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災害時、真冬の寒さから身を守るために―北海道まるごとラジオ放送後記―

  • 2024年2月14日

2月8日(木)の北海道まるごとラジオ、札幌放送局から飯島徹郎アナウンサーがお送りしました。テーマは、「真冬の寒さから身を守れ!厳寒の北海道からの報告」。能登半島地震から1か月あまりがたちましたが、被害にあった地域では避難所や在宅での避難生活が続き、「冬の寒さ」が大きな課題になっています。 冬に地震や津波が起きたらどのように寒さから身を守るか、その対策について、同じ雪国である北海道から考えました。 

ゲストは、タレントで俳優の千堂あきほさん、そして寒冷地防災が専門の日本赤十字北海道看護大学教授 根本昌宏さんでした。

千堂さんはヒマラヤに行った経験もあり、「寒さへの危機意識」を強く持っているそうです。
根本さんは、北海道北見市にある日本赤十字北海道看護大学で、14年前に学生たちと冬の避難所運営訓練を始めました。その後、行政の防災担当者や災害保健医療に携わる人たちと厳冬期の災害演習を重ねています。

災害時、真冬の寒さから身を守るため、雪国に暮らす私たちに出来ることとは。ポイントをまとめました。

低体温症から身を守れ!

寒い季節の避難生活で気をつけなければならないことの一つが、低体温症への備えです。
根本さんによると、低体温症とは、体の中心部の温度が35度以下になること。初期症状は、歯がカチカチとなったり、体がブルブル震えたりするそうです。軽症であれば、温かいものを飲んだり、温かい服を着たりしていれば軽快するそうですが、中等症以上になると意識が低下し、最悪の場合、命を失うということです。
中等症以上にならないために、予防のポイントは4つあると根本さんは言います。

① 保温…温かいものを着る・毛布や寝袋で暖まる
※備えのポイント!※
根本さんは、できれば備えてほしいものとして、「冬用の寝袋」を挙げていました。避難の際に携帯し、段ボールベッドの上で使えば、寒さから身を守れるとのことです。
※注意※
根本さんによりますと、毛布の代わりにからだをあたためるのに使われる「アルミシート」を使う際、汗をかくと内側が結露してしまう可能性があります。この水滴で下着やからだをぬらしてしまうと、低体温症の原因になってしまうことも!備える上で、注意が必要です。

② 加温…湯たんぽなどでからだをあたためる
※注意※
 低体温症の方は、胸など体の中心を温め、手足を温めないように

③ 遮蔽…建物の中・室内で過ごす

④ 食べ続ける…エネルギー・カロリーを補給。
※備えのポイント!※
根本さんによると、災害時など、ピンチの状態のときはのどがカラカラになるそう。「のどがカラカラなときでも食べられそうなものは何かな?」と考えて備えるのがポイントです!ちなみに、おすすめは「ようかん」!適度な湿り気・甘みがあって、ものによっては1本でごはん1膳ちょっと分のカロリーを補給できるものもあります。
カセットコンロなどで調理ができる場合は、具だくさんのおみそ汁や鍋料理などもおすすめ!

根本さん出演 明日をまもるナビ『冬の避難 「低体温症」から命を守る』 記事はこちら!

防災グッズ、その用意で大丈夫?

ゲストの千堂さんは、6年前の胆振東部地震も経験され、自宅で非常用のリュックを備えているとのこと。ただ、今回の出演をきっかけに改めて中身を確認してみると、気づいたことがあったそうです。

千)これが年々変わってくるもので、子どもが小さかったら「こういうもの」、しかも(子どもが自分で)抱えていけないから、親が抱えられるものを準備するとか。
そういうふうに年々変わっていきますし、果たして「活用できるか」って言われたら、これはもしかしたら「準備してないのと同じ」って言われるかもしれないなって今すごく感じました。

非常食や薬などの入れ替えが必要だったり、子どもたちも成長して「必要なくなったもの」が入っていたりしたということです。「これは、定期的なバージョンアップが必要だ」と
おっしゃる姿が印象的でした。

根本さんも、「時系列で、必要な防災グッズは変わっていくと認識することが大切。自助を高めることこそが、地域の防災力を上げることになる」と話していました。

真冬の避難所運営 実践から見えた課題とは

上川の南富良野町では、2月8日から9日にかけて、町の職員が泊まりこみで、実際の災害を想定した避難所運営の検証を行っていました。検証の中心となっている、南富良野町役場 防災マネージャー 林隆峰さんとともに、筆者・寺前が中継しました。

今回検証を行った、南富良野町の金山地区体育館では、災害時、最大で170人余りの避難が見込まれています。内陸で寒さが厳しく、真冬の最低気温はマイナス20度を下回ることもある地域。寒さへの備えはもちろん、テントや簡易ベッドなどを使い比べて、過ごしやすい環境作りの検証もされていました。
体育館の壁には、検証で気づいたことを書き出す模造紙が貼られています。その中から、冬ならではの2つの課題をご紹介します。

① 除雪の必要
この日、体育館周辺には1mほどの雪山ができるほど、雪が積もっていました。検証では、駐車場などの除雪はあらかじめ想定していましたが、いざ避難所を開設しようと思ったら、水道の元栓の場所が雪で埋もれて見つからなかったそうです。発見には30分ほどかかったということで、林さんは「今後は“印をつけておく”などの対策が必要だと感じた」と話していました。

② 屋外トイレ設置の難しさ

最大で170人余りの避難が見込まれる場所ということもあり、今回の検証では、体育館内のトイレだけでなく、屋外にも簡易トイレを設置しようと試みていました。3m四方のタープテントを使って3方を覆い、中にストーブを置いて設営する予定でしたが、テントが風で飛ばされてめくれてしまい、トイレの個室としての役割を果たせなかったそうです。

避難所でのトイレ問題について、根本さんにお話しを伺いました。

根)「避難生活はトイレに始まりトイレに終わる」という言葉を必ず使わせていただいています。車いすの方、小さな子どもたち、さまざまな配慮が必要な方々を含めて、誰一人として使えないトイレを作ってはいけない。
断水・停電していても、ふだんのトイレの場所の便器にビニール袋を2枚重ねて、1枚は下の水がふれないように、1枚は一人一人が処理するよう、中に凝固剤を入れて、しっかりとトイレが持続運用できれば、この避難所自体は十分機能すると思います。
また、体育館には、着替えの場所や機材庫・資材庫とか、ちょっとした小さなスペースがあるかもしれません。鍵がかかるようであれば、その中に簡易トイレを設置する。もしくは、外から全く見えないテントを用意して、体育館の空間の中にトイレを作ってしまうのも、1つの手だと思います。

※在宅避難でのトイレのポイントは?※

根)「災害トイレごみ」という考え方があります。これはおむつの処理とほぼ同じと思ってください。自治体によって分別が変わる可能性がありますが、基本的には燃やすゴミになるはずです。
ふだんのトイレの水は流れなくても、そこにビニール袋をかけて、携帯用トイレで用を足す。
そういった中できちんと持続していけば、体調を崩すことなく生活ができると思います。

真冬に災害が起きたとき、どうすれば身を守れるのか。この放送が、皆さんの考えるきっかけになれば幸いです。

聴き逃し配信中!2月16日(金)午後0:00まで

根本さん出演 明日をまもるナビ『冬の避難 命を守るポイント「TKB+W」』 記事はこちら!

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