第29回「日本賞」<2002年>受賞番組

 
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外務大臣賞
番組名 とっておきの物語  飛行機
機関名 韓国教育放送 (EBS)
 
番組内容
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 寺に住む、孤児の男の子トギョンは、欲しくてたまらないおもちゃの飛行機を買うために、お寺の手伝いをしながら一生懸命貯金していた。いつかその飛行機を自分で買うことができる日を夢見ながら、自分で作った紙飛行機をお寺の境内で飛ばして遊ぶことがトギョンの唯一の楽しみだった。けれども、おもちゃ屋の店先に飾られていたその飛行機の最後の一機を、お金持ちの学校の同級生が親に買ってもらうことになる。がっかりしたトギョンは、悪いと思いつつも、学校でその少年の机にしまってあった飛行機を盗んでしまう。その友達がある日突然、家族旅行の旅先で事故に遭い亡くなってしまう。そして、トギョンの夢枕に出てきて、盗みをは働いたことを追及する。自責の念にかられ、自分の行いを正そうとする少年の姿を通して、子どもの心の成長を見つめる。
 
審査講評
 これは、どの子どもにも起こりうる物語である。両親のいない幼い男の子の心の成長を、自分の欲しい物に対する彼の葛藤を通して描いている。この番組は、韓国の緑豊かな山々を背景に、登場人物がそれぞれ心情豊かに演じる、たいへん美しいドラマである。制作者の意図がすみずみにまで行き届き、シンプルで奇をてらったところのないカメラワークや編集にも現れて、清々しく、また率直に子どもの心理を映し出した力強い作品に仕上がっている。
 近年多用されることの多いコンピュータを駆使した編集技術に頼ることなく、人の心情を尊重し、素朴な手法でメッセージを素直に伝えることに成功したこの番組は、我々にテレビ番組制作における原点を認識させ、ドラマ番組の大きな可能性を示したといえる。
制作者のコメント チャン・ヨン・リー、プロデューサー
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 「飛行機」は、わたし達の誰もが経験した子供の頃の小さな欲望の記憶を表したドラマです。いわゆる「純粋な欲望」の記憶なのです。

 他者との関わりにおける成長の記録、そして小さな世界の中で抱く希望と絶望の記録でもあります。このドラマの主人公、トギョンの失敗、想い、物事に対する理解や欲望の象徴である「飛行機」を通じて、子供の頃の記憶を辿ることができます。

 子供達に演技を教えるのは大変でした。また、方言をマスターさせるのにも苦労しました。結局、演技と方言の指導に2週間が費やされました。そのうえ、子供達はカメラにも同じシーンを何度も撮影する事にも慣れていませんでしたから、撮影時間は通常の倍もかかりました。

 スタッフは首尾良く紙飛行機が飛ぶシーンが撮れるまで、何百回、何千回となく繰り返しました。また、木の上で演技する子供達の安全を確保するためにも、はしごの取り扱いに苦労しました。さらには、雨期の間に、「寺に住み込む子供」を演じるのにぴったりな子供を捜すのも大変な事でした。しかし、撮影中の緊張やストレスに比べれば取るに足りない問題だったのです。このドラマで重要な役割を果たした壊れ易い「飛行機」を慎重に取り扱うスタッフの努力と熱意には、トギョンの情熱に勝るとも劣らぬものがありました。

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