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ローカルフレンズ南大隅編② 農家の日常

  • 2023年08月31日

ローカルフレンズ鹿児島・南大隅町編。放送ではご紹介できなかった、魅力的な農家の皆さんをご紹介します!
                         鹿児島放送局ディレクター 赤﨑英記

滞在3日目、「ウェルカムパーティーをまだしていませんでしたね!」と梅木さんご夫婦からお誘い頂き、町の居酒屋さんにお邪魔しました。

フローカルフレンズの梅木涼子さんと夫の竜二さん

 店内のお客さんはみんなお知り合い。調子があがってくると、女将さんもテーブルへ。やがてあちこちで席替えが・・・。そんなお店です。 町の皆さんのローカルネタを聞きながらの、おいしいお料理とお酒。しっかり英気を養いました!

ディープな南大隅の夜

  逆境に立ち向かうバラ農家

バラ農家の3代目 富田昭仁さん

 さて、この日お邪魔したのは、ウェルカムパーティーでもご一緒させて頂いた富田昭仁(とみた・あきひと)さんのバラ農園です。 

富田さんの農園では1900坪の農地で育てた、年間40万本ほどのバラを出荷しています。 代々林業を営んでいましたが、木材の需要減少という厳しい時代を迎え、祖父の代からバラの栽培を始めたそうです。そのバラ農園も、ここ数年我慢の時期が続いています。歓送迎会などの減少で、需要が激減した新型コロナウイルス感染拡大の影響。そして、肥料や動力光熱費など経費の高騰です。

昭仁さん

2020年の2月頃からコロナの影響が出始めました。卒業式など、一年で一番花が売れる時期にまったく売れない。今需要は戻ってきたが今度はコストが高すぎる。値上げができるといいけど、我々は市場に出荷して競りにかかるのでそれができないんです。

農家から直接お客さんへ花束を送っている

 そんな中でも昭仁さんはSNSを活用し、個人への販売を広げるなどして乗り切ってきました。 

昭仁さん

従業員の誕生日にバラの花束を贈っている会社の社長さんがいらっしゃって、多いときはその方だけで月10件ほどの注文を頂いていたり。本当にありがたいです。あとプロポーズ用の花束をっていう方も年に2~3件くらいはいらっしゃいますよ。

昭仁さんの妻 睦美さん

 さて、午前中の仕事が一段落した10時。町内にチャイムが響き渡ります。すると、なにやら漂う香ばしい香りが。昭仁さんの妻・睦美さんが、近所から詰んできたというヨモギが入った手作りのお餅を焼いていました。

睦美さん

10時と15時に防災無線のチャイムが鳴ると、どの農家もお茶休憩が始まるんです。その時間になったらおなかがすくリズムができているんですよね(笑)
今日は取材も来るんで、張り切って久しぶりに餅を焼きました。

お茶飲み話をしながらほっと一息。町の人たちにとっては当たり前ともいえる風景ですが、私にはとても魅力的な時間に感じました。 

 

昭仁さん

年齢を重ねてきて、たわいもない毎日に幸せを感じる様になってきた気がします。
バラ農家だけでなく別の作物とか新しい物に魅力を感じて模索したこともあったけど、やっぱり自分にはバラがあってる。この仕事を最後まで頑張ろうと思っています。

 Uターンから20年 農業は楽しい! 

ピーマン農家の小濵洋一さん

続いてはピーマン農家の2代目、小濵洋一(こはま・よういち)さん。元々は転勤族のサラリーマンとして、関東・関西・北海道と各地を飛び回っていましたが、いつか地元に帰って父のピーマン農家を継ぎたいと考えていたんだそう。しかし・・・

洋一さん

農業をすることには両親が大反対していました。田舎の農業はとにかく厳しいからと。それでもずっと帰りたいと思っていて、母親が病気で倒れた時、半ば強引に帰ってくることにしたんです。

 39歳で地元に戻り、まもなく20年。「農業は厳しい」という両親の言葉が身にしみることもありましたが、新たな農法を積極的に取り入れるなどして道を切り開いてきました。 

洋一さん

たとえば、農薬ではなく天敵を使う農法。害虫であるアブラムシの体内に寄生して内側から食い尽くしてくれる虫がいたり、卵や幼虫を食べてくれる虫がいたり、農薬も減らせるし、放ってしまえば農薬のように何回もまかなくていいので手間も減るんです。

その他にも、ハウスのあちこちにぶら下がっている、ひも状のこれ。いったい何だと思いますか?ピーマンの害虫・蛾のフェロモンがしみこませてあり、メスを探そうとするオスを混乱させるという対策なんだそう。こうした技術で、作業の負担が減り、より安全な野菜が育つ。日々当たり前に食卓に並ぶ野菜たちですが、農家さん達のたゆまぬ努力に支えられているんですね。

洋一さん

私が言えるのは農業は本当に楽しい。子どもが2人いるんですけど、「農業は楽しいぞ~」ってひそかにアピールしてます。今はまだそんな気なさそうですけど(笑)

 最盛期!ジャガイモ農家のもう一つの顔 

じゃがいも農家の池之迫博(いけのさこ・ひろし)さん

農家を巡る中で、「今の時期、一番のハードワークになるでしょう」と聞いて訪れたのは、池之迫博(いけのさこ・ひろし)さんのじゃがいも畑です。 じゃがいもは南大隅町で盛んに栽培されている作物の一つ。全国に先駆け、3月から4月に新じゃがが出荷されます。

機械で掘り起こされ
サイズごとに選別し
集荷場所へ運ぶ

運送会社のトラックがやってくる集荷場所まで、20kgほどのじゃがいもを運ぶ作業は確かに体力勝負。翌日はしっかりと両腕が筋肉痛になっていました。

 体をつかって働いた後、青空の下で頂く新じゃが入りのカレーライス。体に染み渡ります。

その日の夜・・・。

 

博さん

「南の果ての廃校からお届けする、すみっこキャスト~!」

軽快なかけ声で始まったのは、インターネットで配信するラジオ番組(ポッドキャスト)の収録。今年、博さんたちが始めた取り組みです。スタジオは、廃校になった地域の小学校です。

博さん

我々農家って、忙しいときも耳だけは空いてるんですよね。だからそんな時間を使って楽しんだり学んだりしてもらえないかなって。ゲストを招いてローカルな話をしてもらっています。

この日は、2ヶ月間南大隅町に滞在中だという、東京農業大学の留学生をゲストに向かえました。なぜ南大隅町を選んだのか?実際滞在してみて面白かったことは?町を楽しむミッションを考えよう。などなど町外からの目線で、町の魅力を掘り下げます。

博さん

やってみると、難しいことは多いですけどね。これが正解みたいな物はないですし、町のみなさんに楽しんでもらって、結果的に町が元気になるきっかけになればいいなと思っています。

南大隅町の農家の皆さんは、普段から農大生など町の外の人々を、実習や職業体験などで積極的に受け入れています。そんなみなさんの力を生かした、町の暮らしをより楽しくする博さんの取り組み。今後の展開が楽しみです!

 

  • 赤﨑英記

    鹿児島放送局ディレクター

    赤﨑英記

    生まれも育ちも鹿児島県。2児の父。
    地元民放で送受信技術を担当後、 ディレクターとして、鹿児島の魅力を県内外に発信する職人やアーティストなどを取材。 2021年入局。

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