ページの本文へ

NHK北海道WEB

  1. NHK北海道
  2. NHK北海道WEB
  3. 選挙北海道
  4. 「繰り上げ投票」 参議院選挙 北海道の投票率を占う?

「繰り上げ投票」 参議院選挙 北海道の投票率を占う?

  • 2022年7月6日

“夏の政治決戦”参議院選挙。その投票日は7月10日、日曜日です。
しかし、この日に道内すべての投票所で投票が行われるわけではありません。 ある町の2か所の投票所では、この2日前、7月8日の金曜日に投票が“前倒し”して行われます。(※公示日翌日から始まる「期日前投票」のことではありません。地域ごとに決められた投票所での投票そのものが“前倒し”されるのです)
これを「繰り上げ投票」といいます。
地元の有権者以外にはあまりなじみがないかもしれないこの繰り上げ投票、深掘りしました。 

それは「島」です

その2か所とは、道北の天売島と焼尻島にあります。
日本海に浮かぶ2つの島合わせて有権者はおよそ400人。
天売島では「天売総合研修センター」、焼尻島では「焼尻総合研修センター」に7月8日の金曜日、投票所がそれぞれ開設されます。
かつて、2つの島にはそれぞれ2か所の投票所がありましたが、人口減少に伴い投票管理者や立会人の確保が難しくなり、前々回・2016年(平成28年)の参議院選挙から1か所ずつとなりました。

ではなぜ、2つの島で投票日が“前倒し”されるのか-。
投票箱は「開票所」に集められて、各候補者の得票が集計されます。
この開票所は、区ごとに設けられる札幌市以外は、各市町村1か所ずつ設けられます。
天売島と焼尻島は羽幌町内にあり、開票所は島の対岸にあたる羽幌町の中心部に設けられます。つまり、投票箱を島から“運ぶ”必要があるのです。
投票箱はフェリーで運ばれ、選挙管理委員会で厳重に保管されます。そして7月10日の投票日夜、ほかの投票所の投票箱と合わせて開票されます。なお、2つの島それぞれ町役場の支所に期日前投票所が設けられますが、その投票箱も合わせて運びます。

ただ、海が荒れてフェリーが欠航すると、開票所まで投票箱を運べなくなります。
こうした事態を避けるため、投票日を“前倒し”して、投票箱運搬の時間的な“余裕”を持たせているのです。

ところで、奥尻島や利尻島、礼文島と、道内にはほかにも離島があります。
ただ、これらの島は、奥尻町、利尻町、利尻富士町、礼文町と、自治体の区域が島内で完結しています。
つまり、島の中に開票所が設けられるため、投票箱を島の外に運ぶ必要はありません。
こうした事情から、参議院選挙に限らず、繰り上げ投票は、道内では天売島と焼尻島だけで行われています。

投票箱を運ぶのは大変なんです

今回の参議院選挙では、繰り上げ投票の投票箱は7月9日の土曜日にフェリーで運ぶ予定です。9日に海が荒れるなどしてフェリーが欠航した場合は、10日、つまり、ほかの投票所の投票日に再チャレンジします。
では、海が荒れ続けた場合はどうするのか?
もちろん、選挙管理委員会は手を打っています。
海がダメなら空、なんとヘリコプターで運ぶそうです。
実際に1995年(平成7年)の知事選挙では自衛隊、2010年(平成22年)の町長選挙では道の防災ヘリが出動し、空路で投票箱を運びました。

フェリーを運航する「羽幌沿海フェリー」によりますと、羽幌近海で波の高さが3メートル、風速が15メートルを超えると、フェリーが欠航する可能性があるということです。
天売島と焼尻島にいる船員と連絡を取り合い、周辺の海の状況について情報を集め、出航の1時間前までにはその可否を判断します。

この時期のフェリーは1日2回、羽幌港を出発し、焼尻島・天売島と回って羽幌港に戻ってきます。
羽幌港の出航時間は午前8時半と午後2時。
10日の午後1時までに「出航できない」と判断すれば、羽幌町はヘリの出動を要請することになります。
基本的には道の防災ヘリが出動しますが、道の防災ヘリでも飛べないような悪天候だった場合は自衛隊ヘリの出番です。ヘリは2つの島で投票箱を回収し、羽幌町の総合体育館近くの空き地に着陸。そして、2つの島の投票箱は開票所に運ばれることになります。

その投票率 実は・・・

繰り上げ投票は、2つの島の人たちにとって、とても大切なものです。
午前7時に投票所が開きますと、次々と島の有権者が投票に訪れます。
島に1か所しかない投票所から離れて住んでいる人は車を使いますが、その多くは近所の人と誘い合って“相乗り”して投票所に来るそうです。
去年10月の衆議院選挙。焼尻島の投票所で聞くと、「島の生活がもっと豊かになるよう期待を込めて投票した」と話す人もいました。投票が生活に根づいていることがうかがえました。

一方、島の人たちは大半が顔見知りで、投票所で世間話に花を咲かせることも珍しくありません。投票所で久しぶりの再会、なんてこともあるそうです。投票所は厳粛な中にもどこか和やかな雰囲気が漂っているそうです。中には、「○○さんは今回、投票に来ていないけど、どうかしたんだろうか」と、投票をきっかけに知り合いを心配する人もいるとか。
島で大切にされている繰り上げ投票。それは投票率にも表れています。

全道一斉に行われる衆参の国政選挙、知事選挙で最近の投票率の状況をまとめてみました。2つの島の投票率は繰り上げ投票と期日前投票を合わせたものです。これをみると一目瞭然。2つの島の投票率は全道の投票率を大きく上回っています。

一方、グラフを眺めていると、なんとなく、投票率の増減は全道と傾向が一致しているようにもみえます。
例えば、参議院選挙でいえば、前々回・2016年(平成28年)の選挙と比べて、前回・2019年(令和元年)の選挙は、全道の投票率は3ポイント程度下がりました。この間、2つの島も4ポイント余り下がっています。
衆議院選挙や知事選挙も変動の方向性は同じで、その1つ前の選挙から2つの島の投票率が下がる場合は、全道の投票率も下がっているー。逆に、上がる場合も同様だということです。(※もちろん例外もあります)  
 
最近の選挙は、とくに支持政党を持たない無党派層の動向が勝敗のカギを握っています。
つまり、投票傾向を「読みにくい」のが実情です。
私たち・NHKは、今回の参議院選挙でも候補者の「当選確実」を判断します。
出口調査をはじめ、その判断材料はさまざまありますが、事前に投票率をどう見立てるかも要素の1つです。
2つの島の投票率をみれば、その2日後、全道の投票率を“予想”できる?
本当にそうであれば、私たちとしては「助かる」のですが・・・。

8日は午後7時に繰り上げ投票が締め切られます。
注目の投票率、NHKはなるべく早く、放送やインターネットの「北海道ニュースWEB」などでお伝えします。ぜひ、注目してください。

【取材】

最近の詳しい選挙結果については、
参議院選挙 北海道の結果を振り返る 平成以降の戦いの歴史は…」の記事をご覧ください。
また、過去の投票率の分析については、
北海道の参議院選挙 データで“深掘り” 投票率・期日前投票・出口調査…」の記事をご覧ください。

ページトップに戻る