「銀二貫」ドラマのみどころ

物語の概要

舞台は商人の町・大坂天満。主人公の松吉は仇討ちで父を亡くし、自分もあわや討たれるかというところを、偶然居合わせた寒天問屋・井川屋の主人・和助に銀二貫で救われた元武士の息子である。生きるため井川屋の丁稚となった松吉だが、武士を捨て、商人の道を歩むことに心が揺れていた…。大火で焼けた天満宮再建のためにかき集めた大切な銀二貫で松吉を救った主人の和助や、信心深いが故に松吉に辛くあたる番頭の善次郎から、商人としての厳しい修行と躾を受ける。そして、小さな寒天問屋の暖簾をめぐる数々の事件を乗り越え、松吉は商人の道をゆっくり歩みながら成長していく。得意先の料理屋の娘・真帆との淡い恋も絡め、関西風情たっぷりの空気感の中で、涙あり笑いあり恋愛ありの人情時代劇を描く!

※銀二貫とは

江戸時代の大坂では主に貨幣として「銀」が流通していた。「貫」は重さの単位で、銀二貫は2000匁で約7.5キログラムの重さとなる。貨幣価値を単純計算すると、小判(金)で約33両、現在の紙幣で300万円程度といわれるが、当時は貨幣の質が大きく変動していた頃で、実際の価値はその何倍にもなることがあったらしい。天神さんへの寄進額は当時の台帳によると、銀500匁~一貫がほとんど。井川屋の目指す「銀二貫」の寄進はまさにトップクラスの額と言える。
江戸時代の大坂を代表する作品「曽根崎心中」の中でも、「銀二貫」という大金を取り返せずに徳兵衛とお初は心中することになる。ちなみに原作の高田郁さんは、この「曽根崎心中」の中で登場する「銀二貫」からこの物語を着想している。

テンちゃん

テンちゃん(語り:山口智充)

天神さんの狛犬。
普通の犬の姿になって天満の町を歩き回り、氏子の人たちを見守っている。狂言回しの役割でドラマを進行させる。

銀二貫

『チーム銀二貫~「銀二貫」ドラマ化に寄せて~』… 原作 高田郁

自身の作品の映像化というのは、とてもありがたいことです。ただ、作者としてどう振る舞って良いかがわからず、常はなるべく距離を保つようにしています。けれど、今回の「銀二貫」だけは少し様子が違いました。

まず、この作品はOBOP(※注)の受賞作であり、大阪府下の書店さんと取次店さんとが心をひとつにしてベストセラーに育てあげようと腐心しているところでした。そこにNHKでのドラマ化の話が決まったのです。

プロデューサーさんのご好意で、OBOPのメンバーとともに撮影見学をお許し頂き、松竹撮影所にお邪魔しました。現場で役者さんやスタッフの皆さんが厳しい中にも和やかな様子で撮影に挑んでおられるのを目にして、何とも幸せな気持ちになりました。見学後、書店員さんたちから「ドラマがすごく身近に思えて、放送が楽しみでなりません。これを機に、より多くのかたに本を手に取ってもらえるよう頑張ります」とのメールを何通も頂戴しました。その時に、「チーム」という言葉が心に浮かびました。撮影現場の皆さんもOBOPのメンバーもそれに私自身も、皆がひとつのチームになったのだ、と。

著者の特権で「チーム銀二貫」と勝手に名付けさせて頂くことにして、チームの総力と天満の天神さんとのご加護とで、このドラマが沢山のひとにご覧頂けますように。

※注:OBOP=大阪ブックワンプロジェクト。大阪ゆかりの作品をベストセラーに育て、その収益の一部で社会福祉施設を通じ、大阪の子供たちに本を贈る取り組み。

■高田郁 プロフィール

兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒業後、1993年に漫画原作者としてデビュー(筆名:川富士立夏)。2008年に「出世花」で時代小説の世界へ。代表作に「銀二貫」、「みをつくし料理帖」などがある。2013年、「銀二貫」で第1回「Osaka Book One Project 大阪の本屋と問屋が選んだほんまに読んでほしい本」を受賞。
※当ページ文中での高田郁さんの「高」の字は、本来ははしごたかです。

『本気の美しさ』 … 脚本 森脇京子

森脇京子

京都・北野天満宮の梅が美しく咲き誇る春の初め・・全国の受験生たちは、希望を叶えた人、ダメだった人、それぞれが悲喜こもごものドラマを繰り広げたに違いない。

一方、江戸時代中期、このドラマの主人公は、突然、武士の子から寒天問屋の丁稚になる。彼の希望が滑り込む隙など皆無、ただ生きる為に。しかし彼は過酷な運命の中、立派な商人に成長していく。それは、彼が「本気」で、商人の世界に立ち向かったからだ。

今春、泣いた人は、来春、再チャレンジするのか、別の道を模索するのか・・誰もが思い通りの進路に進める訳ではない。しかし、どんな環境でも、「本気」で邁進すれば、その先は、きっと第一希望の夢に繋がっている。第二希望の人生を生きている私は、そう信じている。

■森脇京子 プロフィール

脚本家。劇団くるみ座、大阪放送劇団を経て現在に至る。テレビ、ラジオ、舞台と幅広く活躍。NHKでは連続テレビ小説「だんだん」(2008年度後期)、木曜時代劇「新・はんなり菊太郎」(2007年)、金曜時代劇「出雲の阿国」(2006年)などをはじめ多数の作品を執筆。2003年、MBSラジオ「海よ、空よ、風よ」(2003年1月放送)で第40回ギャラクシー賞ラジオ部門 優秀賞を受賞。

音楽 サキタハヂメ

サキタハヂメ

サキタ初の「時代劇」の音楽。頂いたオーダーが「サキタ節の泣きと笑いを」「大阪のあったかい心を」。大阪で生まれ育った音楽家として本当に光栄で、胸踊りまくりました。

まず、その数日後「あったか~♪」という言葉からふっと浮かんだメロディがあり、これを含めた12曲を作って次の打ち合わせに持参しました。そこから更にアイデアは出まくり、舞台の大阪「天神さんからの神様の声」のような存在として天神祭の地車囃子だ!と思いつき、本物に来てもらい録音し、そこにオーケストラを重ねた「天神さまビート」が完成。10分以上ある聴いた事もないようなすごい曲になりました。また、幾度となく火事にあっていた当時の大阪の街に「火の用心!」の想いを込めて、拍子木いっぱい打っておきました。テーマ曲の中にも「ぎん・に・かん!」と打ってます。気付いてもらえるかな…。気持ち込めすぎ、30曲のオーダーの所を65曲も作ってた…。NHKの方に「"朝ドラ"並みですよ」と言われました。

余談ですが、音楽打ち合わせの時、思い切って「ちょんまげかぶりたいです!」と言ってみたのです。「え!出ます?ちょうど一つ空いてる役があるんです!」…という次第で、出る事に(笑)。

嬉しさ、楽しさ、曲、胸、思い出いっぱいの「銀二貫」制作でした。早く見たいです。

■サキタハヂメ プロフィール

ミュージカルソウ(のこぎり音楽)演奏家・作曲家。のこぎり音楽を独学で習得。1995年、アコースティックデュオ「はじめにきよし」で音楽活動を開始。2004年頃からのこぎり演奏家としてのソロ活動を始める。2005年、大阪市「咲くやこの花賞」大衆芸能部門を受賞。1997年と2004年アメリカでのミュージカルソウ・フェスティバル(のこぎり音楽世界大会)で優勝。作曲家、音楽プロデューサーとしても活動し、NHKではEテレ「シャキーン!」(2008年~)、プレミアムドラマ「ただいま母さん」(2013年2月放送)の音楽を担当。平成23年度文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞(芸術振興部門)受賞。

『天神さんのお導き! 「銀二貫」制作にあたって』… 制作統括 山本敏彦 チーフ・プロデューサー

書店で初めて「銀二貫」を手にした時、「お金の値段がタイトル?」と興味を引かれ、その夜、一気に読破!途中で止められない面白さに圧倒されました。武士の息子から仇討ちを経て、商人の丁稚として生きることになる主人公・松吉の人生、真帆との悲しい恋とその結末、そして人情深~い大坂天満の人々の世界にどっぷりとハマってしまいました。「『銀二貫』をドラマ化したい!」。泣いて、笑って、グチャグチャになりながら強く思いました。

原作の高田郁さんに初めて会った時、そのお話から、「銀二貫」が御自身の分身のような作品だと感じました。善次郎、和助、井川屋などそれぞれの名前にまで髙田さんの想いがこもっていました。ドラマの台本は、脚本家の森脇京子さんと岡本貴也さんとでタッグを組み、練り上げました。単行本1冊を連続9回にするには、新たなエピソードや登場人物を増やし、ドラマ版「銀二貫」を作り出さなければならなかったのです。髙田さんの大切な世界観をしっかりと描きながら、森脇さんと岡本さんは本当に素晴らしい台本を書き上げてくださいました。そして、林遣都さん、塩見三省さん、津川雅彦さんが中心となった俳優陣が渾身の芝居で台本に命を吹き込んでくださいました。更に、音楽のサキタハヂメさんが、大阪ならではのメロディでドラマをどんどん盛り上げてくれています。(皆さんに感謝!)

いつか、京都で時代劇を作りたい…そんな希望を20数年前、NHKに入局した際に考えたことがあります。「銀二貫」をドラマ化できたのは、僕にとってひとつの奇跡であり、誇りでもあります。これは、きっと大坂天満の天神さんのお導き…と強く感じています。大坂天満の物語が日本中をあったかな気持ちにしてくれるよう最後まで作り上げていきたいと思います。ホンマにええ話だす!御期待下さい!

『ケチと始末は違いまっせ』… 演出 梛川善郎 チーフ・ディレクター

「始末」という言葉・・・俗に食べ物や道具を無駄なく使い切ることを意味しますが、要は「始まりと終わりをぴったりと合わせる」精神のこと、なのだそうです。

大坂という街は、時の政権・江戸幕府から遠く離れたところで大きく発達しました。その発展の土台にあったのが「始末」の精神です。人々は、政事(まつりごと)に頼らず、刀ではなく商いを通して、自らの力で円熟した社会を作り上げました。そのためには、他者から何かを奪い取る事無く、人生の始まりと終わりをぴったりと合わせる生き方がそれぞれ個人に求められたのでしょう。

「始末」して生き抜くためには「凛々しさ」が必要です。ゼロから始まりゼロで終わる。でも豊かな人生。そんな生を全うしようと懸命に気高く生きる人々を、俳優・スタッフと共に創り上げたつもりです。

銀二貫

 木曜時代劇『銀二貫』

2014年4月10日(木)~ 6月5日(木)
 総合 毎週木曜 午後8時00分~8時43分放送 [43分・連続9回]

【出演】
松吉:林遣都 真帆:松岡茉優(子ども時代:芦田愛菜)
お里:いしのようこ 梅吉:尾上寛之 嘉平:ほっしゃん。 半兵衛:板尾創路
 お広:映美くらら お咲:浦浜アリサ 山城屋:渋谷天外 松葉屋:団時朗
 善次郎:塩見三省 和助:津川雅彦 ほか
 語り(テンちゃん):山口智充

【原作】
高田郁 『銀二貫』
※高田郁さんの「高」の字は、本来ははしごたかです

【脚本】
森脇京子、岡本貴也

【音楽】
サキタハヂメ

【制作】
 制作統括:山本敏彦 / 演出:梛川善郎、小島史敬