追跡!マイバッグ万引き

2020年11月12日

レジ袋の有料化で最近目にする機会が増えたマイバッグ。プラスチックゴミを減らすための重要な取り組みとして注目されていますが、その一方でことし8月には、鹿児島県内で初めてマイバッグを使った万引きが発覚しました。マイバッグの利用が広がる中、被害は増えているのでしょうか。(調査報道班 記者 庭本小季)

あなたの疑問募集します!

【マイバッグ万引き 被害の実態は】

まず取材したのは、事件についての情報をまとめている鹿児島県警察本部です。ところが回答は「マイバッグを使ったかどうかは分類していない」というものでした。次に県内のスーパーマーケット各社に話を聞きました。こちらでも「把握していない」という答えしか聞くことができませんでした。

どうすれば被害の実態を把握できるのか。東京で取材先を探し、国内のおよそ1200社が加盟する全国スーパーマーケット協会に話を聞くことにしました。長瀬直人さんは、スーパーの経営などに詳しい主任研究員です。

取材の趣旨を説明すると、加盟しているスーパーに対して、マイバッグを使った万引きに関するアンケートを初めて行ってくれることになりました。

(長瀬直人さん)
「はっきりとした数字とか検挙の数がなかなかない中で、見えないものが見えるきっかけになればいいなと」


【全国初のアンケート】

その結果です。スーパー300社にアンケート用紙を送り85社から回答がありました。

「マイバッグの普及で万引きが増えたと感じるか」という質問に対しては、およそ30%が増えたと感じると回答。「わからない」と回答したところを除くと、状況を把握しているスーパーの半数以上が増えたと感じていることが分かりました。
あなたの疑問募集します!
(長瀬直人さん)
「彼らが認識できるもので3割以上増えているということは、もしかしたら実態はもっと増えているのかもしれないなという印象ですね」

【取り組みを強化する店も】

増加するマイバッグ万引きに対し、取り組みを強化しているところがあります。横浜市のスーパーで店長を務める大和田雅史さんは、複数の対策を立てているといいます。

レジ袋の有料化を受けて掲示し始めたポスター。マイバッグが万引きに悪用されないよう使い方を案内しています。

私服の警備員が見回る回数は去年の同じ時期に比べて1点5倍に。店内の隅々を映せるよう、防犯カメラも大幅に増やしました。

さらに、買い物客の動きを確認しやすくするため、会計の前と後で買い物かごを変えてもらうことにしています。


【対策には限界が】

こうした対策は、どれだけ効果を発揮しているのか。私服の警備員が万引きをした客を捕まえた際の報告書を見せてもらいました。

買い物客は、かごではなくマイバッグに商品を入れていました。

警備員は秘かに後を追いながら、レジへ向かうか見極めます。買い物客は精算しないまま店の外へ。

その瞬間、呼び止めてぎりぎりのタイミングで商品を持ち去られずに済みました。
ただ、さまざまな対策を尽くしても万引きの件数は減らず、限界があるといいます。

(大和田雅史さん)
「対策を行っているんですけども、それだけでは万引きは無くならないと思っています。ひとつでもとられたらそれを取り返すために5個10個売らないと取り返せないというかたちなので、われわれとしては死活問題です」


【いまの対策でいいのか・・・】
アンケートでは、▽どう対策したら良いかわからない、▽対策する余裕がない、▽怪しい人は把握していても実際に捕まえられていない、といった半ばあきらめの声すら見られました。また、捕まえても対応に人手や時間がとられるという理由から、警察に通報しない店舗もあるようでした。

さらに、スーパーの中には、はたしていまの対策で良いのかためらい始めているところもあります。

(紀ノ國屋創業者 増井徳太郎さん)
「お客さんのことをじろじろ見ると、お客さんからクレームが入るんですよね。私どもは対お客様ですから、魚売り場に来たご老人を万引きするんじゃないかという目で見て良いものかどうか。小売業は常に悩みを抱えてもんもんとしているわけですよ。スーパーマーケット、小売業業界だけでは解決できる問題ではないところまで行っているのではないかと思います」


【万引きを軽視しないで】
そうはいっても、何らかの対策は必要です。万引きは、1件あたりの被害額でいうと必ずしも多くないケースもありますが、犯罪を研究している専門家は、軽視してはならないと警鐘を鳴らしています。

(立正大学 小宮信夫教授)
「法務省がやった調査によると、重大な事犯、つまり人を死に至らしめるような殺人であったり傷害致死であったり、そういったことを犯した少年を調べていくと実に2人に1人が万引きをした経験があるということなんですね。決して万引きを軽視してはならないということがそこから読み取れるわけです。やはりなんと言っても万引きを起こさせないようなお店作り、環境作り、ひいては地域作りが必要なんですね」

投稿フォームはコチラ