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羽幌町 焼尻島の「めん羊牧場」8月に閉鎖へ

  • 2023年7月3日

羽幌町の離島、焼尻島にある町営の「焼尻めん羊牧場」が、ことし8月末で閉鎖されることになり、人口163人(ことし5月末時点)の島が、揺れています。焼尻島といえば青い海と緑の牧草を背景に羊が放牧される美しい風景。観光の柱にもなっていただけに、地元には、波紋が広がっています。

【高級品種「サフォーク」を飼育している牧場】
焼尻島と言えば、日本海に沿って広がる緑の牧草地帯が、スコットランドの風景に似ていると評判で、「めん羊牧場」は、夏には多くの観光客が訪れるきっかけにもなっていました。この牧場で育てられている羊は高級品種の「サフォーク」。日本海からの潮風が運ぶ塩分やミネラル分が多く含まれた良質な牧草を食べて育つため、肉質が柔らかく、臭みも少ないと食通から人気が高く、2008年に開催された北海道洞爺湖サミットでも提供されたほか、首都圏の高級レストランでも使用されているブランド羊肉です。

【めん羊牧場の始まりはニシンの不良対策】
この牧場の始まりは、1962年。ニシンが不漁になってしまった漁業者への支援対策として、めん羊を漁業者に貸与したことがきっかけでした。それからおよそ60年にわたり町営から民間、そして再度、町営に戻りながらも半世紀以上にわたり運営を続けてきました。しかし、ことし8月末で閉鎖されることになりました。

【閉鎖の議論のきっかけは飼育員の退職】
焼尻島は、小さい頃から何度か家族旅行に行ったことがあり、私にとっても思い出の場所。毎年8月には焼尻島で、サフォークの肉をふるまう「めん羊まつり」が開催され、全国各地からの多くの観光客でにぎわいっていました。しかし、去年9月からことし3月にかけて、飼育員3人のうち2人が退職、残る1人も「めん羊まつり」が開催される、ことし8月を最後に退職することになったのです。羽幌町は、担当課の職員を焼尻島に派遣し対応したり、島民のサポートを受けたりしながら、町営の牧場を維持してきましたが、赤字が続いていたこともあり、6月上旬の町議会の委員会で、閉鎖する意向であることを報告。8月末に閉鎖されることになりました。

【愛着を感じている地元の人たちの思いは】
こうした事態を受けて、私が取材したのは島でゲストハウスを営んでいる奥野さん夫婦。旅行客は「サフォークを食べにきた」とか「牧場を見るのが楽しみ」と話す方が多いそうで大きな衝撃を受けていました。

「私たちには、牧場が閉鎖になることが、ほぼ決まりになった段階で報告がありました。とても残念です。町の担当課の職員が骨を折ってくれたのもわかりますし、牧場自体が赤字で、飼育員が確保できなかったのは事実ですが、お金では、はかれない価値があったと思います。事態が、こうなる前に島民に相談してほしかった」(奥野さん夫婦)

地元の観光協会の布目一也支部長も「今回の件は閉鎖が決定になってから聞きました。島にとっては観光の柱で閉鎖は大変な痛手。我々としてもどんな形でもこの風景を残してほしい」と話していました。

こうした声を聞き、町の担当者を改めて取材すると苦しい胸の内を明かしてくれました。

「議会を通して、決定していない事項を、前段階で島の人たちに報告することは順序としてできない。観光の大事な柱であることは重々わかっているが、飼育されている羊たちの命のこともある。これからの飼育は、どうやっていけばよいのか。我々も、職員を派遣しながら、なんとかやってきた。力不足と言われれば、しかたないが、閉鎖の決定は変わらない。8月末を目標に、随時、羊を出荷している状況です。いつというのは今の時点では決まっていないが機会があれば島民に改めて説明したい」(担当課の職員)

『町営牧場としての維持についてはこだわらないが、羊のいる景観を今後も残してほしい』
『価値のある焼尻ブランドのサフォークを残してほしい』

こうした思いを抱える島民の皆さんは、町との建設的な話し合いの場を求め、これから、署名活動などを行う予定です。牧場の行方はどうなるのか、今後も取材を続けたいと思います。

留萌支局 土田史世

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焼尻島 めん羊牧場8月末閉鎖へ 飼育員が確保できず|NHK 北海道のニュース

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