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参議院選挙は“制度改革”の歴史です

  • 2022年6月22日

過去の参議院選挙では、「投票」や「選挙運動」といった選挙の基本的なルールでさまざまな制度変更が行われてきました。
いまの選挙では当たり前となっていることが、国政選挙では参議院選挙が最初だった、というケースが散見されます。その歴史をみていきます。

“投票しやすく”なりました

投票日当日の投票時間は、現在は午後8時までとなっています。(※地域の実情に合わせて、投票所単位でこの投票終了時間を早めることはできます)
この投票時間。以前は午後6時まででした。
NHKは投票日当日、投票終了に合わせてテレビやラジオで「開票速報」の放送を始めますが、その昔は、午後6時に開票速報を始めていました。
投票率の向上を目指して公職選挙法が改正され、全国規模の国政選挙としては1998年(平成10年)の参議院選挙から投票時間が2時間延長され、いまの午後8時までとなりました。NHKの開票速報も、いまは午後8時に合わせて始めています。

また、現在の「期日前投票」の前身にあたる「不在者投票」の条件が大幅に緩和されたのもこのときの参議院選挙からでした(※現在の不在者投票とは異なります。昔は投票日当日に投票できない場合、選挙管理委員会の窓口などで不在者投票をしていました)。それまで、入院や長期出張などやむをえない理由がないと認められなかった不在者投票がレジャーなどでも認められるようになりました。また、不在者投票の時間も3時間延長されて午後8時までとなりました。このように、“投票しやすく”なった節目の選挙が、この1998年の参議院選挙でした。

当時、NHKは札幌市内某区で夜の不在者投票を取材していました。平日の夜、スーツ姿のサラリーマンが仕事帰りに大勢、投票に訪れていました。この取材を担当した現在は旭川放送局にいるSデスクは、不在者投票の“使い勝手”がよくなったのが印象的だったと振り返ります。

なお、このときの公職選挙法の改正では、国政選挙で、▽海外に住む日本人が投票する「在外投票」と、▽遠洋漁業などの船員が船の上から投票する「洋上投票」も導入されました。この2つについては、実際には2000年(平成12年)の衆議院選挙から始まっています。

21世紀最初の国政選挙は、2001年(平成13年)の参議院選挙でした。比例代表でいまの「非拘束名簿式」が導入された選挙です。
この選挙では、参議院選挙としては初めて、在外投票と洋上投票が行われました。
在外投票では、海外に住む有権者が比例代表に投票できるようになりました。大使館や総領事館に出向いての投票のほか、郵便による投票や一時帰国の際に投票する方法もあります。
ちなみにこの在外投票。衆議院選挙と同時に行われる最高裁判所裁判官についてふさわしい人か審査する「国民審査」では投票できませんでしたが、最高裁判所大法廷はことし5月、海外に住む人の投票を認めていないことは憲法に違反するという初めての判決を言い渡しました。平成の制度導入から20年以上たった令和のいま、さらに変わろうとしています。
一方、洋上投票では、あらかじめ決められた市町村の選挙管理委員会から、出港前に専用の用紙を受け取り、公示後、船の上からファックスで選挙管理委員会に送って投票します。

期日前投票導入 そして…

次の大きな節目は、「期日前投票」の導入です。
国政選挙では、2004年(平成16年)の参議院選挙から導入されました。
それまでの不在者投票が大幅に改められ、投票方法が簡素化されました。
具体的には、不在者投票では有権者が投票用紙に候補者名などを記入した後、自分が署名した封筒に入れ、その封筒は投票日に投票所の職員が開封していました。
しかし、これでは手続きが煩わしく、投票の秘密が守られないという指摘もあったため、期日前投票では、投票日の投票と同じように、投票用紙を投票箱に直接入れる方式になりました。
また、投票の期間は、以前の不在者投票では選挙の公示日からとなっていましたが、候補者全員が出揃ってから投票できるようにするため、公示日の翌日から投票日の前日までに改められました。
なお、投票時間は以前の不在者投票と同じで、原則として午前8時半から午後8時までとされました(※実際には、自治体や投票所によって異なります)。また、期日前投票ができる人は、仕事や旅行、冠婚葬祭などがあるため投票日当日に投票ができない有権者で、これも不在者投票と変わっていません。

期日前投票は、その後、道内でも選挙のたびに利用者が増えています。これまでの期日前投票の詳しい分析は、こちらの記事「北海道の参議院選挙 データで“深掘り” 投票率・期日前投票・出口調査…」をご覧ください。

一方、2004年の参議院選挙では、体が不自由で投票所に行けない有権者に、投票への道を開く制度が導入されました。
その1つが、代筆による郵便投票を認める「代理記載制度」です。
投票の意思は示せるのに、重い病気のため投票所に行くことができず、投票用紙への記入もできない有権者は、あらかじめ、選挙管理委員会に投票を代筆してもらう代理記載人を届け出ます。その代理記載人は、有権者の指示通りに候補者名などを投票用紙に記入し、選挙管理委員会に郵送します。
また、寝たきりの人が郵便で投票できる制度も合わせて導入されました。
一方、海外に住む有権者の在外投票では、大使館などの在外公館で投票する方法と、遠方の人だけに認められていた日本へ郵便で投票する方法のどちらかを自分で選べるようになりました。
在外投票は、次の2007年(平成19年)の参議院選挙では、比例代表に加えて選挙区の投票でも行えるようになりました。

“ネット選挙” “18歳選挙権”

インターネットを利用した選挙運動が解禁されたのも参議院選挙でした。
2013年(平成25年)の参議院選挙から、ホームページやブログ、ツイッターやフェイスブックなどのSNS、動画投稿サイトを使った選挙運動が全面的に解禁されました。ただ、電子メールの利用は政党や候補者だけに認められ、一般の有権者は禁止されました。

 

一般の有権者は、電子メール以外であればインターネットを利用した選挙運動ができますが、▽政党や候補者から届いた選挙運動用の電子メールを転送することや、▽選挙運動用のホームページを印刷して配布することなどは禁止されています。
一方、根拠のないひぼう中傷や、候補者や政党をよそおってうその情報を発信する「なりすまし」などの問題が生じるおそれがあることから、▽ホームページなどには、メールアドレスなどの連絡先の表示を義務づけているほか、▽政党や候補者だけに認められている電子メールには、連絡先に加えて政党名や候補者名の表示も義務づけ、違反には罰則を科しています。
こうしたインターネットの選挙運動によって、若者の投票率向上や政治参加が期待されています。

前々回・2016年(平成28年)の参議院選挙では、選挙権を得られる年齢が20歳から18歳に引き下げられました。選挙権年齢の引き下げは、終戦直後の1945年(昭和20年)の法改正でそれまでの25歳から20歳となって以来で、道内では18歳・19歳として9万6000人余りがあらたに選挙権を得ました。この参議院選挙では、若者の投票率を高めるための取り組みが盛んに行われ、道内各地の高校や大学で「模擬投票」が行われました。

また、若者に選挙の現場や仕組みを知ってもらおうと、期日前投票所で投票に来た人の案内をボランティアの高校生にやってもらったり、18歳と19歳の若者にボランティアで投票所での事務作業をやってもらったりといった取り組みもみられました。
さらに、少しでも投票しやすい環境を整えて投票率の向上に結びつけようと、若者が多く集まる大学の中に期日前投票所を設ける動きが広がりました。このほか、ショッピングセンターや駅といった人が集まる場所に期日前投票所を設ける動きもありました。
ただ、こうした取り組みにもかかわらず若者の投票率は低調で、10代の投票率は43.38%と、道内全体の投票率を13ポイント以上も下回りました。10代の投票率はその後の選挙でもなかなか改善していません。

一方、この参議院選挙では、投票率向上に向けて、投票しやすい環境の整備も進みました。まず、投票日当日、事前に決められた投票所以外でも投票可能な「共通投票所」を、駅の構内やショッピングセンターなどに設置できるようになりました。

ただ、道内で導入したのは函館市だけで、全国をみてもほとんどの自治体は設置しませんでした。この状況はいまも変わらず、今回の選挙で共通投票所を置くのは道内では函館市だけです。
一方、期日前投票は、午前8時半から午後8時となっていた投票時間を、各自治体の判断で前後それぞれ最大で2時間拡大できるようになりました。道内では、北見市が1か所の期日前投票所で閉鎖時刻を最終盤の2日間だけ、1時間遅らせて午後9時としました。

このように、投票環境は徐々に改善されてきました。選挙運動も時代に合わせて変わってきています。今回はコロナ禍では初めての参議院選挙ですが、去年10月の衆議院選挙で始まった「郵便投票」も行われます。(※郵便投票については、「ひとくちメモ」で詳細を掲載します)

しかし、その一方で、投票率は依然として低いのが現状です。
参議院選挙の北海道選挙区でいえば、平成最初の1989年(平成元年)の選挙は70.90%でしたが、前回・2019年(令和元年)の選挙は53.76%でした。かつては70%を超えていた投票率は、ここ3回は50%台が続いています。
わたしたちの貴重な一票。ぜひ、むだにしないようにしてください。

取材 札幌放送局・渡邉健
2019年入局 函館局を経て千歳支局で新千歳空港の取材を担当
去年の衆議院選挙では、長期出張のため不在者投票を初めて体験

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