meet the experts ミート・ジ・エキスパーツ

日本賞は昨年からデジタル放送の開始やインターネットの普及など、世界の教育現場の急激なメディアの変化に対応するために、メディアの多様化に伴いテレビ番組だけでなく、ウェブサイト、ゲームなど、教育的な意図をもって制作されたオーディオビジュアル作品全般にその対象を広げました。ミート・ジ・エキスパーツはまさにその変遷期に生まれたイベントで、さまざまなコンテンツの教育的効果をプロの目から考察する、という目的のものです。

 

教育コンテンツにおけるエンターテインメントの役割とは?

[子ども向け]
ブリティッシュスクールの子どもたちに、今年のエントリー作品を観てもらい感想を聞きました。

番組の制作方法に意見する子、「情報量が多いのがいい」とコメントをする子、アート系のウェブサイトを楽しそうに利用する子など、個性豊かな子どもたちの意見がスクリーンに映し出されました。

子どもを惹きつけるコンテンツとは?

三者三様の個性的なディスカッションで、大変盛り上がり、4階正面には多 くの人が集まりました。

【ゲスト】

季里

ビジュアルプロデューサー、七音社取締役

【ゲスト】

よしだあつこ

放送作家(第36回「日本賞」予備審査委員)

【モデレーター】

廣岡 篤哉

NHK編成局ソフト開発センター、チーフプロデューサー

季里:音楽と映像で子どもたちのために何ができるかということが原点です。視覚的にはコントラストも意識しています。

廣岡:刷り込み効果の威力というのは幼児の場合特に感じます。

よしだ:意外性と飛躍、これが子ども向けのコンテンツで大切なことだと思っています。特に子どもの集中力は短いですから。

= 子ども向けドキュメンタリーの可能性について =

廣岡:エントリー作品の中にはドキュメンタリーも多いですが、僕自身、事実は多面的なものなので、伝えるのが難しいと思います。

よしだ:今は、昔と比べて子どもに集まる情報量が段違いに多い。インターネットで調べればすぐにわかることをすくって映像にして子どもに見たいと思わせるのは難しいですよね。今年のエントリー作品でも、その点を試行錯誤した作品がみられました。インターバルでロックやクイズを入れたり、見てもらうための工夫が印象に残りました。

= メディアがますますインタラクティブ(双方向)になっていることについて =

よしだ:私たちの時代は、メディアは受け取るものだったけれども、今は発信する能力が求められる時代。子どものほうが思ったより進んでいるので、制作者は子どもの対話に注意を払うことが大切。

季里:私個人は、ドキュメンタリーそのものにエンターテインメント性が必要なのかな、と疑問に思っています。それよりも、知らなかったことを知ること自体が面白いのだ、という気づきに導けるようなコンテンツ作りができたらいい。そのために、子どものメディアへの興味を取り込むのは効果的ですね。

シリアスゲームとは?教育現場でGAMEがもたらす力

ゲームは遊び方や使い方によってさまざまな用途に役立つ。シリアスゲームの定義とは何か?〜新しいメディアの可能性や活用法についての専門家たちによる討論会〜

[ゲーム]
ゲームは遊び方や使い方によってさまざまな用途に役立ちます。シリアスゲームと呼ばれる、教育的効果があり社会に役立つゲームの可能性について、国際的に活躍するクリエイター達が、シリアスゲームの可能性についてディスカッションを行いました。

【ゲスト】

佐藤 隆善

アートディレクター、バーチャル・ヒーローズ

【ゲスト】

水口 哲也

第36回「日本賞」予備審査委員
プロデューサー/CCO、キューエンタテインメント株式会社代表取締役

【モデレーター】

中谷 日出

NHK解説主幹

 この日のために来日したアメリカで活躍中のゲームクリエイター佐藤氏は、 自身が制作した救急隊員のトレーニングゲームやNASAの宇宙飛行士の作業 が体験できるゲームを紹介。「ゲームにはトレーニング(啓蒙的)なものとシミュレーション(体験型)の2つがある。どちらもエデュケーションとエンターテインメントのバランスが重要で、どちらかを上げすぎるとどちらかが下がってしまう」など、制作時の視点や苦労について語った。

 水口氏は、今年の日本賞の予備審査をした際に印象に残った2つの作品を紹介。「昨年度と比べても、シリアスゲームの分野は盛り上がってきていると感じる。作り方と売り方をふくめて今後ますます変化があるでしょう」とシリアスゲームの可能性について述べた。

 中谷氏がシリアスゲームの定義について尋ねると、「未踏の部分が多いので、定義しきれないが、既存のエンターテインメント以外のものはすべてシリアスゲームともいえる」などの意見が出されました。会場からは、「そうであるならば、シリアスゲームにとってかわるどんな名前で呼べばよいか?」などの質問が寄せられ、「双方向ドキュメンタリー」、「応用ゲーム」など会場内でいろいろな意見が飛び交いました。

 ゲームとテレビ番組の相乗効果はどのように図れると思いますか?という質問については、「2次元のものと3次元のものでクオリティを合わせるのが大変。スキャンニング技術(対象を1コマごと多角的に3次元で撮影して映像を作り上げる手法)が、今後のテレビとゲームの融合の鍵を握ると思う」(佐藤)「スキャンニングの技術を使うと、番組を見ている間に、好きなところで止めて視点を変えることができる。その技術でエンターテインメントの可能性がど こまでひろがるか、楽しみだ」(水口)などと話し合われました。

 教育とのゲームの連携について、「通常では体験できないものや費用がかかりすぎてしまう実験などは、ゲームを教材としたいという依頼が増えてきた。ただ安いからという理由でゲームをメディアとして選ぶのではなく、“ゲームのほうが面白く、教育的効果が高いから”という視点で選んでほしいと思う」 (佐藤)と述べました。

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