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子どもたちに本と過ごす時間を 読書介助犬

  • 2024年4月26日

「読書介助犬」をご存じですか?
本の読み聞かせなどをする子どもたちに寄り添い、その時間を豊かにするものなのだといいます。
いったいどんなワンちゃんたちなのか?
読書介助犬を育成するスクールを取材して、その訓練や活躍をのぞいてみました。

読書促すワンちゃんたち

北海道・七飯町の公民館で行われた絵本の読み聞かせのイベントです。

読み聞かせに聞き入る子どもたちの隣にいるのは、読書介助犬と呼ばれる犬たちです。

読書介助犬はアメリカで1999年に始まった取り組みで、

子どもが犬に興味を持ってそばにやってくることで、気が散りがちな子どもでもその場にとどまることができる
その場にじっとしている犬たちのまねをして、子どもも長時間落ち着いて読書に集中できる
きつ音があるなどして人前で本を音読するのを嫌がる子どもでも、おとなしく寄り添う読書介助犬が練習相手になってくれる

といった効果が期待されています。

一見すると犬たちはじっとしているだけのようにも見えますが、実は厳しいトレーニングを積んでいるんです。

読書介助犬を育てる七飯町のスクール

七飯町内のドッグスクールには、一般家庭の飼い犬が、月におよそ250頭通っています。

スクールを営むのは、ともに訓練士の加藤大希(たいき)さん・知宏(ちひろ)さん夫婦。

妻の知宏さんは、もともと看護師として働いていました。

医療現場にもセラピードッグ※などとの触れ合いがあり、そこで見た動物と人との関わりが、読書介助犬の育成を始めるきっかけになったそうです。

※セラピードッグ=病院や介護施設で、患者などと触れあうことで心のケアやリハビリを手伝う効果があるとされる犬

T・K DOGSCHOOL 副代表 加藤知宏さん
「看護師が患者さんの心を開くまでにはものすごく時間がかかる。でも、犬たちが患者さんたちと関わったときには、すぐに心を開いて笑顔になる姿を見て、動物の持つ力というのは無限大なのだと感じました」

読書介助犬として育てられるのは、レッスンに通う犬のうち、性格が穏やかだったり飼い主の命令をきちんと守れたりすると判断された犬たちです。
多くの知らない子どもたちを相手にしても安全であるために、独自のトレーニングを重ねます。

たとえば、「はしゃぐ子どもたちが大きな声や身振りで犬を呼んでも、飛びつかずに待つ訓練」や、「知らない人に体のあちこちを触られてもおとなしくしている訓練」など。
さらには、杖や車いすなどを見ても驚かないよう、それらの器具に慣らせる訓練も行っています。

一頭の育成には1~2年ほどかかり、スクールではこれまでに13頭が読書介助犬となり、活躍を続けています。

ワンちゃんに本を読んであげたい!

ある日、読書介助犬たちは北斗市にある放課後等デイサービス施設を訪ねました。
支援学級などに通う子どもたちが在籍しています。

木村らんさん

そのなかの1人、小学5年生の木村らんさんは、読書介助犬に会えるのをひときわ楽しみにしていましたが……。
実際に読み聞かせが始まり犬たちがやってくると、ちょっと怖かったのか思わず離れてしまいました。

それでも、犬はらんさんに無理に近づくようなこともなく、おそるおそる頭をなでるらんさんをやさしく受け入れます。

読み聞かせの絵が終わりに近づいたころ、そんならんさんが動きました。
犬たちに読んであげたいと、みずから絵本を選び持ってきたのです。
言葉を発することが苦手ならんさんですが、2頭にそれぞれ1冊ずつ、絵本を読み切りました。
聞き役にまわった犬たちは、おとなしく「伏せ」の姿勢でらんさんの読み聞かせに耳を傾けました。

木村らんさん
(上手に読めましたか?)はい!ありがとございました!

らんさんのように、犬の存在をきっかけにして、本と触れあう時間をより楽しく感じるようになる子どもたちが少なくないようです。
読書介助犬が、子どもたちの可能性を広げています。

  • 寺岡祥平

    函館局

    寺岡祥平

    2014年入局。松山局、大阪局などを経て2023年から函館局。 長らく猫派を自認するも、取材を通して犬にも気持ちを持って行かれつつある。

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