クロスメディアフォーラム

ドラマの鬼才マレシュカ監督と、30年にわたり「日本賞」に参加してきた小平氏による講演が行われました。
Session 1アンジェイ・マレシュカと語る夕べ
アンジェイ・マレシュカ
(Andrzej Maleszka) 

映画監督(ポーランド)

映画・テレビ番組の監督であり、多数の脚本、児童本も手掛けるアンジェイ・マレシュカ監督の「DEVOURERS OF BOOKS」(魔法の木シリーズ) の上映に続き、番組作りの手法や心得、思念についてのトークセッションが行われた。
 「なぜ、子ども向けの作品を手掛けるのですか?」という問いに監督は、子どもは我々大人よりずっと賢く、すばらしい観客であると語った。「大人には、僅かな記憶としてしか残らないものが、子どもたちの心には永遠に残る」。「大人は過去に縛られ、目新しい事に好奇心を示さなくなるが、子どもたちは毎日新しいことを待っている」。
制作の心得については「子ども向けの物語の制作には、現実とファンタジーをうまく組み合わせることが大切だ。子どもはこの2つの世界に住んでいる。期待されている展開と驚きをバランスよく組み合わせる事が大切だ」と述べた。さらに、出演者の子どもたちに出演の前に行うワークショップを実演し、キャスティングのノウハウを披露した。
 最後に、「子どもたちに心を開き、彼らからのフィードバックを恐れず、反応を引き出すこと。そして子どもたちの賢さを決して忘れてはいけない。20年間続けてきて、子どもたちと作品作りする事はもっとも大切な心惹かれる芸術的な作業だと思っている」と監督の制作に対する思念を語り、1時間半のトークショーは盛大な拍手ともに幕を閉じた。
Session 2日本賞グランプリに見る、世界の教育コンテンツの潮流
小平さち子

NNHK放送文化研究所 主任研究員(日本)

 30年にわたり日本賞に参加してきた、NHK放送文化研究所の小平さち子主任研究員が、各時代の日本賞の受賞作品の紹介を交えながら、世界の教育メディアの変化について講演を行った。
 「日本賞」がスタートした当時の教育番組は、読み書きや算数、理科などの基礎教育を扱うものが中心であった。その中で環境問題を先駆的に扱った「自然のカレンダー〜むかしむかし〜」(1965年)が初代グランプリに選ばれた。そのことで「日本賞」が教育を広義に解釈していると認識された。80年代にはアニメーションやコンピューターグラフィックスなどの新しい技術を効果的に活用した教育番組が次々登場し、続く90年代、初等・中等教育向けの番組は、従来の教科型番組を新しい切り口で見せていくようになる一方で、環境やいじめなどの社会問題を扱う番組が増加した。2000年以降、番組が扱うテーマはさらに多様化し、問題に対して、今までにない斬新なアプローチが採用されるようになった。また、ウェブサイトが学習者や教師に一方的に情報を提供するだけではなく、内容をさらに進展させるための双方向的な役割を与えられ、効果的に使われるようになってきた。同様の変化は、幼児向け教育番組にも現れており、2009年の受賞作品「きみのニュースはなーに?」では、双方向性を中心に、新しいメディアの登場によるコンテンツの変容を見ることができる。
[講演後、歴代グランプリ受賞5作品を上映]
「動物の生理〜飛ぶ鳥のメカニズム〜」(1985年)
「ステップ&ジャンプ 運動と速さ〜慣性〜」(1992年)
「芸術の生まれるとき〜ロバート・ギル・デ・モンテズ〜」(1993年)
「健全な心〜いじめをやめよう〜」(1996年)
「音のない世界で」(2001年)

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