第30回「日本賞」<2003年>最優秀番組

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国際交流基金理事長賞
番組名 奴隷制度 第1回 売買の始まり
機関名 オランダ教育放送
国名 オランダ
番組内容
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 大掛かりな歴史ドラマ。高校生が奴隷制度の歴史を調べて学校で発表するという設定で始まる。彼の机の上には奴隷制度に関する本がうず高く積まれている。彼はプレゼンテーションでビデオ上映を始める。この第1回では、西アフリカで平和に暮らしていた人々が、捕らえられ、缶詰の鰯のように船にぎっしり詰め込まれ、大西洋を渡って運ばれるところまでを描いている。
 
審査講評
 この番組は、私たちの文化的なルーツを理解するうえで極めて重要な「奴隷制度」を、若者の視点から現代社会と関連づけて取り上げた大胆な企画である。今日の社会を理解するには、歴史を知り、その歴史が他の民族や文化との関係にどんな影響をおよぼし続けているかを知らなくてはならない。現在のドラマと歴史ドラマをうまく組み合わせることで、共感と理解を促す番組になっている。
 
制作者コメント
ウィレム・A・ファン・デル・スペックさん
学校放送プロジェクトマネージャー、「奴隷制度」シリーズ スクリプトライター
TELEAC/NOT, オランダ教育放送
 「奴隷制度」は奴隷の歴史を描いたドラマシリーズです。第1回では、奴隷たちがヨーロッパの商人によってアフリカの西海岸から連れてこられ、大西洋を横断し、アメリカ大陸に運ばれる様子を描いています。19世紀に奴隷制度が廃止になるまで、200年にもわたって続けられたことはあまり知られていませんでした。しかし、実はアフリカ人奴隷売買の5%はオランダによるものでした。奴隷制度は他人事ではなく、オランダ人自身の問題だったのです。
 私たちは、過去に触れられたことのない奴隷売買に関する事実を、この番組で明らかにしました。アフリカ人が奴隷として捕らえられ、船に詰め込まれて輸送され、プランテーションで生活する姿…。それを見た生徒や教師が、現在との違いを意識しながら、なぜそんなことが起こってしまったのかを自分自身に問いかけることを目的としています。
 オランダ政府はこの見解を認め、2002年7月にアムステルダム公園に奴隷記念碑を寄贈し、ベアトリス女王が除幕しました。現在、アムステルダムでは、博物館などで奴隷制度の研究がはじまっています。
 「日本賞」での受賞は、歴史的事実を明らかにした私たち自身を支えてくださったように感じています。

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