100万人の行動宣言

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先生の授業案

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いじめのないクラスづくりをするために

いじめが起きにくい学級、いじめを乗り越える学級にするには

1、教室を安心で楽しい居場所にする

4月当初、学級は機械的に編成された「群れ」であって「仲間集団」ではない。学級構成員が遊びや学習の活動を通して互いが見え、分かり合い、つながって、生活・学習集団が少しずつできていく。自分自身が新しい職場になじむのにどれほどの気苦労があったか、しっかりと思い起こして欲しい。新しく人間関係をつくることに苦手でプレッシャーを感じ、不安いっぱいの子に寄り添える教師であってほしい。
「どうしたらホッと安心できる居場所になるのだろうか」を子どもと共に考えることがまず大事になる。例えば以下のようなことが出てくるだろうが、その通りだと納得できる体験談が語られるようにしたい。


・失敗や間違いを笑わない。
・仲間に伝えたいこと、お願いしたいことなどが自由に言える。
・多くの人と自由に歌ったり遊んだり読んだり調べたりできる。
・問題が起きたら、その解決のためにきちんと話し合う。

先生の授業案

私の場合、「先生、新しい学級のみんなへ。こんなことたくさんして!こんなことはやめて!」と題して何人かに発表してもらい、それについて私が応える。「あ~この先生はきちんと聴いてくれる」という安心感を持って貰えるように。その上で書いて貰う。書かれた全員の文と私の応えを学級通信に掲載して、全ての子どもと保護者(家族)が互いにそれぞれの願いが共有できるようにするところから学級をスタートする。


もう一点の「楽しい居場所・学級にする」ためには、多くの教師は、自分が得意な集団遊び、集団ゲーム、歌、群読、紙芝居などを通してまず追求する。 私の場合は、全員が必ず参加することを大切にしたいので、体育や学級会活動の時間として、グランドに出て足ジャンケン、種々の鬼ごっこ、エスケンなど、比較的身体を激しく動かしぶつけ合う遊びを展開する。一人ひとり全員が楽しいと実感できるよう最大の配慮をする。そうすれば子どもたちは、毎日継続的に展開する。さらに、詩を朗読しながら楽しく味わうことも並行する。特に若い教師は、子どもと精力的に遊び込んで欲しい。
ボディ・コミュニケーションによって心身をさわやかに拓いて他者とつながり合うこと、生活意欲を強めることもどこで追求していく。

2、子どもが興味関心、喜怒哀楽を発信するクラスに

子どもは体(「心」や「ランドセル」と言ってもよい)いっぱいに先生や仲間に言いたいこと、具体的には、日々の喜怒哀楽、悩み・訴え、好奇心、ニュース、調べたこと・深めたこと、遊び・運動スポーツ・読書・TV視聴・演劇・音楽会などの報告紹介・参加の呼びかけなどをもって登校してくる。それらを自由に発信できたり話し合ったりする場と時間を取り、継続していく。一人ひとりの発信をみんなで大切に聴き受けとめる。(子どもはピッチャー、先生・教室はキャッチャー)。

3、分かりやすくリズムある授業を

授業は毎日長時間ある。分からない、できない、おもしろくない授業の連続は、やがて教室にストレス、不満、無秩序、暴力性を生み出す。授業は何よりも「未知との遭遇」である。「上手な授業」でなくても良い。まず、ワクワクドキドキを生み出すような教材・教具・資料を準備することが第一。例えば「春」という漢字一字の指導であっても水・土・草の芽を触り、その成り立ちや意味を深く感動的に捉えさせることができる。学ぶこと、学び合うこと、新しく知ることに新鮮な感動が生まれる授業をめざしたい。そのプロセスでできうる限り一人ひとりに声をかけ、認めていくことを心がける。

先生の授業案




以上の具体的な実践展開は拙著『希望の教室―金森学級からのメッセージ』
(2004年小学校3年生1年間の取り組み物語、角川書店)を参照されたい)

その上で、いじめに関わって以下のことを大切にしていく。

いじめを乗り越える学級

1、いじめはどの学級・学校でも起きることを前提にした学級づくりをする

ふざけ、からかい、悪口、蔑視、嫌がらせ、サボリ、けんか、仲間外し、無視などのトラブル・問題は起きて当然。
その際、トラブルを「いじめ」や「一種の遊び」とひとくくりにしない。ましてやそれが「いじめ」かどうかを判別することが重要ではない。具体的な事実(行為)と当事者の思い、他者の見方感じ方を明らかにしていく。
同時に加害的な子どもの、その行為に走る、または生み出す背景、要因、思いなどを探っていく。加害者を安易に責め、謝らせたり重く罰したりする、いわゆる「ありがちな指導」ではかえっていじめを進行させる。彼等が抱えている生きづらさの問題や発達課題、さらに集団の彼等へのまなざし(偏見・否定的側面を拡大して見ている)を彼等や学級集団・部活等所属集団と共に探り解決していく努力が大切である。
それら学級に起こる様々なトラブル・問題を直視し解決してこそ人間的に成長するのであって、問題発生を否定的悲観的に捉えない。
トラブル・問題が直接起きていない新学期のできるだけ早い時期に、教師自身のいじめやトラブルの具体的な経験談、書籍やインターネット等で収集した被害・加害者のリアルな声、松谷みよ子『わたしのいもうと』(偕成社)などを教材にいじめを学習する。いじめの抑止をねらうのは当然だが、今年の先生や学級はいじめを始めとする様々な問題が出てもそれにぶつかっていって明るく解決するぞ~という意欲に満ちていて安心だ、ボクたちもその方向に生きるぞという雰囲気作りをねらう。

2、「相談すること」の重要性を授業としてきちんと教える

経験を積んだ大人でさえ、困ったことがあれば相談して生きている。この社会には、そのために弁護士、カウンセラーなどの仕事が職業としてあり、相談機関がたくさんあること、学級・家庭・地域にも広げればかなり存在すること(たとえば中学生でも保育園幼稚園の先生をあげる子もいる)を具体的に教える。
 なぜなら、子どもたちは小さいときから、「ひと(他人)に頼らないで、自分だけの力でやりなさい!」という指示のもとで育っている。相談をして選択肢を多く持つことの豊かさをぜひ学ばせたいものである。

3、友だちとの関係性を見極める

時々、長い休み時間、放課後誰がどこでどんな遊びをしているか、見たり聞いたり書いて貰って様子や関係性を捉える努力を怠らない。
その際、「一人でいること」を無条件に問題視して学級全員の前で「一人でいる○○さんの友だちになって欲しい」などと決して安直に言わない。継続的に、あるいは別な場面(清掃、給食、行事など)の様子を見ることとその子とじっくり様々な話題に触れ、話し合うことが大切である。友を持つことも課題だが、特に思春期には孤独に耐える力/楽しむ力(一人を怖がらない力)も今日的な重要課題である。重松清『みんなのなやみ』(新潮文庫)の4章「友だちのこと、いじめのこと」“ちょっとだけ「ひとり」でいることの勇気”を読めばよく分かる。

4、自分のキモチを綴らせる

学期に一回以上、「今、私が気になっていること」「ちょっぴり困ったり悲しかったりしていることがあるんだ」「言いにくいこと恥ずかしいことなんだけどやっぱり言ってみることに」「しまった!ついやってしまったあ」「これまで黙っていたが実は」「正直に言うので、怒らないで下さい(自ら勇気を出したのだ、怒らないよ)」などと書きやすい「書き出し」を与える。それらから自由に選んで綴方風(ドラマ的に)書いてもらう。
アンケートでは、事柄しか出てこない。大切なのは、ある事態に対してそれぞれの子どもがどんな感情、認識、意思を持っているのか、書くことを通して対象化し、自覚することと伝えることの二点が重要になる。
(子どもはいつもアンケートによって問われる調査対象ではなく、自ら問題と向き合い、話し合いと知恵で解決していく主体者である。)

5、いじめについて考える“場”を作る

子どもや保護者からいじめやトラブルの相談があった場合、相談者が仕返しに怯えないで安心できるように、安易に加害者や全員に伝えたりしない。
まずはクラスに関わる他の教師に伝え、複数の目で事実を収集したり確認する。私の場合は、基本的に4項の取り組みを丁寧に行う。すると、相談以外の問題が浮き彫りになることも多い。そこから得られた情報を十分分析し、作戦を練ってから、しかし極めて迅速に具体的な問題に厳しく立ち向かう。
可能な限り、被害者自身が作文や口答で、いじめられた悔しさ悲しさをリアルに表現・表明すること(その子にとことん寄り添って表現と表明を応援する)、そこから同様な体験、いじめたこと、傍観していたことを全員で話し合うことを基本にする。教師の応援、解決の仕方を子ども達はとても注視している。

先生の授業案

【参考図書】
金森俊朗 『希望の教室―金森学級からのメッセージ』(角川書店)
松谷みよ子 『わたしのいもうと』(偕成社)
重松清 『みんなのなやみ』(新潮文庫)

使う資料
いじめの授業に使う資料

授業に使うのは、基本的に「いじめノックアウト」番組です。それをどのように生かすかは、不充分だが筆者やディレクターがコメントとして書いています。
以下は、自分で授業を創るときに参考にできそうな本です。

1.『わたしのいもうと』松谷みよ子 偕成社 1987年(2013年57刷)

いじめがいかに人間の感情、尊厳、命を奪ってしまうのか、いじめた人はいかに加害の意識を持たなく、それがさらに被害者を苦しめるかがひしひしと伝わってくる絵本。
筆者は毎年、学級づくりの早い段階でどの学年を担任しても必ず読み聞かせて語り合ってきた。中高校・大学で授業・講演を依頼されたときにも最も使用してきた本である。

2.『なぜボクはいじめられるの~子ども・親・教師のいじめた意見200人の告白』朝日新聞社会部編 教育史料出版会 1995年

―「全国から寄せられた2000通の手紙から編むいじめ体験記。いじめに苦しむ子どもたちは訴える。そのとき、親・教師たちは何ができたか。この生の声のなかにいじめ解決への対応と方法がある。」(帯封)
読んでいると、正直苦しくなってとても読み切れない。リアリティあるそれぞれの個の言葉で綴られた悲痛な叫びが胸を刺す。この本からの声をしばしば授業で使った。

3.『いじめのきもち』村山士郎編 童心社 2013

「この小さな本は、いじめられた時のつらいつらい気持ちを綴った作品、いじめにつながるムカツキや不安感がふくらんでいる心を綴った作品、そしていじめられている友に心を動かし、自分に出会っていく作品を集めてみました。」(あとがき)詩集になっているので読みやすい。

4.『啓祐、君を忘れない~いじめ自殺の根絶を求めて』森 順二・美加 大月書店 2008年

―「あの笑顔を返して・・・福岡県筑前町でおきた、中学生のいじめ自殺事件。実名を公表し、真相を求め、根絶を訴え続ける両親の渾身の手記。」(帯封)
我が子をいじめられ自殺で失った両親の慟哭がどれだけ深いものであるか、子どもと保護者に、この本の中から抽出してぜひ伝えたい。
いじめ自殺事件として最も大きく取り上げられたのは大河内清輝君である。その父はいじめの被害・加害者に寄り添って立ち上がり、立ち直りの支援を続けている。ネットで検索すれば その父・祥晴氏と作家・重松清氏と対話記録「子をなくした父として」(2006年1月29日NHK教育テレビの「こころの時代」で放映されたもの) を読むことができる。

いじめ問題を学びたいとき

上述をもちろん含んだ上で、最小限度紹介します。たくさんの本を読みあさることよりも、確かな一冊を何度も読み、子どもを深く捉える(人間へのまなざしを確かにする)こと、子どもに向きあう具体的な実践の取り組みの基本を学ぶことが大切だと考えています。
そのための一冊として選んだのが「1,『いじめと向きあう』」です。この本にはかなり専門的にも学ぶことができる本の紹介の章があるのでここでは難解な本は省略します。

1.『いじめと向きあう』教育科学研究会編 旬報社 2013年

ブックガイド「知ることの痛みとその希望~いじめ問題を考えるための17冊」の章があり、それぞれの本の特徴的内容も紹介されている。
執筆者は大学教研究者、小学校教諭、中学校教諭、高校教諭、弁護士と立場、視点、取り組みなどが多様であること、これまで蓄積されてきた理論と具体的な教育実践(指導・取り組み)の両面が書かれているので、読みやすくとても参考になる。

2.『かあちゃん』重松清 講談社文庫 2012年

「許す・許さない / 許される・許されない」関係を描いた三部作(『カシオペアの丘で』2007年、『かあちゃん』2009年5月、『十字架』2009年12月)の一編である。生涯自分に笑うことも、幸せになることも禁じた母とその息子を軸に、彼らとさらに次世代の子どもたち(中学生)の物語が次々に展開される。章ごとに前章で脇役だった登場人物が次章で主役になり、生活・人物像が複眼で奥行き深く描かれている。金森が読むことを勧めた全ての人が「深く感動した、人間を深く捉えることがどういうことか、よく分かった」と語る。

3.『いじめる子』本庄豊 文理閣 2013年

作者は現在立命館宇治中学高校教師だが、長年公立中学校でいじめ・暴力・非行問題に取り組んできた。問題を抱えた子どもと保護者に退職を余儀なくされた小学校中堅女性教師の事実を含め、子どもに翻弄され、失敗を重ねながらも子どもに向きあっていった実践「ドキュメント」。

4.『いじめで遊ぶ子どもたち~子どもたちに安心と信頼の生活世界を』村山士郎 新日本出版社 2012年

―「子どもの世界で何がおこっているのか、そのいじめにどんな新しい特徴があらわれているのか」「楽しみながら死に追い込む特徴はどこからくるのか」(はじめに)を分かりやすく論じている。

5.『大津中2 いじめ自殺~学校はなぜ目を背けたのか』共同通信大阪社会部 PHP新書 2013年

―「事務作業や保護者対応に忙殺される教師たち。連携さえとれない現状で、はたして子どもの異変を察知することはできるのか。子ども一人に孤独を背負わせる世の中であっていいのか。私たちはいま、彼らのために何ができるのかー。」(ブックカバーに書かれた内容紹介一部)
子ども対教師で語られるいじめ問題は多いが、この本は学校・教育委員会の問題にまで視野を広げ、新聞記者たちが論じているのが特徴。また、全校生徒アンケートの自由記述欄からの抜粋も収録されている点も興味深い。

6.『みんなのなやみ』重松 清 新潮文庫 2009年

―「親友がいじめられている。リスカがやめられない。家族や学校のなかで誰もが感じる疑問から人には言えない深刻な相談まで」「シゲマツさんが一緒に考え、真剣に回答します。」(ブックカバーに書かれた内容紹介一部)
いじめに特化された悩みでなく、少年期や思春期の子どもたちが抱える多種多様な悩みが取り上げられているので、子どもたちや保護者にも勧めたい本である。

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