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「当選確実」って? 参議院選挙 NHK北海道はこう判断します

  • 2022年7月8日

“夏の政治決戦”参議院選挙。投票日はいよいよ10日です。 その夜、NHKはテレビやラジオで開票速報番組をお伝えします。 このなかでは、候補者の「当選確実」を速報します。 この「当選確実」。よく耳にされると思いますが、わたしたちはこうやって判断しています。ちょっとニッチな、選挙報道の舞台裏です。 

「トウカク」はこう判断する

「当選確実」は、選挙管理委員会の発表とは別にNHKが独自に判断して放送するものです。その根拠にするのは、時系列で整理すると、①事前の情勢取材、②投票日当日の出口調査、③開票状況の取材です。

①については、後ほど詳しく紹介します。
②は、「センキョの疑問答えます!①『出口調査ってどうやるの?』」の解説記事をご覧ください。また、「北海道の参議院選挙 データで“深掘り” 投票率・期日前投票・出口調査…」の記事では過去の出口調査の詳しい分析を紹介しています。
③は、各自治体が投票日の夜、開票作業を行う「開票所」での取材です。
体育館などの開票所には政党や陣営の関係者、一般の有権者が開票作業の様子を見に集まります。そのなかで報道各社も開票状況を直接、取材します。どの候補者が優勢か、実際に目で確認しています。

こうした取材や調査の結果を総合的に分析して、「当選確実」を判断しています。
このため、選挙管理委員会の公式発表がない段階や、開票作業が始まったばかりの開票率が低い段階でも、優勢と見極めがつく場合には「当選確実」と判断します。
また、開票作業が始まる前であっても、分析の結果、大差をつけて当選することが確実だと判断できれば「当選確実」と判断します。

選挙報道の華、「当選確実」。報道各社はその判断でしのぎを削っています。
わたしたちは、少しでも疑義があれば「当選確実」とは判断しません。
「当選確実」は、その候補者が当選すると100%の確信を持てた段階で判断しています。

記者の取材現場では…

「当選確実」の判断にあたって大切にしているのが、記者の情勢取材です。これがなかなか大変なんです。
各候補者が開く集会や街頭演説にどのくらい有権者が集まっているのか。そのうち陣営がかけた動員ではない有権者はどのくらいなのか。演説の反応はどうか。演説を聞くのを途中でやめて帰る人はどのくらいいるのか・・・。
道内7つの放送局の記者たちが、受け持ちの地域で政党や候補者に密着しながら、ときには有権者の方々にも直接、話を聞きながら、日夜、情勢取材を重ねています。
その取材の蓄積を踏まえて、わたしたちは事前に各候補者がどのくらいの票を取りそうか、どの候補者が優勢か、当落線上にいる候補者は誰と誰なのか、など情勢分析をしています。
こうした“頭の体操”をしておくと、仮に投票日当日の出口調査がゆがんだ場合でも、慌てずに対応できます。もっといえば、先ほど示した①の情勢取材、②の出口調査、そして③の開票状況の取材がうまく一致してくれれば、「当選確実」の確信を持てるのです。

その昔は“組織型”の選挙が主流で、各政党や各候補者はもちろん、支援する業界団体、地域に詳しい自治体関係者、農協や漁協といった組織、などなど丁寧に取材していけば、かなり正確に情勢を把握できました。「有力企業の○○は今回、△△票をA氏にまわす」「有力団体の□□は、今回は対立するB氏に投票を呼びかける」・・・。そうした取材情報を積み上げて各候補者の得票を読んでいました。「選挙取材は足で稼ぐ」は、先輩記者からよく聞かされたものです。
ただ、最近の選挙は、そうした“選挙の事情通(=選挙のプロ)”を取材するだけでは、なかなか情勢をつかみにくくなっています。
政党への支持は、最近はかつてほど強固ではなく、その時々で投票先を変えるような“ふわっと”した支持が増えているとの指摘もあります。つまり、“非組織型”の有権者がどう動くかをより丁寧に把握する必要があるのです。
その代表例が、とくに支持する政党のない支持なし層、いわゆる無党派層です。
無党派層は投票に行かないケースが少なくありません。(※こうした状況を“寝る”とも言います)
一方、無党派層が特定の候補者に集中して投票することがあります。(※こうした状況を“雪崩を打つ”と言っています)
選挙の勝敗は、最後は無党派層の動向で決まるケースが少なくありません。この動向をいかに正確につかむかが、最近の情勢取材ではカギとなっています。

“寝た子が起きた”場合、つまり無党派層が動いた選挙では、投票率は跳ね上がります。過去の参議院選挙でも、そうした状況はみられました。そして、そういう選挙では「何かが」起きて、次の政局につながっていました。
だからこそ、わたしたちは“選挙の事情通”を取材するだけではなく、街に出て広く有権者に話を聞いたり、候補者の集会や街頭演説での熱気を肌で感じたりといった取材も大切にしています。そして投票率をなるべく正確に見極め、無党派層の動向も含めて選挙の“風”を読み切ることに努力しています。
とりわけ参議院選挙は選挙期間が長いことから、予想しなかった“風”が突然、吹くこともあります。目には見えない“風”を感じ取ることをあらゆる場面で意識して取材を重ねることで、「当選確実」の的確な判断につなげています。また、個々の「当選確実」を積み上げて、その選挙全体の大勢をなるべく早くお示しすることも、わたしたちは大切にしています。国政選挙の場合、選挙の大勢判明を受けて、投票日の夜に早くも次の政局が始まることもあります。

世論は動く?動かない?

いかに有権者の投票動向を把握するかー。1つの材料として世論調査があります。
NHKでも国政選挙の前は毎週、全国の有権者を対象に電話による世論調査を行い、結果はニュース7などで紹介しています。「選挙への関心度」「投票に行くかどうか」の設問は、投票率を推し量る材料になりえます。
一方、NHKは行っていませんが、報道各社の中には、世論調査の結果などをもとに個別の選挙区について情勢を報道しているところもあります。「□□氏安定、ほかを引き離す」「○○氏先行、●●氏が追い上げる」「△△氏、▽▽氏、☆☆氏の混戦模様」などという記事をご覧になった方も多いと思います。
こうした報道を受けて、その後、情勢がどう変わっていくか、あるいは変わらないかも1つのポイントになります。

ここでよく言われるのが、「アナウンス効果」です。
このうち、優勢とされた候補者がさらに支持を広げていく場合、「バンドワゴン効果」が言われます。“勝ち馬に乗る”心理のことです。
逆に、劣勢とされた候補者が盛り返す場合、「アンダードッグ効果」が言われます。“判官びいき”の心理のことで、いわゆる同情票のケースもあります。
このほか、政党幹部のちょっとした発言で、反発から情勢が一変することもありえます。こうした状況を“潮目が変わる”と言います。
こうした有権者心理も踏まえて“風”がどう吹くのか-。情勢取材でわたしたちは常に意識しています。

参院選の準備にあたる記者たち

いよいよ10日は投票日です。
わたしたちは今回も、正確性を最も大切にしながら、「当選確実」を判断します。
ぜひ、NHKの開票速報番組をご覧ください。

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