第29回「日本賞」<2002年>

 
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日本賞
番組名 時について考える
機関名 カルーナフィルム社(イスラエル)
番組内容
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 人は「時」をどう過ごすべきなのか?
 会社の重役、タクシーの運転手、庭で遊ぶ幼い少女、1000分の1秒を争う競泳選手、ユダヤ教のラビ、農夫など、それぞれの人が自分の生き方と「時」についての考え方を語る一方、番組は建国50年という短い歴史しか持たないイスラエルの課題を国にとっての「時」という視点でも考える。
 「そんなに急いで何になる?」と言いつつ、一分一秒を急ぐ現代の生活。「一日に経験することが増えたから、人は早く年をとるようになった」と語る若い女性。電子レンジで調理して、残った時間を現代人はどのくらい有意義に過ごせたのか?季節の果物がいつでも手に入る生活が昔の生活と比べて真の豊かさなのか?など番組は現代人にとって「時」の普遍的な意味での問いかけ。悲惨な歴史、度重なるテロ、いつ訪れるかわからない死への恐怖など、他の国とは違うイスラエルにとっての「時」の意味。番組は、二つの視点を巧みに交差させながら、未来に向かって夢をもって生きることの大切さを鋭く伝えていく。
審査講評
 時間に追われる毎日を過ごすわれわれにとって、時をどう生きるかは、ますます重要なテーマになっている。「時について考える」は、時という抽象的なテーマを見事にテレビ番組としてとらえている。更に時という誰もが共通に抱えるテーマと時の視点から、イスラエルの社会に暮らす人々の価値観を見事に伝えている。この番組は、斬新な手法でさまざまな人と暮らしやその中で直面する矛盾を巧みな形で提示し、日々の生活と人生に何を求めるのかを問いただしている。映像と音楽を見事に駆使して深層心理に迫る効果が発揮されている。視聴者に問いかけ、考えさせながら、これほど楽しめる番組はそう多く目にすることはない。
 オリジナリティの高い手法を用い、抽象的でとらえ難いテーマに取り組んだチャレンジ精神が高く評価された。この番組こそ時の先駆者であり、時には「時」について考えることも大切だと気づかせる。

制作者のコメント エローナ・アリエル&アイエレット・メナヘミ
プロデューサー&ディレクター
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 制作会社「カルーナフィルム」を立ち上げるにあたり、単なるエンターテインメントを越えて、世界で苦しむ人々のために作品を送り出してゆこうと決めました。私たちの作品「時について考える」が教育的な価値のある番組として「日本賞」審査委員の方々に認めていただき、これまでの努力が報われた思いです。

 教育とは変化を意味します。物事を習うとき、人の知識、洞察力、そして理解が増して、その人に変化が起こります。学ぶという事は単に知識を習得するだけでなく、体験をすることだと思います。これこそが、私たちが作品の中で実現しようとしている事なのです。与えられたものを見、観察し、勉強するだけでなく、実体験こそが重要です。

 「時について考える」は、イスラエル人、ひいては「人間」の本質を描く作品です。イスラエル人は、その厳しい社会状況ゆえに、暮らしの中に高揚、誇張、緊張がもたらされています。その事が世界共通の事象である「時間の概念」を観察するうえで興味深いものとなるのです。混乱が起きた時、人が真っ先に失うものは物事を見通す力ではないでしょうか?その確かな洞察力を失えば、バランスの取れたものの見方を失ってしまいます。こうして即時に物事に反応してしまうという悪循環に陥るのです。私たちはこの作品を見てくださった方々が一瞬立ち止まり、今日の我々に必要な「考える」時間を持ってくださるようにとの願いを込めて「時について考える」を作りました。

 日本賞をいただいたおかげで、今後、より多くの方が「時について考える」を見てくださることでしょう。この作品が、視聴者の方々にとって「時」を大切にするきっかけになれば幸いです。

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