歴代グランプリ作品(1965〜2016)
  • 1965年
    第1回
    自然のカレンダー〜むかし むかし〜

    39’40”フィンランド放送協会

    野生の草木や鳥獣の生態を、そこに遊ぶ子どもたちと四季の移ろいとともに描き、美しい楽園が産業化の波によって次第に変化してゆくさまを、詩情豊かな画面でつづった作品。子どもたちに、自然保護の重要さを無言のうちに語りかける。全編40分を通し1行のナレーションもインタビューもない。小鳥の声、風の音、水の流れ、子どもたちの笑い声など、自然音のみで構成されている。  
    審査委員から、「教育番組というよりもドキュメンタリーではないのか」との疑問が出て議論が交わされた。そして、「環境について描くことは、本質的に教育的要素を帯びること。したがって教育性は十分にある。広義の教育番組として受け入れるべきである」という結論に達した。「日本賞」における幅広い教育番組観は、ここに始まったようだ。

  • 1966年
    第2回
    幼児の世界〜反抗〜

    30’00”日本放送協会

    2〜3歳ごろから5〜6歳ごろにかけて、子どもたちが集団の中で社会性を身につけていく過程を毎週1回、3年にわたるシリーズとして取り上げている。大人は子どもたちをどのように理解し、指導していけばよいのかを考えるシリーズの中の1番組。子どもの行動をカメラで追い、「反抗」の精神発達上の意味と、この年齢期の子どもの導き方を具体例を示して解説している。  
    「カメラを意識させずに、子どもたちの行動をとらえている。フィルム・ドキュメンタリーとしても秀逸。教育番組としても芸術性と教育性を兼備した、第一級の作品」という評価を受けた。

  • 1967年
    第3回
    テレビ婦人学級〜婦人と職業〜

    27’00”チリ・カトリック大学テレビ

    チリにおける女性の職場進出の現状と、その問題点をフィルム・ドキュメンタリーとドラマで描いた番組。第1部(フィルム)では、様々な女性の職場と、保育園、幼稚園などの育児施設が紹介され、第2部では、女性の職場進出を妨げる家庭の無理解や封建的な因習をめぐる問題が、夫婦と子どものドラマで描かれている。  
    人口増加、住宅難などの開発途上国特有の問題を、テレビの集団視聴グループ「テレ・クラブ」という場で国民に考えさせ、克服への道を示唆する番組で、その社会的意義が高く評価された。

  • 1968年
    第4回
    あるシーン〜最終バス〜

    28’45”イギリス放送協会

    ドラマとインタビューを通して、現代の都市が抱える問題について視聴者に考えさせる番組。 最終バスに乗り込んできた4人の不良少年が、乗客をからかい、無賃乗車をとがめた車掌を袋だたきにして逃げていく。その間運転手も乗客も誰一人として車掌を助けようとはしなかった。ドラマはここで終わり、場面はスタジオへ。聞き手が運転手と乗客に、「なぜ、車掌を助けなかったのか」と聞き、次に被害者の車掌と加害者の不良少年に心境を尋ねる。最後に視聴者に向かって「この事件でとがめられるべきは誰か?」、「事件を防ぐにはどうしたらよいか?」、「BBCがこうした番組を作ることは良いことか?」の三つの質問を投げかける。
    テーマの身近さと、不良少年を演じた俳優の迫真の演技によって視聴者に大きな衝撃を与えた。

  • 1969年
    第5回
    新しい数学〜対応〜

    15’00”日本放送協会

    当時、数学教育の革新という面で注目されていた集合論の概念「1対1対応」について教える番組。単に原理の説明に終わることなく、習得した概念を通して問題を解くところまで、テレビの特性を生かしながら展開している。荷物の預かり証と荷物の荷札との対応などから、集合と集合との間の1対1対応を教え、これをボートの漕ぎ手とオールの数、卵と卵カップなどの例により、わかりやすく応用し、さらに、「自然数全体」と「偶数全体」との大小関係についても考えさせている。  
    「15分という短時間で結論を教え込むのではなく、テレビ番組の中に学習の場を新しく作り出し、生徒に体験を積ませようとしている。綿密なプランを細心の注意を払って実現した番組制作」などの感想が聞かれた。

  • 1970年
    第6回
    昆虫の生態〜アリの世界〜

    28’35”スイス放送協会

    アリの生態をカラーフィルムで克明に描き、さまざまな興味深い事実を紹介した番組。スローモーションやクローズアップなどの多彩な映画的技法で、アリと共存できる生物や、アリの敵となる生物などを映し出す。強敵であるアリジゴクが、時にはアリの返り討ちにあうことや、アリの大敵が実は種類の異なるアリである、といった興味深い事実も伝えられている。  
    バック音楽も効果音も使わずに、これだけの迫力が出せるのは見事な企画と構成のおかげというのが、この番組を見た人が一様に抱いた感想である。アリの真剣な動きとたゆまぬ努力、凄惨な死闘などをカメラはリアルに追求し、描く。

  • 1971年
    第7回
    セサミ・ストリート

    58'38" チルドレンズ・テレビジョン・ワークショップ アメリカ

    ナレーション、スキット、対話、歌、踊り、短いアニメなど、およそ「テレビ的」と考えられるあらゆる手法を使って、幼児に国語、算数、芸術などの領域はもとより、初歩的な科学や公民などを包括的に教えることをめざす番組。現在では世界で最も有名な教育番組シリーズである。
    第6回「日本賞」では、これを教育番組として認めることはできないという審査委員たちもいて、大賞受賞には至らなかった。第7回においても、この作品は最も異彩を放ち、最も話題となった作品であった。「この番組は、昔ながらの教室教育の伝統から完全に解放されている。小さな子どもたちが、就学前に、これほど多くのことを、これほど楽しく勉強できたことが今までにあっただろうか。」、エチオピアの審査委員は、このような熱烈な賛辞を贈った。

  • 1972年
    第8回
    理科教室中学校1年生〜生命−卵の21日間〜

    20’00” 日本放送協会

    卵からヒナがかえることは誰でも知っている。しかし、「卵のどの部分が、どんな段階を経てヒナになるのか」となると、答えは複雑である。この番組は、特別な撮影技術によって、卵からヒナがかえるまでの21日間をとらえている。特殊な容器に入れられた受精卵が殻をやぶり、ヒナがかえるまでの進化を追い、その過程の中で、人間もヒナも成長の初期の段階ではきわめて似通った形をとるという、生命の神秘的な現象も伝えている。
    「技術的にすぐれ、明らかに有能な放送人によって制作・演出され、テレビ媒体の可能性のすべてを駆使してその教育目的を実現している番組がある。その一例がこの番組だ。」とR.ルフラン審査委員長(仏)は評している。審査委員会の最終総会で満場一致でグランプリに推された最初の番組であった。

  • 1973年
    第9回
    ヘルス・マガジン〜応急処置−12のテスト−〜

    57’44” 第2ドイツ・テレビ協会

    「ヘルス・マガジン」シリーズの1本で、応急処置の方法についてクイズ形式で教える。スタジオに年齢、性別の異なる6人の解答者を招き、フィルムを見せたり専門家が詳しく説明し、正しい応急処置を指導するというものである。
    火事、やけど、失神など、日常生活で必要な応急手当法を取り上げ、構成は科学的、具体的で、かつ丹念に制作され、誰にもためになる安全教育番組である。「教室の児童生徒向けでなく、一般視聴者を対象にして、彼らが学習し、その内容を実地に生かすように仕向けるためには、番組に興味や関心をもたせるための工夫が必要だ。自分もこれを見て、知らなかったことを知り、もっと学びたいと感じた。」――これはある審査委員の感想である。

  • 1975年
    第10回
    ドラマ〜ハイル・シーザー〜

    28’51” イギリス放送協会

    シェークスピアの「シーザー」を、現代風に翻案してドラマ化したもの。ある朝、シーザーは妻から、「あなたが殺される夢を見たので、今日の会議には行かないで」と懇願され、風邪のふりをして欠席する。アントニーは、考え直すようシーザーを説得する。シーザーは会議に出席し、そして殺される。アントニーは逮捕される。ブルータスは、シーザーが殺害されたというニュースを放送し、ブルータスにも、国民に語りかけるための等しい時間を提供する。このことは、現代のイギリス議会のことを我々に想起させる。
    「現代の政治や倫理にも関係する大変興味深いドラマだ。」と、審査委員長のW.シュラム博士が感想を述べた。

  • 1977年
    第11回
    通信高校講座・生物T〜変態とホルモン〜

    30’00” 日本放送協会

    通信制高等学校の生徒が学習するために視聴する「生物T」の中の一つで、ホルモンの働きを取り上げている。昆虫の成長・変態がホルモンの作用によるものであることを、特殊撮影のフィルムを駆使して具体的に理解させようとしている。  
    実験材料として、日本で古来、生糸を産出する昆虫として親しまれているカイコを使い、実験をしながら、変態のなぞを解明していく。  
    「まさに、教育放送における奇跡とも言うべき作品。視聴者は、番組の美しい糸に巻き込まれてしまうが、その布地が科学的手法で織られていることを、視聴者に絶えず意識させる番組である」という、ラリー・T・ショーター審査委員長(カナダ)の文学的な指摘もあった。

  • 1979年
    第12回
    水ってなあに?

    26’02” ユーゴスラビア国営放送

    「水とは何だろうか?」という質問に、教師と児童が対話を交わしながら実験し、答えを探していく理科番組。蒸発したり氷になったりする水のさまざまな性質を調べる。ジュースと水を飲み比べて、水の味を確かめる。川、湖、海について話し、魚が棲むこと、船が浮かんでいることを話す。
    ドライヤーで髪を乾かしながら、水分がどこへ消えたのかを考える。ビーカーに水を入れて熱し、100℃で沸騰すること、水の量が減ること、蒸発することを確認する。水の循環について話し、水の歌を歌う。
    教師と子どもたちの交流が楽しい雰囲気を醸し出していて、大人の視聴者も楽しめる番組であると高く評価された。

  • 1981年
    第13回
    人間は何をつくってきたか〜宇宙船への招待〜

    59’00” 日本放送協会

    アメリカとソ連を中心とする宇宙開発競争の歴史をたどりながら、将来、宇宙船を交通手段として利用する可能性にまで触れた科学ドキュメンタリー。アメリカとソ連の宇宙飛行士の明快な解説とともに、番組構成の客観性とすぐれた演出・編集技術が高く評価された。   
    また、「米ソの両飛行士が手をつなぎ、国旗を交換したシーンに感動した。この番組は、人類相互間の理解の増進を願う、NHKからのメッセージである。」という審査委員、ベアトリス・ダミコ・デ・レボッシオ女史のコメントもあった。

  • 1983年
    第14回
    数の世界〜円周の長さ〜

    16’50” 日本放送協会

    子どもたちが、運動場で手をつないで円を作る。では、その円の2倍の直径の円を作るには、何人が必要になるだろうか。この番組では、直径と円周との関係をさまざまなデモンストレーションとアニメーション画面で解明し、円周率3.14を導き出している。  
    「典型的な直接教授型のものである点が審査委員に好感をもたれた。論理的にしっかりと構築されている点も高い評価に値する」という言葉が、審査委員会全体の評価である。

  • 1985年
    第15回
    動物の生理〜飛ぶ鳥のメカニズム〜

    24’00” 英国国立オープン・ユニバーシティ/イギリス放送協会

    英国国立オープンユニバーシティの講座シリーズの1本で、鳥の飛行のメカニズムの最新の研究成果を、高速度撮影やアニメーションを使って紹介する番組。後半では独創的な実験によって、その飛翔の原理を実地に解明する。
    鳥には、卵からヒナにかえって最初に目にした動くものを親だと考え、そのあとを追うインプリンティング(刷り込み)と呼ばれる習性がある。この番組の中で、研究者はこの習性を利用して鳥たちとの特別な関係を成立させる。そして、心拍数や呼吸、体温の変化を調べる、独創的な小さな送信器を鳥の体内に取り付け、車のあとを追わせて、その飛ぶ様子をカメラで記録した。
    審査では、こうした様々な工夫に加えて、美しい映像と分かりやすい解説によって、視聴 者の自然への関心を高める点が高く評価された。

  • 1987年
    第16回
    メカニカルユニバース〜ローレンツ変換の話〜

    28’15” カリフォルニア工科大学/ 南カリフォルニア・コンソーシアム アメリカ

    アメリカの大学生向け物理教育番組「メカニカルユニバース」52本シリーズの1本で、アインシュタインの相対性理論の核である「ローレンツ変換」という概念を教える番組。  
    ローレンツ変換は、「一つの出来事を、異なる速度で動いている2人が観測した時に、その出来事の時間、距離ともに異なって認識されることを示す理論」に用いられた。番組はこの難解な理論を、コンピュータグラフィックスやアニメーション・模型などを巧く使った観察と解説により分かりやすく説明している。また視聴者(学生)が、自分の理解度に合わせて番組を利用できる工夫もされている。

  • 1989年
    第17回
    驚異の小宇宙 人体〜免疫〜

    45’30” 日本放送協会

    一人の女子高校生が免疫異常にかかり、姉からの骨髄移植によって免疫力を回復してゆく様子を、人体内部で起こる諸現象を明らかにしながら見せてゆく番組。人間の体は肉眼では見えない無数の細菌に囲まれているが、健康を保つことができる。それは白血球やリンパ液などによって、外敵の侵入を防ぐ機能があるからだ。体内の微細な防護者たちは骨髄で作られていて、骨髄に異常が生じると免疫機能が低下して病気にかかりやすくなる。実写とCGで、骨髄から作り出されたミクロの戦士たちが、人体を外敵から守るために戦う姿は感動的で、科学的な解説と、少女が回復してゆくという人間的興味を誘う物語がごく自然に融合している。

  • 1991年
    第18回
    3-2-1コンタクト 環境スペシャル〜ゴミの真実〜

    30’00” チルドレンズ・テレビジョン・ワークショップ アメリカ

    13歳の少女ステファニーの案内で、捨てられたゴミがどうなっていくかを調べてゆく。埋められたゴミの変化を確かめたり、ゴミ処理場を見学したり、ゴミを減らす実験をしたり、といった科学的な実証と同時に、魔法使いも登場する楽しい演出も見られる。子どもたちにゴミ問題の本質について学ばせ、ゴミを減らしていくためには一人一人の行動が大切であることを理解させようとする、ユニークな環境番組。
    「セサミ・ストリート」を生んだプロダクションの、事前の綿密な調査研究による裏付けと、親しみやすい構成、テンポのよい演出が見事という声が聞かれた。

  • 1992年
    第19回
    ステップ&ジャンプ 運動と速さ〜慣性〜

    15’00” 日本放送協会

    中学・高校向け理科の、物理・科学20本シリーズの中の1本。万有引力の発見者であるニュートンを案内役として、慣性の法則を斬新な発想によるさまざまな実験を通して、わかりやすく解説している。計算された構成の中に、ヒューマンな要素も加味されている。
    中等教育部会長のキース・シッパーズ氏(オランダ)は、「テレビのもつ技術的な可能性を上手に活用して制作した、科学番組のすばらしい見本である」、「子どもたちの身のまわりにあるものの中から、さまざまな例を提示している」、「補助教材としてのテキストも整っている質の高い番組」と、審査部会の評価を伝えている。

  • 1993年
    第20回
    芸術の生まれるとき〜ロバート・ギル・デ・モンテズ〜

    28’00” ラーニング・デザイン/ WNET アメリカ

    造形美術などの芸術の世界を紹介する、小学生向け10本シリーズ番組の中の1本。画家ロバート・ギル・デ・モンテズが、白いキャンバスに色を着ける瞬間から、絵が完成するまでを追い、一人の芸術家の創作への思いを伝える。そして、コンピューターによる色の実験や、コメディー・タッチのデモンストレーションを織りまぜながら、奥深い、バラエティー豊かな芸術の世界へ子どもたちをいざなう。  
    初等教育部会長ニック・コリスージョージ(オーストラリア)、は、「教育的に優れているだけでなく、テレビ技術を非常にうまく使った画期的な番組である」と部会の評価を総括した。また、「ユーモアに富んでいる上に、コンピューター・グラフィックスも効果的で子どもたちを飽きさせない。自分も絵を描いてみたいという気持ちにさせる」といった感想も聞かれた。

  • 1994年
    第21回
    こどもの療育相談 シリーズ療育の記録〜姉と兄に見守られて〜

    30’00”日本放送協会

    障害児の療育のあり方を考える、家庭向け番組シリーズの1本。視聴者から寄せられた育児記録をもとに構成された番組の中のひとつで、ダウン症で発達が遅れている5歳の前田航ちゃんと彼を支える家族を描いた感動的なドキュメンタリーである。障害児を持ったことで、いったんは絶望に陥った母親のかおるさん。しかし、10歳の姉と8歳の兄が、航ちゃんをかわいい弟として自然に受け入れたことにより、いかに自分自身が勇気づけられたかを率直に語っている。
    緻密な取材をもとに家族の中に入り込み、カメラをまったく意識させない見事な撮影を重ねている。日常的な家族の姿の中に、人間の普遍的な可能性、そして人間の成長とは何かをあらためて思い起こさせる秀作であり、「この放送を見たすべての人が航ちゃんを理解し、愛するに違いない」と、高く評価された。

  • 1995年
    第22回
    もうひとつの学校

    55’00”フランス2

    不登校、教師の暴行などで、問題を起こした子どもたちを集めたパリ郊外の職業訓練校が舞台。決められたカリキュラムによる教育だけでは、子どもたちの問題は解決しない。
    「人間的なふれ合い教育」を信念とする校長のもと、教師たちは子どもたちに立ち向かう。子どもたちの自主性をひきだし、自信を与えるにはどうしたらいいのか、ためらい、緊張しながら教師たちの試行錯誤が続、やがて教師たちの熱意が子どもたちの心を開いていく。こうした場面に視聴者は心を動かされる。
    「番組のどのシーンをとっても、本来の教育とは何かを問いかける豊かなメッセージが込められている。世界中の教師に、ぜひ見てほしい」と、高い評価を得た。

  • 1996年
    第23回
    健全な心〜いじめをやめよう〜

    14’16”カールトン・テレビ イギリス

    道徳教育に関するシリーズの1本で、いじめをテーマにしたドラマ。 シェリーは3人の女の子にいじめられている。いじめは激しくなる一方で、お金を要求されるまでになる。弟のアンソニーは気づいているが、幼いため何もできない。近所に住む同級生のジョーも気づくが、教師に告げるべきかどうか悩む。 アンソニーはついに、姉がいじめられていることを母親に話す。母親が担任の教師に話し、校長が学級全体に言い聞かせる。
    小学校でのいじめを現実感豊かに描き、番組で安易な解決策を敢えて示さず、子ども、教師、そして親といった様々な立場からの視点を示す。「今や教育現場で広く、どこにでも見られるテーマをタイミングよく取り上げ、様々な視点から考察している」と、高く評価された。

  • 1997年
    第24回
    シリーズ・テレタビーズ〜あめあめふれふれ〜

    24’00”イギリス放送協会

    幼児期の世界を大切にしながら、ビデオやCGを使って独特な雰囲気を作っているデイリーシリーズ。テレタビーランドという空想の国で楽しく暮らすテレタビーたち。ある日、湧いてきた雲を不思議がっていると、おなかのスクリーンに、現実の世界の幼稚園児たちが雨の中で遊んだり、水たまりで飛び跳ねる様子が映し出される。テレタビーたちはそれを見て自分たちも雨の中で遊ぶ。
    現実と空想それぞれの世界の楽しい場面を通じて、身近な世界を理解させることを目的とする。「幼児への注意深い観察と理解にもとづいている。」「意識的な繰り返しや、擬声語や擬態語の多用で、ゆったりした時間の流れを作り、子どもたちが十分理解できる楽しい番組となっている」と高く評価された。

  • 1998年
    第25回
    文学入門〜満月の恐怖 ホラーって何だろう〜

    24’00”フィンランド放送協会

    文学や映画における空想科学やホラーという分野を通じて、芸術や言語への理解を深めることを目的とした番組。4回シリーズの第1回。番組の主役は生徒たち。彼らは、読んだ本や見た映画の感想や意見を積極的に述べる。
    ホラーの古典として「ドラキュラ」が紹介される一方で、若者たちによる作品「少女とおおかみ」、「会社員の死」のドラマ化も紹介される。
    カリキュラムに従いつつも、ホラー小説で読書を勧める斬新な手法が、審査委員の興味と関心を呼んだ。「創造性や豊かな想像力が、優れた教育番組の制作にいかに大切であるかを示す番組である。」と高く評価された。

  • 1999年
    第26回
    ETVカルチャースペシャル
    「最後の晩餐ニューヨークを行く 〜僕たちが挑むレオナルドの謎〜」

    52’00”日本放送協会

    番組は、このほどイタリアの専門家によって修復され、NHKのハイビジョン技術で再現されたレオナルド・ダビンチの名作「最後の晩餐」を素材に、青少年向けに新しい美術鑑賞の方法を伝える番組。  
    一人の美術史家がニューヨークの高校生の前に「最後の晩餐」の複製を見せ、「反逆者ユダはどれか?」とたずねる。美術史家は、絵が語りかけるものは何かを問いかけ、高校生たちは、作者がその1枚の絵に込めたメッセージについて活発に意見を述べ、討論を展開する。
    双方向の教育番組の可能性を示した点が賞賛された。番組展開の手法が斬新で、美術を鑑賞する新しいアプローチを示唆し、一般家庭でも、学校での教材としても有効に活用でき、文化の違いに関わらず受け入れられる意味深い番組である。

  • 2000年
    第27回
    レンズのむこうの真実

    52’08”カナダ国立映像委員会

    バンクーバーの警察官がチームで制作した、若者向けの麻薬対策映画。1年以上に渡って撮影した警察官たちと麻薬常習者たちのインタビューで構成するドキュメンタリー。狙いの一つは、麻薬常習者の本当の姿を伝えること。彼らは犯罪者ではなく、単に常習癖があるために地獄のような生活に陥った普通の人々で、自分の生活を変えられず途方に暮れているのだ。
    番組は、我々におなじみの麻薬の問題を、独自の新しい視点で取り上げている。スタイリシュで理路整然としていて、常習者や警察、そして彼ら同士の関係をより深く理解する旅へと視聴者をいざなう。番組を見終わる頃には、彼らを知り、共感を覚えるようになる。若者たちや大人たちにとって素晴らしい教材である。

  • 2001年
    第28回
    音のない世界で

    55’41”パブリック・ポリシー・プロダクションズ / アロンソン・フィルム・アソシエイツ

    聴覚に障害のある子どもに人工内耳移植を受けさせるか、あるいは、あるがままの姿を尊重すべきか。番組は、難しい選択を迫られる二組の夫婦を追ったドキュメンタリーである。 一方の夫婦は手話の文化に誇りを持っているが、5歳の長女は、音のある世界に興味を持ち始めている。もう一方の夫婦は、子どもの可能性をできるだけ広げるため、息子に人工内耳移植を受けさせる。
    聴覚障害者の世界を描く洞察力にあふれた番組である。二人の聴覚障害児の人工内耳移植手術に焦点をあてながら、そこから発展して、家族、アイデンティティー、障害、子どもの権利、マイノリティーである聾者の文化について視聴者の思考を刺激し、感情移入させてゆく力を持つ。

  • 2002年
    第29回
    時について考える

    54’00”カルーナフィルム

    「時」をどう過ごすべきか?会社の重役、タクシー運転手、庭で遊ぶ少女、1000分の1秒を争う競泳選手、ユダヤ教のラビ、農夫など、それぞれが「時」についての考えを語る。「一日に経験する量が増えたから早く年をとるようになった。」、「電子レンジ調理で稼いだ時間はどこに行ったのか?」。国家にとっての「時」はどうか。イスラエルはまだ建国50年。その歴史は頻発するテロ、いつとも知れぬ死への恐怖など、悲惨に満ちている。他の国とは異なる「時」の意味がイスラエルにはある。番組は、様々な「時」への感覚を紹介し、未来への夢を持つことの重要性を強く訴える。
    「まれにみる斬新な番組。人々の深層心理に迫る映像や音声の使い方が秀逸」と、審査委員に高く評価された。

  • 2003年
    第30回
    こども・輝けいのち 第3集 涙と笑いのハッピークラス
    〜4年1組 命の授業〜

    48’30”日本放送協会

    「学校に来るのはハッピーになるためだ。みんなでハッピーになろう」、4年1組、金森学級の約束事である。この番組は、4月から翌年3月までの一年間、子どもたちが成長してゆく様子を描く。 友達に宛てた手紙の朗読を通じて、クラスメートの意外な一面に気づく。他の子のいじめを見て自分自身の行動を省みる。いかだ遊びを先生に禁じられたクラスメートを必死にかばう。突然父を亡くした友達を慰めるために一緒に考え、行動する。
    審査委員は、「教育の本質とその機会をうまくとらえた簡潔で、良い構成のストーリー。このドキュメンタリーは説教的にならず、数多くの教育問題を、ただ一言「相手の気持ちを考えよう」というメッセージに収れんさせている」と評価した。

  • 2004年
    第31回
    体験リポート 飢餓との闘い

    44’33”インサイトニューステレビジョン/CNN イギリス アメリカ

    一人の記者が、アフリカの小さな村で慢性的な飢餓を体験する。はじめは記者をおそれて近づこうとしなかった村人たちが次第に近づき、食べ物を分け与えるようになる。この取材で記者の体重は18キロ減った。
    作品は「リアリティーショー」の形式をとり、記者の個性と強い意思伝達力によって、従来の飢餓についてのドキュメンタリーの型を打ち破り、われわれの予想を超えた。また取材する側のモラルについても高い認識が見られ、「潤沢な食料を持つ取材班が飢餓に苦しむ村を取材する」という矛盾した状況に誠実に向かい合っている。飢餓の問題に新しい視点を提供し、視聴者の行動を促すとともに、その心に長く留まる作品と評された。

  • 2005年
    第32回
    NHKスペシャル “大地の子”を育てて〜中日友好楼の日々〜

    52’00”日本放送協会

    中国、長春市の中日友好楼では、戦争の末期に中国で捨てられた日本人孤児の命を救い、育ててきた養父母たちが暮らしている。彼らは敵国だった日本の子どもたちを愛情込めて育ててきた。
    戦後、成長した子どもたちは、いずれ養父母を日本に招き寄せる決意をして永住帰国する。しかし彼らは日本に帰国後、言葉や仕事の厚い壁に直面する。時代の波に翻弄される養父母と子どもたち。
    戦争と平和をめぐって出会いと別離を強いられた特異な二つの世代の姿は、今も紛争で引き裂かれた人生を生きる世界各地の多くの人々を彷彿とさせる。物語は静かに、しかし力強く語られる。カメラは控え目で、公正で、誠実だ。

  • 2006年
    第33回
    ブレインダメーぢ★#□II....

    50’15”アパートメント11プロダクション カナダ

    交通事故で脳に深刻な障害を負ったプロデューサー、ポール・ナドラー氏の奇跡的な回復の模様を10年にわたって追ったドキュメンタリー。家庭用ビデオで記録されたリハビリの過程、彼を支えつづけた両親、友人、専門家たちのインタビュー、とりわけナドラー氏本人の、詩を朗読するかのようなインタビューとそれに呼応した独創的な映像が際立つ。
    「斬新」「創造的」「心を揺さぶる」「力強い」「強烈」、すべてがこの作品を評した審査委員たちの言葉だ。作品は生を100パーセント肯定する。友人や家族を大切にし、勇気をもって人生の試練に挑むという簡潔だが絶対のルールを、見る者は必ずや思い起こすだろう。

  • 2007年
    第34回
    特別授業 差別を知る〜カナダ ある小学校の試み〜

    42’00”カナダ放送協会

    自分が実際に「差別」を受けたらどう感じるか?体験授業で小学校3年生の子どもたちにそれを理解させる試みが紹介される。授業ではまず「背の低い児童は背の高い児童よりも賢く創造的である」、「瞳の青い児童は茶色の児童よりも優れている」などという根拠のない説を、あたかも事実のように子どもたちに伝える。子どもたちは差別する側と、される側の体験を繰り返すことで、差別の理由のなさ、悲惨さを学んでいく。
    「差別を子どもたちに実体験させた教師の勇気をまず称えたい。制作者は分かりやすく、しかし細やかな配慮をもって番組を仕上げている。この体験授業が子どもたちの心に深く刻みこまれたということが、視聴者に十分に伝わったと思う」、一人の審査委員はこのように語った。

  • 2008年
    第35回
    課外授業 ようこそ先輩 みんな生きていればいい

    28’30”日本放送協会

    様々な分野で活躍する著名人が母校で特別授業をする毎週放送の番組。この回は、盲目で耳の聞こえない障害を持ちながら、日本で初めて大学に合格した福島智さんが主人公。
    盲目で耳の聞こえない福島先生に初めて会ったときの子どもたちの不安気な表情をカメラがとらえる。しかし少しずつ障害を理解でき、先生と意思疎通できるようになる。番組はこうした関わりをつぶさに見つめることで、「意思疎通」という人間の生活で非常に大切なものを扱い、人は他者とどのように関わり、理解し合うのかを効果的に示す。若者や大人の考え方や行動に永く変化をもたらしうる作品である。

  • 2009年
    第36回
    きみのニュースはなーに?

    22’00”TTアニメーション イギリス

    子どもの視点からみた子どものためのニュースショー。対象年齢の4歳から6歳という年代は、子どもが家族だけの環境から、広く大きい世界に目を向け始める時期にあたる。
    この作品は小さな世界から他の人との関わりを持つ広い世界への移行を、子どもたちに無理なく理解させ受け入れさせることを目指している。視聴者の子どもたちから寄せられたニュースを題材に、アニメーションのリポーターがスタジオのキャスターと連動し、実際のニュース番組さながら、ライブ感あふれる現場レポートを届ける。

  • 2010年
    第37回
    素数の魔力に囚われた人々〜リーマン予想・天才たちの150年の闘い〜

    89’00”日本放送協会

    ドイツの数学者、ベルンハルト・リーマンが150年前に提起し、現在も数学史上最大の難問と怖れられているのが、一見無秩序な数列にしか見えない素数がどのような規則で現れるかを解く鍵とされる「リーマン予想」だ。素数の規則が明らかにされれば、宇宙を司るすべての物理法則がおのずと明らかになるかもしれないという。一方、それが私たちの社会に大きな影響を及ぼす危険があることはあまり知られていない。クレジットカード番号や口座番号の暗号化は、「素数の規則が明らかにならない事」を前提に構築されてきたからだ。素数の謎に挑んだ天才たちの奇想天外なドラマをたどりながら、CGを駆使し難解な理論を視聴者に正確にかつ分かりやすく説明している。

  • 2011年
    第38回
    アメリカを振り返る 人種隔離バスへの抵抗

    115’00”WGBH教育財団 アメリカ

    1960年初頭、アメリカ南部では乗合バスの座席や公共機関、レストランなど様々な場所が、人種隔離法により白人用と非白人用とに分けられていた。連邦最高裁判所はこの法律に違憲判決を下すが、南部では人種差別の状況が続いた。1961年5月、人種差別撤廃を求める黒人と白人の若者12名が連れ立って長距離バスで南部を目指す。彼らは「フリーダムライダーズ」と呼ばれた。しかし行く先々で白人優位主義者による襲撃や、州法違反のかどでの地元警察による逮捕など、様々な障害が立ちはだかる。番組は、アメリカの公民権運動を推進させることになった若者たちの行動を、新しい視点で描き出す。

  • 2012年
    第39回
    皺(しわ)

    89’07”ペッロ・ヴェルデ・フィルムズ/クロモソーマ/エレファント・イン・ザ・ブラック・ボックス スペイン

    パコ・ロカのコミックを原作に、養護老人ホームで出会った2人の老人エミリオとミゲルの友情を描いた作品。新しくホームに入ったエミリオはアルツハイマー病の初期。ホームの最上階にある「失われた理想」と呼ばれる部屋に収容されるのを恐れていたが、仲間たちに助けられる。はじめはぎこちなかった人間関係も変わっていき、人生の終わりにも新たな出発があることをエミリオは知る。
    現代の複雑な社会問題である老人介護というテーマを、楽しくかつ丁寧に、ファンタジーや鋭いユーモアを 交えながら見つめる。

  • 2013年
    第40回
    カルチャーショック

    26’00”ゼニット映像制作/RAIエデュケーショナル/2+1/欧州連合(EU)メディアプログラム支援作品 イタリア

    国際交流と異文化理解について、クロスメディアを駆使した物語展開で、デジタル世代の若者たちにアピールすることをねらった教育的エンターテインメント番組。毎回、若者たちが選んだカップルが、ある使命を帯びて自分たちの祖国を旅するという設定。
    今回は、移動民族ロマの血をひく大道芸人のラシ−ドと、イタリア人の大学生アニェーゼの2人が、自分のルーツとアイデンティティを求めてバルカン半島へ10日間の旅をする。

  • 2014年
    第41回
    “自然と遊ぼう!”大作戦

    79'05”グリーン・ライオンズ イギリスドキュメンタリー財団(BRITDOC) イギリス

    主人公は5歳の娘と3歳の息子の父親。自分が幼い頃は戸外で遊ぶことが何よりの楽しみだったのに、子どもたちは家でテレビやタブレットの画面にくぎづけの毎日。こうした傾向は、イギリス社会全体で子どもの肥満や心の病の増加といった問題を生んでいる。そこで父親は立ち上がった。「自然」というブランドを子どもたちに浸透させる広告マンに自らを任命。マーケティングの専門家や心理学者、ナチュラリストなどの助けを借りながら、ポスターを作り、ホームページを立ち上げ、集会での演説を繰り返し、ついにプロジェクト“自然と遊ぼう!”をスタートさせる。一人の父親の思いが、社会を動かし始めた。

  • 2015年
    第42回
    キミの心の“ブラック・ピーター”

    56'35”ファミリーフィルム&テレビ オランダ

    黒塗りのメイク、少しおどけた姿でサンタクロースとともに歩くブラック・ピーター。オランダのクリスマスには欠かせない伝統的なキャラクターが、社会を二分する議論となっている。植民地時代から続く人種差別の名残なのか。それとも伝統行事の中の悪意のない慣習なのか。この番組は、オランダ人の心の中に潜んでいる植民地時代からの差別意識をあぶり出そうという試みだ。近くにいる人たちに容赦なくインタビューのマイクを向け、公園では自転車の鍵を壊す黒人に対する人々の振る舞いを撮影する。そして、オランダの人たち全てに問いかける。クリスマスの行列の中にいるブラック・ピーター。それはあなたの心の中にある隠された差別意識ではないのですか?

  • 2016年
    第43回
    消えたブロガー“アミナ”

    84'59”エスペラモス / カナダ国立映画制作庁 カナダ

    アミナは、シリア・ダマスカスに住むレズビアンの反体制活動家。
    彼女は“ゲイガール・イン・ダマスカス”というブログを開設し、世界中から多くのフォロワーを集める。ダマスカスでの活動の姿と、エロティックなプライベートのささやきが人気を集めたのだ。カナダに住むサンドラも、ネットの上でアミナに恋をしたひとりだった。
    しかし、突然、アミナは姿を消す。アミナの行方をめぐり、物語は急展開してゆく。秘密警察に連れ去られたのか?もはや、彼女は生きてはいないのか?さまざまな憶測が飛び交う中、大手メディアや数々の諜報機関が動き始めたその時、あまりにも意外な事実が明らかになる。
    ネットに潜むリスクと、それに翻弄される現代社会を鮮やかに描く。

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