

日本史の教科書を広げると、幕末に登場する人物の多さに、改めて驚かされます。いずれも小説や映画・ドラマの主人公になる名の知れた人々です。しかし、歴史上の人物の陰に隠れて姿こそ見えませんが、その時代を懸命に生きた名もなき人々も当然ながらいたはずです。
「陽だまりの樹」はそんな名もなき人々に焦点を当てたことで、幕末という時代の息吹がひしひしと伝わってくる作品です。
主人公は二人。一人は一本気な武士。一人は女好きの蘭方医。この水と油のように性格の違う二人が激動の時代を駆け抜けます。アクションあり、ロマンスありの痛快青春時代劇。どうぞご期待ください。
『陽だまりの樹』の実写化は非常にハードルが高いため、今まで実写化出来ず、今回が初めてです。
この原作を企画した理由は、手恪品に参画できることが夢であると同時に、この原作のエンターテインメント性に魅力を感じたからです。また、幕末が舞台ということも大きな要因です。幕末は非常に現代の世情と類似するところがあると思うからです。幕末が黒船の来航による、諸外国との通商条約など第一のグローバリゼーションだったとすると、現代は第二のグローバリゼーションといえるのではないでしょうか。
温故知新という言葉があります。この『陽だまりの樹』をご覧になって、幕末にワープして下さい。そして幕末を検証して戴けば、私たちの未来を予測するヒントを見つけることが出来るかも知れません。
幕末の時代に住む人たちが、現代人と違う点は、彼らの国を憂う気持ち、人を愛する気持ちが、私たちより数倍強かったのではないでしょうか。
是非、『陽だまりの樹』ご覧になって下さい。
青い空に向ってすっくと立つ一本の樹。つい最近、そんな光景を目にしたことがあると思い出しました。
陸前高田の海岸に残された、あの"奇跡の一本松"です。海水に侵され立ち枯れするかも知れないあの松に、多くの日本人が「がんばれ」とエールを送ったことは間違いありません。過酷な運命に耐え、明るい未来に向って一歩踏み出そうとするには、あの一本松が「そこに立っていること」が必要なんだと、みんなが感じたのだろうと思います。
このドラマのタイトルになっている「陽だまりの樹」もまた、主人公の万二郎にとっては生きる道しるべとなるシンボルです。樹齢三百年のその桜は内部を白蟻に食われ倒壊寸前、まるで維新前夜の江戸幕府のようです。だが美しい花を咲かせる「陽だまりの樹」を失うべきではない…そんな思いを抱いて、万二郎が国を守ろうと決意した瞬間から、このドラマは大きく転がり始めます。
幕末から百五十年足らず、万二郎や良庵が目指した「国」は今どうなっているのでしょうか? 彼らが求めた「幸せ」と「安らぎ」に満ちた国を実現できているだろうか・・・誰もが一度は経験したはずの、燃えたぎるような青春の熱さと高い理想を、このドラマを通じて再び思い出していただければ、幸いです。
「陽だまりの樹」の原作から、改めて幕末という時代がいかに激しいものであったかをうかがい知ることができます。シリアスな場面が続くとただ暗いだけの物語になりがちですが、手恷。虫さんが描かれた世界には次元を超えた夢と希望が感じられます。今回演出する上で、一番こだわったのがそれでした。言い換えれば冬の澄み切った空気のようなすがすがしさです。万二郎も良庵も、懸命に生きたからこそ、その姿にすがすがしさを感じるのです。クランクイン前に主演の市原さんに、先々の展開は意識せずに芝居をして欲しいとお願いをしました。目の前に現れる人物や事件に素直に反応して欲しかったからです。それらはとても刺激的なものですから・・・。この'陽だまりワールド'をクランクアップまで楽しみたいと思います。
BSプレミアム
2012年4月6日(金) 午後8時〜8時43分 毎週金曜(全12回)
(再放送・毎週日曜午後6時45分)
【原作】手恷。虫『陽だまりの樹』
【脚本】前川洋一
【音楽】本多俊之
【主題歌】指田郁也「花になれ」
【演出】藤尾隆・山内宗信・岡野宏信