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時論公論 「普天間基地問題 知事決断の背景と今後の課題」

西川 龍一 解説委員 / 正延 知行  解説委員

【リード】
正延)
こんばんは。17年の時を経て、沖縄県のアメリカ軍普天間基地の移設問題に、年末、大きな動きがありました。
沖縄県の仲井真知事は、政府が求める名護市辺野古沿岸の埋め立て申請を承認しました。
今夜の時論公論は普天間基地の移設問題について地方自治担当の西川解説委員とともに考えます。
 
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【普天間基地とは】
正延)
まずはこちらをご覧ください。(VTR)普天間基地です。沖縄本島南部の宜野湾市の真ん中に基地があります。その宜野湾市には、およそ4万世帯、9万5千人が暮らし、基地を取り囲むように住宅が密集しています。世界一危険な基地とも呼ばれる所以です。
2004年に基地のすぐ近くにある沖縄国際大学の敷地内にアメリカ軍のヘリコプターが墜落しましたが、普天間基地の危険性を象徴するような事故でした。
 
【普天間問題の経緯】
正延)
普天間基地の返還を巡る過去の経緯です。
 
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普天間基地は、1995年、アメリカ海兵隊員による少女暴行事件が起きた後、基地の撤去を求める県内の声が高まり、翌年、日米両政府が返還で合意しました。それ以来、沖縄県内は、代替施設の県内移設か県外移設かをめぐって揺れ続けてきました。2006年に日米両政府は、辺野古にV字滑走路を中心とする代替施設を建設する計画で合意。しかし2009年に、鳩山政権が「少なくとも県外移設」という主張を打ち出してから、県内の世論が大きく県内移設反対に傾きました。安倍政権に代わった後の去年3月には、政府が沖縄県の仲井真知事に辺野古沿岸部の埋め立てを申請し、年末、仲井真知事が申請を承認するという流れになっています。
 
【県内反応】
正延)
西川さん。仲井真知事は、前回の知事選で県外移設を訴えて再選しましたよね。これに対して今回、埋め立て承認という決定をしましたが、沖縄県内ではどういう思いで受け止められているのでしょうか?

西川)
移設を巡って時の政権の意向にほんろうされてきたこともあって、地元沖縄には辺野古への移設に根強い反対の意見があります。経済界の一部などには、歓迎する向きもありますが、仲井真知事の判断には大きな反発が出ています。知事が記者会見で承認を発表した先月27日には、市民団体のグループなど2000人が沖縄県庁を取り囲み、プラカードを掲げて承認したことに抗議しました。きのう開かれた臨時の県議会では、辺野古移設を断念し、基地の閉鎖と撤去を速やかに求める意見書が可決されました。
 
【知事承認の理由】
正延)
県内に根強い反対意見がある中、なぜ仲井真知事は名護市の埋め立てを承認したのでしょうか。

西川)
仲井真知事は、先月27日に行った記者会見で、沖縄の負担軽減策について、政府と交渉を進めた結果、▽普天間基地の5年以内の運用停止▽日米地位協定の改定▽アメリカ軍の輸送機オスプレイの県外への分散配備▽沖縄振興予算の確保の4つについて、具体的な成果が得られたと説明しました。「沖縄振興予算」については、政府は概算要求を上回る3460億円を計上したうえ、今後も2021年度まで毎年3000億円台の予算を確保するとしています。しかし、地元では早くも実現可能性への疑問があがっています。
 
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正延)
どういう点でしょうか。

西川)
予算以外は、いずれも政府だけでは決められないことだからです。オスプレイの分散配備一つとっても、運用はアメリカ軍が決めることです。沖縄の基地問題は、閣議決定でさえ反故にされてきたという思いがあるだけに、おいそれと信じることはできないわけです。

正延)
負担軽減策や振興策は、承認に向けて背中を押す材料にはなったかもしれませんが、私は最大の理由として、普天間基地の固定化への懸念だったように思います。仲井真知事は、政府の辺野古移設への揺るがぬ決意を感じ取り、今回埋め立て申請を拒否すれば、今後一層長い期間、普天間基地が運用され続ける恐れが高いと判断したからではないでしょうか。

西川)
確かに政府からは知事の判断を前に「県内移設以外はあり得ない」という声も聞かれましたから、そういう思いもわかりますね。

正延)
政府は、年末に、国家安全保障戦略などを閣議決定し、中国の海洋進出を念頭に、ますます沖縄周辺の防衛力を高め、抑止力としての日米同盟を強化しようとしています。またアメリカは、世界の成長センターとなったアジアに目を向け、アジア重視の姿勢を打ち出しています。不安定なアジアの情勢を考えれば、沖縄のアメリカ軍基地の重要性は高まるばかりです。
 
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そうした中で、住宅地の真ん中にある普天間基地が存在し続ければ、いずれ大事故が起きかねないという心配があったものと思います。仲井真知事の周辺は、「知事は県外移設を主張し始めてからも、何としても基地問題を解決したいと悩んできた」と言います。これ以上県内に新たな基地を受け入れたくないという県内の空気と、一刻も早く普天間基地の危険性を取り除きたいという気持ちの狭間で、苦しい決断をしたと思います。

西川)
会見の中で、仲井真知事が埋め立ては承認したが県外移設は引き続き求めると述べて、県外移設の公約は変えていないと説明したことは、そうした知事の苦しい胸の内の現れだと思います。しかし、こうした説明は県民にはわかりにくく、公約違反だという厳しい声もあります。
 
【課題・まとめ】
正延)
今回の承認を受けて、政府は、現地の調査や測量などの作業に着手する予定です。また負担軽減策を具体化するため、防衛省内に作業チームを発足させました。西川さん、普天間基地の移設に向けて、今後の課題は何でしょうか?

西川)
最大の課題は、基地負担の軽減そのものにあたる普天間基地の5年以内の運用停止だと重います。仲井真知事は、「安倍総理の強いリーダーシップにより、5年以内の運用停止の道筋が見えつつある」と述べました。しかし、現行の計画では、普天間基地を移設して返還されるまでに9年を見込んでいて、日本側にできるのは、事務手続きの短縮が中心となるため、大幅に期限を短くすることは難しいのが現状です。
 
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正延)
今月19日には、移設先の名護市で市長選挙が行われます。また9月には名護市議会議員選挙、11月には沖縄県知事選挙が行われる見込みです。結果次第では、政府と地元の間で代替施設をめぐる立場がねじれ、県民の感情対立や抗議活動が高まる可能性もあります。一刻も早い移設に向けては、大きな課題となるでしょう。
 
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西川)
沖縄の人たちが最も懸念するのは、本土から見て「移設先の名護市が反対するから、普天間の返還が進まないのでは」というおかしな状況が生まれかねないことです。普天間基地の問題に関わってきた人たちの中には、元々基地の撤去を要求してきたのに、いつの間にか移設が前提となってしまっていると憤りを隠せない様子で話す方もいます。沖縄の負担軽減策は、アメリカ軍施設の県内でのたらい回しではないはずです。

正延)
日本の安全保障上、政府が必要だとする代替施設の建設は、今回、知事の埋め立て承認によって、ようやく動き始めた形ですが、普天間基地の危険性の除去と引き替えに、その代替施設の負担を強いられるのは、やはり沖縄です。かつて沖縄では民間人を巻き込んだ日本で唯一の地上戦が行われ多大な被害を受けたことや、戦後の独立に当たって、本土と切り離されるなど、苦しみの中で歴史を紡いできたことに思いを致し、国全体で更に沖縄の負担軽減に何ができるか、改めて考える機会であってほしいと思います。   
今夜は、西川解説委員とともに普天間基地の移設問題についてお伝えしました。 
 
(西川龍一 解説委員/正延知行 解説委員)

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