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鹿児島県鹿屋市で広がる届出避難所コロナ禍の避難所不足解消へ

  • 2022年06月14日

新型コロナ対策で「三密」の防止が求められる中、各地の自治体は避難所不足に頭を悩ませています。こうした中、「届出避難所」という制度の活用を進めているのが鹿屋市です。届出避難所は、自主防災組織が公民館などを避難所として活用するもので、行政が指定避難所を開設するのを待たずに、住民からの要望があれば避難所として利用できます。

届出避難所の運用の実態や課題はどうなっているのか。鹿屋市の現場で探りました。

(鹿児島局記者 柳沢直己)

住民にメリットが

鹿屋市の百引地区にある「諏訪多目的活性化センター」は、去年6月、届出避難所に登録されました。きっかけは身近な場所への避難を求める住民の意見でした。集落から指定避難所までの距離はおよそ1キロ。その途中の場所で崖崩れが起きたことがあるからです。

百引地区 諏訪自治会長 岩上進一さん
「山の頂上のほうから道路のほうに崩れた経緯があります。奥のほうに何軒か住民の方がいて、その方が、崖崩れが起きる前から、水の音がするといったことがありました。それなら公民館を貸しましょうと」

もともと自主的に避難する人もいたという、この場所。市の建物ではないものの、基準を満たしているとして届出避難所に認められました。岩上さんは、住民が運営を担うことから、地域の防災意識の高まりにもつながっていると感じています。

百引地区 諏訪自治会長 岩上進一さん
「車がない方でも、車が調子が悪くても歩いて来れる距離にありますので、ここの住民にとっては利用しやすい施設になってきていると思います。また、地域の方が防災のことについて考えるきっかけになったのではないかと考えています」

増える届出避難所 背景は

鹿屋市では、指定避難所56か所に対し、制度開始から1年間に登録された届出避難所は23か所。想定の2倍以上の申請があったといいます。そのため鹿屋市では、制度の柔軟な運用に踏み切りました。

当初は、ハザードマップ上での安全性や耐震性といった基準を定め、すべての条件をクリアした建物を認可していました。ただ、条件を満たす場所ばかりではなかったことから、災害の種類ごとに基準を分けて適用することにしました。例えば、耐震基準が満たされていない建物でも、ハザードマップで浸水や土砂災害の危険性がない場所なら、認めることにしたのです。

鹿屋市で届出避難所を担当 大原龍太さん
「最初はすべて条件がそろって認可という形にしていましたが、どうしてもここに届出避難所が欲しいんだという要望もありました。災害の種類によって対応可能という部分を、枠を広げて認可しているところがあります」

見えてきた課題

一方、課題も見えてきました。鹿屋市の祓川町では、土砂災害警戒区域が広がった影響で、指定避難所がおよそ4キロ離れた場所へ。そのため、地域の公民館を届出避難所として申請しました。その後、去年8月の大雨で避難者を受け入れた際に議論となったのが、施設のバリアフリーの問題でした。

祓川町 町内会長 楠原修さん
「果たしてこれが、快適に過ごせたんだろうかと。私たちも災害慣れしておらず、避難慣れ、避難することも今までなかったもんだから」

指定避難所の大半は市の施設で、よく使用される場所ではバリアフリー化が進んでいます。ところが、この建物は入口などにスロープがなく、車椅子での避難が円滑に行えないおそれがあったのです。

さらに、届出避難所には市の職員が常駐しないため、避難が長期化すると、運営する住民の負担が大きくなるおそれがあることも分かりました。

祓川町 町内会長 楠原修さん
「集落センターになりますと、町内のほうで運営していかなければなりません。やはりそれぞれが、それぞれの生活がありますので、そのなかでこの避難所だけに集中的に来るということが各家族的には無理だと思うんですよね」

住民からのニーズが増す一方、改善点も出てきた届出避難所。鹿屋市は対策を進めて、大雨の季節に備えたいとしています。

鹿屋市で届出避難所を担当 大原龍太さん
「これから、いろんな運営するに当たっての課題というのが見えてくると思いますので、その都度、臨機応変に柔軟に対応して、今後長く届出避難所制度が続いていけるように対応してまいりたいと思っています」

取材後記

祓川町の自治会では、市と費用を分け合って入り口をスロープにする工事を行ったということで、今後はトイレに手すりをつけるなど、さらにバリアフリー化を進めていきたいとしています。また鹿屋市では、避難生活が長期化した際の届出避難所運営の支援方法についても、検討しているということです。

日置市も制度を導入するなど、広がりを見せている届出避難所。円滑な避難を実現するため、住民と行政との間で、より連携を深めてほしいです。

  • 柳沢直己

    NHK鹿児島放送局 記者

    柳沢直己

    2021年入局。事件・事故担当。宮城県出身。鹿児島に来て、日本酒派から焼酎派に。

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