【謎の一時停止】
「県道16号線と国道10号線が合流する箇所で、県道16号線側が一時停止になっている件について、調査して欲しい。そもそも、一時停止の必要があるのか」
この視聴者から寄せられた調査依頼を受けて、私たちは早速、鹿児島市稲荷町の現場へ向かいました。
片側1車線の国道10号線の外側から、らせん状の下り坂となっている2車線の県道16号線が合流しています。
そして、一時停止に対して視聴者が疑問を抱いた理由もよく分かりました。合流後も車線の数は変わらないため、ドライバーからすると停止する必要性が感じられないのです。
近隣住民によると、この場所では朝の通勤時間帯を中心に渋滞が発生。2キロ以上になることもあるといいます。
近くに住む人
【県議会で話題になっていた】
何のための一時停止なのか、私たちはこの道路を管理している県に問い合わせました。ところが担当者の回答は「詳しいことは分からない」とのこと。
「そんな馬鹿な」と思いましたが、それならばすでに公になっている資料の中から手がかりをつかめないかと考え、県議会の議事録を見てみることにしました。
インターネットで公開されている県議会の議事録は、キーワードを入力すると瞬時に該当するやりとりを提示してくれるすぐれものです。
「吉野町 一時停止」で検索すると…。
「朝のラッシュ時は吉野町柿之迫付近まで2キロメートルの慢性的な渋滞が起きております。その原因は、合流地点での一時停止であります」
「合流地点に信号機を設置することによって(中略)渋滞時間は大幅に短縮されると考えます」
2006年に、こうした質問が県議会議員から出ていたことが分かりました。“謎の一時停止”は県議会で問題になっていたのです。
【キーマンは県議会に】
当時のことを知れば謎が解けるのではないか。私たちはかつて県議会で質問し、いまも県議会議員を続けている桑鶴勉さんに話を聞きに行きました。
桑鶴さんが最初に質問したのは15年前。ただ、30年以上前から、吉野町の住民から渋滞をどうにかして欲しいという強い要望があったといいます。
桑鶴勉県議
【一時停止は「バス停があるから」】
15年前、桑鶴さんの質問に答えたのは鹿児島県警の本部長。一時停止の信号は「バス停があり安全確保が必要」だからだという理由が明かされました。
このバス停は合流地点から70メートルほど先にある「稲荷町」です。
3車線の最も内側にある国道を走ってくるバスが、短い距離で2つの車線をまたいで移動し、反対側にあるバス停に止まるため、接触事故を避けるために直前で一時停止せざるを得ないというのです。
【県議は代案を示したが…】
そこで、桑鶴さんは代案を示したといいます。
桑鶴勉県議
桑鶴さんの提案を受けて、県警も動き出しました。近隣住民への聞き取りや道路環境などを調べた上で、桑鶴さんの案を稲荷町のバス停を利用する2社に申し入れました。
ところが、1社は強く反対し、高額な営業補償も求めたといいます。桑鶴さんは交通量や乗客数の調査を県に依頼したものの、結局この案は立ち消えとなりました。
桑鶴勉県議
【なぜ反対?気になるその理由】
なぜ桑鶴さんの案は反対されたのか。私たちは2社に改めて話を聞きました。
当時、賛成したのは南国交通です。担当者は、当時の詳細な記録が残っていないとしながらも、現在同じような申し入れがあれば、反対する理由はないと話しました。
一方、反対したのは鹿児島交通でした。
担当者は「古すぎる事案なので、社内に知っている人がいなかった。資料も探したが、見つからなかった」と回答。
また、営業補償についても「分からない」という回答でした。
【そこでいいの?県内のバス停】
なぜバス停を動かすことが難しいのか。そもそも適切な場所にあるのだろうか…。私たちがもやもやとした思いを抱えている中で、別の場所で気になる事故が起きました。先月、鹿児島市大竜町2丁目のT字路でバスと軽自動車が接触したのです。
気になったのは、交差点に入る前のバスの動きです。交差点の直前で、バス停に止まるため、いったん左折レーンに入ったあと、右折レーンに戻っていたのです。
まわりの車からすると、左折すると思ったバスが急に右折レーンへ入ってくるように見えてしまいます。バス停を置く南国交通と鹿児島市交通局に聞いてみると、回答は「路線ができた昭和30年当時からあそこにバス停はあった。そこである理由はない」というものでした。
【お寄せください!バスについての疑問】
取材を進める中で、ますます深まってきたバスやバス停についての疑問。
NHK鹿児島放送局では、県内各地のバスについての疑問を徹底的に調べます。
ぜひ、みなさんの身近な「なぜ?」を教えて下さい。
近くに住む人