(マーカス・ニケル)
私たち審査委員は、ある特別な家族に寄り添って語られるストーリーに深い感銘を受けました。北フランスの衰退した地域に暮らす二人の魅力的な青年と気丈な母親。貧困と失業がまん延するなかで、彼らはいじめ、不透明な未来、行き届かない支援にも向き合わざるをえません。一つの家族に焦点を当てつつも、この作品は地域全体とその地における危機的状況を描き、現代社会が直面している深い亀裂を際立たせています。良質な語り口と映像表現、叙事詩のようなスタイル、慎重に選ばれた主人公たち、「炭鉱の子どもたち」は個人の物語にちからを与え、視聴者は登場人物と彼らのストーリーに引き込まれます。しかしそれと同時に彼らの世界では何が問題なのか、私たちは深く掘り下げ思考をめぐらせるようになります。そして彼らの世界は、私たちの世界、私たちのまわりにもある世界なのです。
「日本賞」での受賞は、人々の物語が普遍であることを意味しています。そのことは私たちにとって大きな励みです。