委員)

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