「妻は、くノ一」ドラマのみどころ・スタッフからのメッセージ

脚本のことば …金子成人

「妻は、くノ一」

原作を読む前、このタイトルを聞いた時は正直、胸の内で呻った。読むと、これは忍者モノではなくラブ・ストーリーであることに安堵した。幕末の江戸、しかも平戸松浦家元藩主静山まで登場する。小生の出身は平戸藩領の南部に位置する所で、松浦家ゆかりの寺やら石碑などが周囲に幾つもあった。脚本を書くことになったのも何かの縁かもしれない。
市川染五郎さんは歌舞伎で一条大蔵卿のような高貴な役もなさるし、『怪談牡丹灯籠』の伴蔵のような小悪党もなさる。その染五郎さんの雙星彦馬が楽しみではあるし、冬の京都、雪の降るロケで素足で収録に臨んでいた瀧本さんの意気込みにも期待するところです。

制作のことば …海辺潔

原作を読んだ時、これは愛の物語だと思いました。主人公の彦馬や織江は勿論、静山や雅江、そして物語上は悪玉に当たるはずの川村に至るまで、その行動原理は"愛"なのです。家や国、役目や任務といったかせを、愛が揺り動かし、事件を起こし、人を死なせ、更に複雑に絡み合って愛を深めて行く……。そんな物語の起点となる彦馬の愛が説得力を持たないとこのドラマは成立しません。星に詳しい以外にこれと言った長所のない彦馬でそれを描くのは本当に難しかったと思います。でも、染五郎さんは見事に演じきって下さった。彦馬が全身から醸し出すおおらかさや慈しみ、そして信頼に、ぜひ織江と一緒になって泣き、愛していただけたらと思います。

演出のことば …山下智彦

「妻は、くノ一」

原作は読んでいたものの、男が主役だということで少し戸惑った。というのも主人公が平凡な男だからだ。私の携わってきた時代劇の主人公は、何か枷があったり、裏の顔があったり、剣豪であって、爽快な立廻りがあったりといったものが大半であった。
今回この男と妻のくノ一が縦軸であり、この二人が成立しなければ、いくら横軸及び脇軸が交じわったとしてもヘソたりえるものが生じ得ないと危惧をした。そんな不安を払拭してくれたのが、まさしく縦軸の市川染五 郎さん、瀧本美織さんの自然体の芝居であった。私の考えを凌駕したその芝居に、改めて芝居の面白さ・難しさ・大切さを感じた。しっかりしたヘソがある娯楽作品になったと思います。