
どんな敵の豪剣も、日向で居眠りをする猫のように柔らかく受け流し、根負けした相手を打ち倒す天才剣士・坂崎磐音。
心に深い傷を負いながら、爽やかに生き、困っている人には優しく温かく、正義を貫く。
せつない恋と冒険、温かい人情とユーモア、スピーディーなアクション…大好評を博した前作から1年余、現代感覚あふれる「陽炎の辻」の第2シリーズを、全12回でお届けします(→各回のあらすじ)。
親友を失い、許嫁とも別れるという辛い過去を背負いながらも、いつも笑顔絶やさず、他人の為に汗を流すことを厭わない――坂崎磐音という浪人は平成の新しい時代劇のヒーローになるやもしれぬと、そんな思いで昨年書いた『陽炎の辻』。売れに売れ続けている原作を映像化するために脚本を書いた身としては、その続編を書く喜びに勝るものはありません。前シリーズで、中越典子さんが演じるおこんのアップで始まった画面を見た瞬間、これはいけるのではと感じ、山本耕史さん演じる居眠り磐音の憂いを帯びた瞳に見つめられた時、それは確信に変わりました。そして満を持してのシリーズ再開です。
おこんとの関係はどうなるのか、吉原の花魁となった許嫁だった奈緒の行く末は?さらに再び持ち上がる御家騒動に巻き込まれ――と、涙あり、笑いあり、チャンバラありの盛り沢山の内容になったはずと自負しています。お楽しみあれ。
人気シリーズのパートUを引き継ぐ演出としては、大船に乗ったつもりで、これまで通りの航路を進めば良いはず。ただし、放送時間が15分短縮したことについては何らかの対策を立てねばならない。安穏と自動操舵に委ねておくわけにもいくまい・・・と思ったりもしたのですが、妙案も浮かばず、結局はレギュラー出演陣のチームワークに負んぶに抱っこという形になりました。ただ短くなった分だけ内容が濃くなったのではないか、時間の割には豪華感があるのではないかなどと都合の良い解釈をして納得している次第です。
出演の山本くんとは「新選組!」以来です。冷徹で時には非情な面も見せた土方歳三と、縁側で日向ぼっこをする眠り猫のような坂崎磐音。全く異なる役どころを如何に演じ分けてくるか・・・まあどっちにしても、やたらモテまくる役には変わりなく、“カッコイイ耕史”を、今シリーズでも存分にお楽しみいただきたいと思います。
原作の佐伯泰英さんの小説の魅力は、ストーリー展開の面白さもさることながら、登場人物がみな生き生きとしてリアリティがあることではないでしょうか。主人公はもちろん脇役や敵役まで、それぞれの人物がとても個性的で興味深く愛情を持って描かれているように思われます。生身の俳優さんがそれぞれの役を演じるのはきっと色々な工夫努力をされているのだと思いますが、「陽炎の辻」の撮影が1年ぶりに始まると、たちまち、あの活気ある金兵衛長屋や今津屋が現れ、「陽炎の辻2」は前シリーズの終わりから1年後の設定ですが、その間、長屋や両替商の生活はずっと続いていて、われわれの方が留守をしていて、1年ぶりにそこに戻ってきたような錯覚を覚えました。それほどに、磐音をはじめすべての人々がこのドラマにぴったりとはまっているのだと思います。
【原作】佐伯泰英「居眠り磐音江戸双紙」
【脚本】尾西兼一
【音楽】佐藤直紀
【主題歌】歌:新妻聖子「愛をとめないで〜AlwaysLovingYou〜」
【語り】松本和也アナウンサー
【収録】2008年6月〜9月緑山スタジオ および 茨城ほか近郊ロケ
【スタッフ】演出:清水一彦 (NHKエンタープライズ)ほか
制作統括:一柳邦久(NHKエンタープライズ)
越智篤志(NHKドラマ番組)