IPCEM レポート

セッション1

「教育コンテンツ、その過去・現在・未来〜日本賞50年に見る〜
50年前の1965年に、世界で唯一の教育番組の国際コンクールとして始まった「日本賞」。
過去の受賞作品を見ながら、教育コンテンツの歴史を振り返る。
冒頭、司会のニケル氏が技術革新にともなう教育コンテンツ、日本賞の変遷について概観した。「教育コンテンツの役割は、物事を分かりやすく伝えることである。技術が進歩するにつれ、伝える手法は豊かになる。日本賞も、2002年にはウェブ、そして2008年には教育ゲームなどを含む音と映像を用いたすべての教育コンテンツへと審査対象を広げてきた。技術革新が続くことにより、教育コンテンツに求められる役割も広がってきたのである」。
オークランド氏は自身のキャリアで経験した教育メディアの進化について「教育にお いて必要なのは、いつでもどこでも学ぶことができる双方向性と、適切な情報量を提供すること」と語り、それに対して小平氏から「ただ技術ありきの教育ではなく、重要なのは、その背後にある何を学びたいのか、教えたいのかということだ」という意見が出された。
ラヤヴァーラ氏は、第1回日本賞を受賞した「自然のカレンダー〜むかし むかし〜」 を例として語った。「この作品にはナレーションも音楽もなく、自然の中で生きる動物、そこで遊ぶ子どもの姿が描かれている。これを教育番組といえるのか?と議論されたというが、この受賞の決定こそ、“新しい方法を用いた教育を考える”という日本賞の理念の確立だった。失敗を恐れず、新しい方法を積極的に試す柔軟性や情熱が、制作者には求められる」 。
小平氏は、教育コンテンツで扱う内容の多様化について語った。「日本賞でも初期は 学校の授業を補完するような言語や科学の番組が多かったが、次第に、薬物や差別、高齢化などさまざまな社会問題を扱った番組、人間性を考えさせる番組が多く見られるようになってきた。大人だけでなく子ども向けの番組にもその傾向が見られる」。
最後にニケル氏が「日本賞にはこれまでおよそ9、000近い作品が参加し、今後も斬 新な作品が現れるだろう。ネットの発展でコミュニケーションが容易になった今、世界中の制作者が協力して教育コンテンツの可能性を広げていこう」と締めくくった。

パネリスト:

 

司会・進行:

ジョージ・オークランド

元BBCラーニング学習開発局長
(イギリス)

トゥーラ・ラヤヴァーラ

ディレクター / 脚本家 /
プロデューサー
フィンランド放送協会 (YLE)

小平 さち子

NHK放送文化研究所 
上級研究員

マーカス・ニケル

イタリア放送協会 RAIエデュケーショナル
国際事業コンサルタント
(イタリア)

セッション2

「異文化へのリテラシーのために」
民族・宗教・生活・習慣などの異文化による衝突が世界の各地で起こっている。
異文化とは直感的に理解・共感しづらいものではあるが、争いを止めるには相互理解が必要だ。
こうした事態に対して、教育コンテンツの制作者はどう向き合うかを考える。
セッションは、根本氏の「我々にとって異文化理解というものは必要不可欠。しかし、第二次大戦終結、そして国連創設70年という2015年にも、シャルリ・エブド事件やシリア危機などの悲しむべき事態が続いた。今日は、こうした紛争や価値観の衝突について話し合いたい」という言葉からスタートし、パネリストがそれぞれの立場から語った。
ハシミ氏「パキスタンでもテロ事件や宗教間の衝突が起きている。それを抑えるためには対話が必要。さまざまな意見を伝えることで対話を促すべきだ。また、事件が起きたときには、誰が起こしたかだけでなく、それが起きた背景を伝えるべきだ」。
ロビラ氏「コロンビアでは半世紀にわたる政府と反政府武装集団の内戦が終結し、和平協定が結ばれようとしている。しかし子どもたちは長らく戦争が日常という環境で育ち、戦うことに違和感を持っていない。制作者に求められることは、真実を分かりやすく伝え、平和への道筋を示すことだ。実際にコロンビアでは、少年兵や子どもの誘拐といったセンシティブな問題を番組で取り上げている」。
ヒョンワニー氏「南アフリカはアパルトヘイト政権下の人種差別という苦い歴史を持つ。1994年にアパルトヘイトは撤廃されたが、今も差別の問題は残っている。近年の移民排斥運動の激化には歴史的背景がある。しかし、子どもたちは自らの歴史や文化には関心を持たない。過去の過ちを繰り返さないためにも歴史を語り継ぐ必要がある」。
ベルトラン氏「今年1月『シャルリ・エブド』の編集部がイスラム過激派に襲われた。この事件をきっかけに、人々は白か黒かの二者択一、極論に走るようになった。しかし、視点を変えるためにはその中間、グレーゾーンが必要なのだ。メディアはさまざまな影響を与える。人々をつなぐこともあれば、分断してしまうこともある。だからこそ、責任ある形でメディアを使い、社会の改善につなげなければならない」。

パネリスト:

     

司会・進行:

モニーザ・ハシミ

公共メディア連盟会長
(パキスタン)

カルロス・エドアルド・
スミス・ロビラ

イエロ・アニメーション
ディレクター
(コロンビア)

ジャクリン・
ヒョンワニー

南アフリカ放送協会
SABC 2編成主幹
(南アフリカ)

フランソワ・ベルトラン

CEO, プロデューサー
カメラ・ルシーダプロダクション

根本 かおる

国連広報センター所長

セッション3

「デジタルコンテンツの明日 〜クリエイティブ・フロンティアカテゴリーにみる最新トレンド〜
今年の「日本賞」のクリエイティブ・フロンティアカテゴリーの一次審査通過作品を通して、未来のデジタル学習について考える。

司会のミルナー氏が「急速に進化するデジタルメディアが教育にどのような意味を持つのか、みんなで答えを探っていきたい」と投げかけ、パネリストそれぞれの視点によるプレゼンテーションでセッションが始まった。
ミルトン・チェン氏「デジタル技術が学習に与えた影響をまとめると3点になる。
(1)以前より圧倒的に豊富な知識を提供できるようになった。
(2)頭と心そして手、子ども自身の体すべてを使って学ばせることが可能になった。
(3)子どもたちが主人公となり、主体的に学ぶことができるようになった。我々は“あなたが学びの中心に”という意味で、“EdYOUcation”という言葉を使用している」。
田川欣哉氏「教育番組『ミミクリーズ』ではデザイナーとして参加した。教育の専門家と共に開発した関数を視覚化するアプリや日本政府のビッグデータ可視化システムなどを通して、デザイン・視覚化によって理解を深めることを考えている。新しい作品づくりに挑戦するためには、心をオープンにし、定義されていないことにも対応しなければならない」。
その後、会場ではクリエイティブ・フロンティア カテゴリーの一次審査通過作品が紹介され、それに続く質疑応答では「日本では、FabLabやFabCafeといった新しいプラットフォームが出現しても、教師がその存在を知らない」「デジタルコンテンツの多様化を活かすためには、教師にその使い方を教える“先生のための先生”が必要」「情報があふれる現代社会では、検索した結果をどう受け止め、どう考えられるかが重要」等、活発な意見交換が行われた。
最後にチェン氏と田川氏は、「教育は子どもの好奇心をかき立てるものでなければならない。子どもが抱く疑問をどのようなことでも受け止める姿勢が大切」、「若者にたくさんの選択肢を与えることが大人の使命。自分の目標は、定義されていないことに対応できる人材を育てることである」と、それぞれの思いを述べた。


パネリスト:

 

司会・進行:

 

ミルトン・チェン

ジョージ・ルーカス教育財団
上級研究員・特別顧問
(アメリカ)

田川 欣哉

takram design engineering 代表/
デザインエンジニア

ジョン・ミルナー

eラーニングコンサルタント
元BBCラーニング
エグゼクティブプロデューサー
(イギリス)
 

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