

江戸城に近く、幕府開闢以来の町人が住む鎌倉河岸。その界隈の同じ長屋で育った三人の若者と、彼らのアイドル・しほが繰りひろげる青春グラフィティ。友情と恋、一人前の人間になるまでの様々な試練、そして彼らの成長を見守る周囲の大人たちの温かく、ときには厳しい教え。一つのコミュニティの中で、貧しい者も豊かな者も、互いに助け合い、温かく心を通わせながら皆が生き生きと暮らしている。そんな鎌倉河岸の清新な青春群像。
現代の社会が喪失している大切なものを瑞々しく描いた“大人のファンタジー”。
私の小説の中で『鎌倉河岸捕物控』は特異なシリーズだ。
江戸城に一番近い鎌倉河岸の裏長屋に育った三人の若者・政次、彦四郎、亮吉と浪人の娘・しほを絡めて江戸版青春小説を模索した、江戸青春グラフィティーといえばいいか。おそらく時代劇に馴染みが薄く、捕物帳をよく知らない若い世代の橘慶太さん、中尾明慶さん、小柳友さん、柳生みゆさんらが、政次らを演じてくれる。十代、二十代の彼らが江戸の息吹をどのように現代に蘇らせてくれるか、楽しみだ。
松平健さん、山本學さん、竹中直人さんら老練な大御所が若い彼らに平成の時代劇とはなにか、捕物帳とはなにかを身をもって現場で厳しく学ばせてくれるだろう。時代劇ドラマが数少なくなった今、貴重な経験であり、伝承だと思う。
『まっつぐ』よ、新しい捕物帳ドラマたれ。
江戸鎌倉河岸。奇妙な地名だが、由来があり今でも都内の一角にその面影を残している。
同じように江戸の昔と東京が今だに繋がっている場所は、そこかしこに見られる。
この物語は鎌倉河岸の同じ長屋で生まれ育った若者たち、政次、亮吉、彦四郎、そして彼らが慕うしほらが織りなす、捕物帳の姿を借りた青春グラフティーである。
青春は、江戸の昔も現代も変わらないだろう。だが江戸の昔には、宗五郎親分、酒問屋の清蔵、ご隠居松六のような大人たちがデンと後ろに控えていた。若者たちは大人たちの暖かい眼差しに涙し、厳しい言葉に歯を食いしばり育つ。江戸の昔のその名残が、現代にも残っているのか。ドラマを通して少しでも感じて貰えれば、とも思ったりしている。
このドラマのテーマは一言で言えば、次の世代への「人の生き方、行動の仕方というカルチャー」の継承だと思います。このテーマを実現するために二つの仕掛けを用意しました。主人公の政次は呉服屋の手代から江戸一番の岡っ引きの跡継ぎに転身するのですが、その役をw-inds.の橘慶太さんに挑戦してもらうことがそのひとつです。ドラマの制作それ自体が新たな世代へのカルチャーの継承の場になったら面白いなという思いです。
もうひとつは視聴者の方々の世代の継承という課題です。近年、時代劇の視聴者が高年齢層に偏ってきましたが、時代劇の全盛時代には子どもから大人まで満遍なく観られていました。現代の若者たちにとって時代劇は敷居の高い、入りにくい感じがどうしてもしてしまうのではないでしょうか。この敷居をどうやって取り外すか、毎回ドラマの冒頭で新しい試みをしています。これがどう視聴者の方々に受け取られるか、いつにも増してドキドキしながら放送を待っているところです。
何かしら現在の東京の映像を時代劇に取り入れたいとの漠然とした思いが、清蔵役に竹中直人さんを得、w-inds.の唄うテーマ曲が出来上がってきたことで一気に明瞭な形となった。だが決して奇を衒うつもりはなく、中身は飽くまで正統派を貫きたいという“真っつぐ”な姿勢に変わりはない。その点はそれぞれのベテラン俳優陣が、ガッシリと或いはシットリと見応えのある芝居を演じてくれて心配はない。まだ何処か少年少女の面影を残す若者たちは、“真っつぐ”な故にポキッと折れてしまいそうな危うさを纏っている。その危うさこそが魅力的に映ってくれれば・・・。そして彼らが織り成す喜怒哀楽の心模様が、お客様の胸に少しでも鮮やかな印象を残してくれれば・・・と演出家の欲は深い。
人情と詩情あふるる鎌倉河岸の物語を是非とも御家族で楽しんでいただきたい。
【原作】佐伯泰英「鎌倉河岸捕物控」
【脚本】尾西兼一
【音楽】長谷部 徹
【主題歌】w-inds. 「Addicted to love」
【語り】竹中直人
【演出】清水一彦(NHKエンタープライズ)・笠浦友愛(同)・周山誠弘(同)
【制作統括】一柳邦久(NHKエンタープライズ)加賀田透(NHKドラマ番組部)