NHK土曜時代劇 桂ちづる診察日録

桂ちづる診察日録とは

若い女医さん・桂千鶴(24才/かつらちづる/市川由衣)の活躍と成長を描く、愛と涙の診療日誌、いわば女の『赤ひげ』です。蘭方を学んだ『長崎帰り』が評判となって、開業半年ながらも診療所は大賑わい。牢屋敷の女囚を診る『牢医師』となって、罪を犯した女たちの人生にも関わって行く。時は1825年。蘭方医とは言え、基本は漢方で、病気の原因は貧しさだから、千鶴は無力さを思い知る日々なのだ。それでも千鶴は、人々の命と幸せを守りたいと懸命に歩んで行く、連続14回の物語。

原作者のことば…藤原緋沙子

 江戸時代も後期となれば、女の医者の出る幕はあった筈。乏しい資料で書き始めた原作の世界が、テレビドラマ「桂ちづる診察日録」で血肉を伴った生き生きとした現実のものとなりました。

 医事指導に裏打ちされた医療の場面には驚きましたし、また忠実に再現された立体的な小伝馬町の女牢、芝居小屋など、スタッフ、キャストの結集には目をみはりました。

 ドラマは市川由衣さん演じる女医・桂 千鶴が、医者として死や病と立ち向かい、命の大切さ、医者のあり方などを考えながら成長していく姿が描かれていくのですが、市川さん演じる千鶴は、きりりとしてとてもいい。

 また兄役の高嶋政伸さんの陽太郎も期待出来そうで楽しみです。

 私は一話のラッシュを観て、つい泣いてしまいました。

 是非多くの皆様にも観ていただきたいと思います。乞うご期待です。

脚本家のことば…前川洋一

 医学のレベルが現代とは比べものにならないほど低かった江戸時代、今では簡単に治る病気が、命に関わるものでした。

 そんな時代に主人公、桂千鶴は医者になりました。彼女の思いは単純明快。一人でも多くの命を救いたい! もちろん、そう簡単に事は運びません。彼女の前に立ちはだかる数々の難問。それをどう乗り越えるのか。等身大で描かれる彼女の成長する姿を見守って下さい。

 さらに、主人公を取り巻く個性豊かな面々が物語に奥行きを与え、充実した三十分をお届けできると思います。

演出のことば「女たちの不幸への敬意」…吉村芳之

 いわゆる医者モノドラマの醍醐味は、人の命と向き合う姿を描くことに尽きる。すなわち、人の命と向き合うことへの畏れ・不安・迷い、そして喜び。

 近代医学の黎明期、人々にとって命の不思議さは今の比ではない。今回このドラマのための医事考証、医術指導を通じて、我々の祖先がいかに危うい生を生きていたのかということをイヤというほど知らされた。

 我々の主人公は、いわばこの国で初めての女医である。病がある種社会の鏡だとするなら、女の病は弱者たる彼女たちの不幸を反映していると言える。女囚を担当する牢医となった彼女は、だから女たちの病に向き合うことで、その患者の人生の暗部、更には社会や時代の暗部と向き合うことになる。

 土曜夕方の30分足らずの時代劇という枠であるが、ドラマを支えるセットや小道具に身の丈以上の注意を払っているのは、毎週繰り広げられる女たちのエピソードに対する我々の敬意の現れである。乞う、ご期待。

制作のことば「夢を追って走り抜けよう!」…菅野高至

 数年前、なんとも、そそられる小説に出会ったのが始まりでした。若い女医さんが牢屋の医者になる。

 日々のニュースを見るのが辛くなる時代を迎えて、まともに命と向き合う物語は魅力的でした。

 果たして土曜の夜、7時半の枠にはまるか? そもそも医史学の酒井シヅさんの協力が得られるか?

 夢を追うといえば桂千鶴のように素敵なのだが、まあ、なんとかなると、これもまた千鶴先生のように気合いで走ってしまったのだ。だから、このドラマはヒロインのように多くの人に支えられました。

 脚本家の前川洋一さん、ありがとう! 人生の始末を考え始めた60代の制作と演出、そのわがままに、お付き合い下された、いたく感謝なのだ。千鶴の悲しみや悩みを優しくつつんでくれた、ドラマの音楽の加羽沢美濃さん、作曲とピアノの演奏、ありがとう! 私を必要としてくれる人がいます、千鶴の思いを主題歌に、馬場俊英さん、感謝の次第です。

 行方定まらぬ陽太郎を哀しくも愛くるしいまでに演じた、高嶋政伸さん、私との出合いはたった二度目ですね。母親代わり、看護婦長、仕える女中、お竹さんの三つの顔を巧みに演じ分けた、キムラ緑子さん、私との出合いもまだ二度目ですね。物語のラストで「私の夢は千鶴、お前だ」と語る亡き父東湖の遠藤憲一さん、今からゾクゾクしている私とは、二年ぶりですね。亡き父の親友で、父親に代わって千鶴に寄り添い、陽太郎になぜか甘い、酔楽先生を三宅裕司さんが演じることで、この乱暴な企画が成立しました。そういえば、私との出合いもまだ、たった二度目ですね。

 そして、女優未満だった市川由衣くん。気合いの目力で、夢を追う桂千鶴はきっとこんな目で走り抜けるのだろう、そう私たちに思わせたのが市川由衣だった。その予感が確信に変わる日は、クランクインから、意外にも早く訪れたのだ。

 さあ、お客様も、桂千鶴とともに、夢を追って走り抜けましょう。

【スタッフ】

土曜時代劇「桂ちづる診察日録」(連続14回)

原作:藤原緋沙子『藍染袴お匙帖(あいぞめばかまおさじちょう)』シリーズより

脚本:前川洋一・國澤真理子(5・6回)

音楽:加羽沢美濃

主題歌:馬場俊英「私を必要としてくれる人がいます」

演出:吉村芳之・田中英治

制作統括:菅野高至・加賀田透

NHK土曜時代劇 桂ちづる診察日録