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寿都町議会議員選挙 「概要調査」賛成の立場が過半数に

  • 2023年10月4日

いわゆる「核のごみ」の最終処分地の選定をめぐり、全国で初めて「文献調査」が行われている寿都町の町議会議員選挙が10月3日に行われ、次の「概要調査」に進むことに賛成の立場の議員が過半数を占めました。選挙結果は「概要調査」に前向きな片岡春雄町長を後押ししていくものと見られ、今後の町の判断に影響することも予想されます。(札幌放送局 生田真尋・渡邉健)


「核のごみ」 処分地選定手続きの現状

「核のごみ」は高レベルの放射性廃棄物で数万年にわたって隔離する必要があり、最終処分場を設けて地下300メートルを超える深さに埋めることが法律で定められています。
処分場の選定にあたっては20年程度かけて3段階で調査が行われ、対象となった自治体には、最初の「文献調査」で最大20億円、第2段階の「概要調査」で最大70億円が交付金として支払われます。
寿都町では2020年から神恵内村とともに全国で初めて「文献調査」が行われていて、すでに2年程度とされる目安が経過しています。「文献調査」はほぼ終了していて、次の段階の「概要調査」に進むかどうかが焦点となっています。

現地でボーリングなどを実施する「概要調査」に進むには町長と知事の同意が必要で、町は事前に住民投票を実施し、町民の意向を確認することにしています。
一方、地元からは北海道だけの問題になることを懸念する声が上がっていて、片岡春雄町長はほかの調査地域が現れるまで住民投票を実施しない方針を示しています。
また、鈴木知事は道の条例などを理由に調査に反対の姿勢を示しています。
こうした中、9月27日、長崎県対馬市が「文献調査」を受け入れない意向を表明するなど、調査を行う自治体が増えない状況が続いています。


「概要調査」賛成の立場が過半数に

9人の定員に対し12人が立候補した町議会議員選挙は10月3日に投票が行われ、「概要調査」に進むことに賛成の立場の議員が5議席と過半数を占めました。投票率は81.57%と前回から2ポイント近く上がり、高い関心が伺えました。

一夜明けた4日、町民に受け止めを聞きました。

賛成の立場の女性
「賛成の議員が過半数を占めたことはいいこと。この町は財政もない。少子化で多少のことはやむをえない」

反対の立場の男性
「状況は何も変わってない。選挙前も同じような構図だったから」


5日間の選挙戦 賛成・反対それぞれの立場で

今回の寿都町議会議員選挙。5日間の選挙戦では、「概要調査」への賛否をめぐって論戦が交わされました。

「概要調査」に賛成の早瀬良樹さん(72)は、調査で得られる最大70億円の交付金を活用し、町の将来を支える新たな産業を生み出そうと考えています。

早瀬良樹さん
「調査をぜひしてほしいと国も声をあげている。『概要調査』の交付金をいただいて、次の産業に向けての基盤に活用していければ、町民のためにもなっていくのではないか」

しかし、選挙戦では、「核のごみ」の話題に触れることは極力控えることにしました。支援者のあいだに漂う微妙な空気を感じていたからです。

早瀬良樹さん
「自分を推してくれる中には賛成と反対、両方の立場の人がいる。そんな中でどうしても声高にはいえないというのが現状。寿都に住む者にとっては変わっていかないと住めない。新しい歴史を刻むことも私たちの大きな任務」

「概要調査」に反対の越前谷由樹さん(71)は、2年前の町長選挙に続く立候補で、調査そのものの撤回を掲げました。

越前谷由樹さん
「自然豊かな寿都に『核のごみ』はいらない。交付金に頼ったまちづくりや町の予算編成には反対」

調査の受け入れをめぐる議論で、町民のあいだにわだかまりが生じたと感じています。反対の立場の議員で過半数を確保し、調査を取りやめるきっかけにしたいと訴えました。

越前谷由樹さん
「『核のごみ』の問題ばかりを町民の皆さんに投げかけるわけにはいかない。でも、今、この土台をきちんとしなければ、寿都の町がどっちの方向に向かうんだと。これはしっかりと訴えなければならない」

今回の選挙。早瀬さんと越前谷さんはどちらも当選しました。


【記者の視点】今後はどうなる?

今回の選挙で立候補した人の票を足し合わせると、賛成側が5人で963票、反対側が7人で917票でした。票の合計でも賛成側が上回りました。「概要調査」だけが選挙の争点ではありませんが、民意の1つということはいえます。

ただ、今回の結果をもって、すぐに「概要調査」に進むということではありません。次の調査に進むには、片岡町長と鈴木知事の同意が必要で、町は事前に住民投票を行うことにしています。

片岡町長は、調査を受け入れる自治体が増えることを住民投票を実施する条件にしていて、次のポイントは実際に手を挙げる自治体が出てくるかということになります。

先日、長崎県対馬市で調査の受け入れをめぐる議論が行われましたが、市長が受け入れない意向を表明するなど、調査地点の拡大は見通せていない状況です。
今回、賛成派が多数を占めた町議会は、処分地の選定手続きには直接関与しませんが、「概要調査」に前向きな片岡町長の判断を後押ししていくものと見られ、今後の町の判断や住民投票に影響することも予想されます。

2023年10月4日

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