災害対応の“拠点”に 根室市役所の新庁舎がついにオープン
- 2024年5月15日
根室市では、千島海溝沿いの巨大地震による被害が想定されています。こうした中、市役所の新しい庁舎が5月にオープンしました。災害が起きた際に災害対策本部が設けられるなど、防災拠点として重要な役割を担いますが、どのような機能が備わっているのでしょうか。詳しく取材しました。(NHK根室支局 牧直利)
防災機能を重視
根室市役所の新庁舎は、鉄筋コンクリート造りの地上4階、地下1階建てで、ことし3月に完成しました。晴れた日には北方領土の国後島を臨むことができ、領土問題の啓発にも活用が期待されますが、重視されたのが防災拠点としての役割です。
根室市 石垣雅敏市長
「大規模な災害が発生した場合でも継続して行政サービスを提供できる体制が確保されている。災害対応拠点施設として市民の安全・安心を支えることのできる十分な機能が備わった庁舎だ」
老朽化が進んでいた旧庁舎
根室市は、今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れに見舞われる確率が80%とされています。また、道の想定では、千島海溝沿いの巨大地震と津波が起きた場合に最大21.7メートルの津波が押し寄せ、最悪の場合2300人が死亡するとされています。
しかし、新庁舎の隣にある旧庁舎は、建てられてから51年が経過し、老朽化が進んでいました。2009年に行った耐震診断では耐震基準を下回り、特に地下の部分は、震度6強の揺れで倒壊するおそれがあるとされました。
また、災害時の業務継続に必要な非常用電源も不十分でした。6年前の胆振東部地震で発生したブラックアウトでは、持ち運び式の発電機を使用したものの、サーバーがダウンして証明書などの発行ができなくなってしまったといいます。災害時に住民サービスを継続するためにも、庁舎の建て替えが急務でした。
根室市危機管理課 熊谷恵介 主査
「地震が来た時に、万が一建物が使えないという状態になると、まず市の初動対応から遅れてしまうので、そこは非常に心配だった」
新庁舎に備えられたのは…
それでは、新庁舎にはどのような防災機能が備えられているのでしょうか。
まず挙げられるのが、耐震性の大幅な強化です。旧庁舎と比べて柱を約3倍の太さにするなどして、耐震基準の1.5倍の耐震性を持たせ、震度7の揺れにも耐えることができるようになりました。これにより、情報の収集や避難の指示を出す災害対策本部を庁舎内に確実に設けることができるようになりました。
また、大型の非常用発電機を設置し、予備電源も大幅強化しました。停電時でも3日間にわたって通常どおりの業務を行うことができるほか、庁舎内の会議室などは、災害時に約300人が入れる一時避難所にもなります。市民などからも、安心する声が聞かれました。
中標津町から親子で内覧会に来た50代男性
「通院や買い物で根室によく来るが、高い建物が少ないので避難場所がどうなるのかなと思っていた。そういう意味でも強化されてよいのではないか」
市内に住む60代女性
「市役所としての機能が一瞬で消えてしまうと市民としては不安なので、こうして立派になってくれると、即対応していただけるのかなという安心感がある」
さらに、備蓄面でも対策を進めています。ことし1月に起きた能登半島地震では道路が寸断され、多くの地区が孤立状態となりました。根室市も半島部にあり、道路の寸断により孤立してしまうおそれもあります。
新庁舎には一時避難してきた人のための飲料水や毛布、それに段ボールベッドなどを備えています。市は今後、1年半ほどかけて旧庁舎の地下の部分を倉庫に改修し、備蓄を増やしていきたいとしています。
根室市危機管理課 熊谷恵介 主査
「能登半島は南北に長いが、根室も東西に長く、共通するようなところはあるかなと思う。新庁舎ができたことで災害対策本部の対応などを迅速・的確にできるような体制になったので、今後はあらゆる総合的な項目を全体的に推進し、対策を進めていきたい」
取材後記
新庁舎がオープンしてから、私も度々足を運んでいます。やはり注目されるのは、4階の市民交流サロンと食堂から臨む根室海峡の景色の良さでしょう。しかし、いまは憩いのひとときを演出している場所が、災害によって危険にさらされてしまうときこそ、新庁舎の存在が頼りになるのだと感じました。
根室市はこのほか、市内で最大の避難所となる新たな総合体育館の整備も目指しています。まちづくりの観点も合わせた防災の取り組みが進むのか、引き続き取材していければと思います。
(5月15日「ほっとニュースぐるっと道東!」で放送)
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