第44回日本賞 優秀作品

一般向けカテゴリー最優秀賞<東京都知事賞>
君たちに私の憎しみは渡さない
機関名 エクレクティック・プレス
CNC
フランステレビジョン
ジャバ・フィルム
国/地域名 フランス
メディア 映画
(キム・ロー)
一般向けカテゴリーでは、極めて優れた9本のドキュメンタリーが最終選考に残り、2日間にわたる審査が行われました。伝えられなければならない、そして対処しなければならない重大な社会問題を扱った作品ばかりでした。審査委員自身も、学習、教育、メディア、コンテンツに情熱をもって取り組んでいる人たちばかりです。そのため、各作品の視聴後には、刺激的で、目から鱗が落ちるような、熱い議論が繰り広げられました。審査委員たちの文化の違いが審査の妨げになることはなく、全員が自分たちのやるべきこと、最もふさわしい受賞作品を選ばなければならないことをしっかりと認識していました。
「君たちに私の憎しみは渡さない」は、世界に共通する極めて深刻で重要なテーマである「テロリズム」に、果敢に取り組んだ作品です。被害者本人による雄弁な語りが、このドキュメンタリーに力強さを与え、又、観る者は親近感を覚えます。作品内容と構成が良く調和しており、音楽と映像が効果的に組み込まれています。又、議論を生み出す力があり、教育的にも優れています。なにより、他のメディアでは扱いきれないメッセージを訴える、力強い作品です。世界中の人々を結びつける、見事に仕上げられたドキュメンタリー。まさに、現実を生きる人々が語る、真実の物語です。
(ガエル・フィシェ)
一般向けカテゴリーの最優秀賞に選ばれたことはたいへんな名誉であり、意義深いことだと受け止めています。このドキュメンタリーを作った狙いの一つは、まさに、理解がすべての根源であることを示し、アントワアヌ・レリスの個人的な探求の旅を通して、私たちそれぞれの運命はどこかでつながっているのだと再確認することだったからです。パリのバタクラン劇場襲撃事件の後、アントワヌが妻の命を奪った者に宛てた率直なメッセージを公開すると、世界中に共感の波が拡がりました。なぜなら、アントワアヌ・レリスに突きつけられた課題は、人類の普遍的な問題だったからです。自分の身を守るために怯えて過ごしたり、自由を犠牲にしたりしないためにはどうすればよいのか。立ち上がり、共に歩み続けるためにはどうすればよいのか。世界を意味のある場所にするため、人々に会って光と解決策を見出だすにはどこに行けばいいのか。道徳的な鋭敏さと情動的な誠実さをもって、アントワンの旅は、私たちは一つの信念によって結ばれていることを教えてくれます。それは、人生を存分に生き、無知と戦うこと。なぜならそれが私たちの使命だからです。この賞はまさに、人間の物語を伝える映像制作者の私たちにとっては、この方向に進み続ける勇気を与えてくれるものです。

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