2009年06月08日 (月)『モンク6』に出てきた白黒映画の意味は?
『モンク6』第10話「えっ?弟!?」では、モンクと弟のジャック・ジュニアがテレビで映画を見るという場面が出てきました。これって結構イミシンな気がしました。
モンク兄弟が見ているのは1957年のSF映画『縮みゆく人間』。
核実験によって汚染された雨に殺虫剤がまざったものを浴びた主人公のスコットは、体がどんどん小さくなっていきます。彼はやがてクモと戦わねばならないほど小さくなっていくという怪奇SF映画です。
『名探偵モンク』の中ではモンク兄弟のお父さんが昔この映画を好きだったという設定になっています。公開当時のアメリカでこのSFが評価された背景には、米ソの核戦争の恐怖があるのはもちろんなのですが、実はもうひとつ別のテーマがあるのです。
それは「男性優位時代の終わり」です。
どんどん体が縮んでいく主人公スコットは、「男は一家の主であり、一番大きくてえらい!」と無邪気に信じていた時代が揺らぎ始めた戦後アメリカの象徴であるとされています。女性の社会進出が進み、お父さんは一番エライというそれまでの男の価値観が揺らぎ始めた50年代、自分の意志に反してどんどん体が縮んでいくスコットの姿は、男なんて実際には自分で思っているほど大きな存在ではないんだよ、ということを表現しているとされています。そして主人公はやがて妻にかえりみられることがないほど小さくなって人々の前から姿を消してしまうのです。
映画『縮みゆく人間』の原作者リチャード・マシスンは、小説家であると同時にテレビドラマや映画の脚本家としても活躍してきた人です。『スター・トレック 宇宙大作戦』「二人のカーク」や映画『激突!』『アイ・アム・レジェンド』の原作者でもあります。
マシスンは読者や視聴者に対して「あなたは本当にあなたが思っているような人間ですか?今一度問い直してみるべきではありませんか。自分は一体誰なのかと」という問いかけをSFやホラー小説の形で常に突きつけてきました。
そんなひねりのきいたマシスン原作の映画『縮みゆく人間』を見ているモンク兄弟について、私はついついちょっと深読みをしてみたくなるんです。
エイドリアン・モンクが幼いとき、父ジャックはまさに『縮みゆく人間』の主人公のように忽然(こつぜん)と家族の前から姿を消してしまいました。
彼が失踪したのは「お父さんが一番エライ!」というアメリカが、消えていこうとしていることを強く感じたからでしょうか。そして彼が好きだったという映画『縮みゆく人間』の主人公に自分を重ねて、小さく小さくなった自分を思って姿を消したということなのではないでしょうか。
そのことに気づかないモンク兄弟が無邪気に、(父が好きだったという)『縮みゆく人間』を見ている。
そう考えてみると、あの場面はモンク親子が理解しあうことの難しさを表しているような気がして、とてもさびしい気持ちになってしかたありませんでした。
(写真)左:マシスン作『縮みゆく人間』原作小説
右:映画『縮みゆく人間』のビデオ
投稿者:YUKI | 投稿時間:20:44
