第30回「日本賞」<2003年>最優秀番組

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東京都知事賞(教育ジャーナルの部)
番組名 こども・輝けいのち 第3集
機関名 日本放送協会(NHK)
国名 日本
番組内容
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 「学校に来るのはハッピーになるためだ。みんなでハッピーになろう」。そう約束した4年1組金森学級では、毎日3人ずつが、クラスメートにあてて一番言いたい気持ちや毎日の出来事を書いた手紙を、みんなの前で読む。子どもたちは、もめごと、悲しいこと、大切な人を失ったことに対処する術などをみんなで一緒に探す。彼らは「仲間と生きる喜び」を全身で味わいながら、命を大切に思う気持ち、友達を思いやる心を自然な形で育てていく。
 
審査講評
 シンプルなストーリーで、教育の本質を真正面から捉えている。ある教師と彼の生徒たちを丁寧に描いたこの番組は、生徒たちを人生に立ち向かわせる立場の全ての教育者に道を示している。ある日本の学校のクラスで起こるドラマや感動のまさにその瞬間をとらえ、ひとりの先生が子どもたちの成長に目覚しい力を発揮できることを実証している。
 友だちと強い感動を共有した生徒たちが、そのことの価値を発見し、教室の中で起きた生と死の問題の意味を理解する時、視聴者もまた、同じ感動を味わうことができる。いじめ、話し方、校外活動など、起きること全てが、この「人生の学校」では教育の機会なのである。説教したり、高みに立ったりすることなく、このドキュメンタリーは、無数に存在する教育上の問題を、たった1つの「友だちを気遣うことを学ぼう」というメッセージに収れんさせている。
 
制作者コメント
嘉悦 登さん、ディレクター、日本放送協会(NHK)
 泣きながら肉親の死を語る。去りゆく友に歌を贈る。必死に仲間をかばう…たくさんの名場面があったと自分でも思います。たくさんの人に褒めても頂きました。それでも、番組を見た金森学級のひとりはこう言ったのです。「たしかに面白かった。けど、ちょっと軽かったな。俺らの1年はもっと重たいで」
 その言葉に、ディレクターとしては大変情けないことながら、私は同意せざるをえません。私自身でさえ「惜しいなあ」と思いながら編集でカットしたエピソードがたくさんあったのです。教室の主人公として1年間すごしたみんなの心には、もっともっとたくさんの思い出がつまっているに違いありません。教室という場所だけが持ちうる「豊かな時間」。それを身をもって体験できたことが、取材を通しての私の大きな収穫でした。
 だからこそ、〈学力低下〉〈教師の指導力不足〉〈いじめ〉〈不登校〉…いろんな問題があることは承知の上で、それでも子どもたちと1年を過ごしたひとりの大人として、私はあえて言いたいのです。学校が持つ底力は、まだまだ捨てたものではありません。

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