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豚熱ワクチン接種開始|NHK鹿児島

豚熱の“イロハ”から今後の見通しまで 徹底解説!
  • 2023年10月05日

豚熱の感染を予防するため、9月27日から県内で始まった豚熱のワクチン接種。対象となるのは、522の農場で飼育されているおよそ86万頭。ブタの飼育数が全国で最も多い鹿児島では、警戒感が広がっています。一方で、「そもそも豚熱って何?」「ワクチンって効果があるの?」などなど、さまざまな疑問を感じている人も多いのではないでしょうか。豚熱の“イロハ”からワクチンの効果、今後の見通しまで、わかりやすく解説します! (鹿児島放送局 金子晃久)

①豚熱とは

豚熱は、豚熱ウイルスによって引き起こされる伝染病で、②おもに野生のイノシシを媒介して感染が広がるといわれています。感染力が強く致死率が高いのが特徴で、④感染がわかった場合、飼育しているすべてのブタを殺処分しなければならないため、畜産業への経済的な打撃は計り知れません。

過去どれくらい発生しているか見てみると、5年前の平成30年9月、岐阜県の養豚場で26年ぶりとなる豚熱の発生が確認されました。その後、国内各地で感染が確認され、直近では去年7月、栃木県の養豚場でも発生が確認され、およそ5万6000頭の殺処分が行われました。その後、この養豚場を運営する会社は資金繰りに困窮し、倒産に追い込まれる事態となっています。

②人への影響は

農林水産省によりますと、①豚熱は人に感染することはありません。また、②感染したブタの肉が市場に出回ることはなく③仮に感染したブタの肉を食べても、人体に影響はないとされています。このため、スーパーマーケットや精肉店などで販売されている豚肉は、安心して購入することができます。

③ワクチン接種の体制は

ワクチン接種の対象となるブタは、肉用のブタと繁殖用のブタの2種類に分けられます。どちらのブタも、生後1~2か月後に1回目の接種を行いますが、肉用のブタは生後6か月程度で出荷されるため、回数は1回です。しかし、繁殖用のブタはおよそ3年ほど飼育されるため、初回接種後も半年から1年の間隔をあけ、最大4回まで追加接種を行う必要があります。
鹿児島県はブタの飼育頭数が全国で最も多く、県内522の農場で飼育されているブタなどおよそ86万頭が対象ですが、接種ができる県の家畜防疫員は70人ほどしかいないため、県だけでは全頭接種を行うことができません。そこで県は、民間の獣医師のほか、養豚場で働くおよそ2500人に接種への協力を求めていて、9月22日時点で、目標となる1000人を上回るおよそ1100人の打ち手を確保したとしています。
このほか、9月25日時点で、県内にはおよそ20万頭分のワクチンが供給されていて、今後10日おきに20万頭分のワクチンが届く見込みです。

④専門家は

動物衛生学を専門に扱う、鹿児島大学共同獣医学部の小澤真准教授に、さらに詳しく聞きました。

小澤准教授

(Q1.豚熱ワクチンの効果を教えてください)
畜産動物に使用するワクチンのなかでも、飛び抜けて効果が高いといわれているのが豚熱ワクチンです。豚熱に関していうと、とりあえずワクチンを打てば、その個体が発症するリスクはほとんどないと判断できます。

小澤准教授

(Q2.豚熱の感染拡大を防ぐにはどうすればよいですか)
群れで飼っているブタのような動物の場合には、(多くの個体が免疫を持つことで大きな流行を防ぐ)集団免疫の確保が非常に重要で、接種率を8割まで高められると、感染症の流行が抑えられることが科学的に証明されています。したがって、全体にくまなく接種していくことが重要です。

小澤准教授

(Q3.今後の見通しを教えてください)
新しく生まれた子豚は、まだワクチンを打たれていないので、どのタイミングで打つのか考える必要があります。あるタイミングで全頭に1回ワクチンを打ったら、それでおしまいというわけではありません。そういった意味で、ワクチンの供給体制の確保というのは、これから1つの課題なってくると思います。

取材後記

豚熱の発生が県内で最後に確認されたのは、いまから40年近く前の昭和60年のこと。県内ではあわせて850頭のブタが、死んだり処分されたりしました。その後、県内では長い間豚熱の発生がなかったことから、小澤准教授は「県内のブタはウイルスに対する抗体をほとんど持っていないので、非常に感染しやすい状況にある」として警鐘を鳴らしています。これからも安全で質の高い豚肉を生産していくためにも、豚熱の発生を許さないよう対策を徹底することが重要です。

 

  • 金子晃久

    NHK鹿児島 記者

    金子晃久

    初任地の奈良局を経て 鹿児島局に赴任  現在は県政キャップ 県産の豚肉をこよなく愛し 週末は料理の腕を振るっています

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