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【チエノバ】荻上チキさん「依存症を"医療の問題"とする体制作りが必要」

2017年11月13日(月)

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 2017年11月2日放送
 WEB連動企画“チエノバ” “依存症”—家族はどうすればいい?


特定の物質や行動に不適切にのめりこみ、健康や生活に支障が生じているのにやめられない“依存症”。本人がなかなか問題を認めなかったり、治療を勧めても受け入れようとしなかったりするのが特徴です。そのため、疲弊し、追い詰められていくのが身近にいる家族。その背景には、社会のどんな問題があるのでしょうか。放送後、チエノバコメンテーターの荻上チキさんに詳しくお話を伺いました。

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―― 近年、メディアでアルコール依存、薬物依存ギャンブル依存など、“依存症”という言葉を耳にする機会は増えてきました。しかし、まだまだ依存症に関する国の対策は遅れているようにみえます。それはなぜなのでしょうか?

今までは、多くの依存の問題というのは、あくまで「個人的」なものだとされていたことに加えて、依存症が治療の対象だと思われていなかったということがあります。あるいは、特に薬物依存がそうなんですが、医療ではなく犯罪や更生の対象となっていて、治療の対象になっていなかったということがあります。だから対策がいろいろと遅れてしまった。ただ、これからは、例えば再犯防止法であるとか、あるいは依存症対策の議論を進めていこうというような気運は出てきているので、前に向こうとしているタイミングではあるんですね。だからこそ、より包括的なケアが必要だということをしっかりと認知させていくことに加えて、依存症を医療の問題にしっかり繋げていきやすいような体制作りが大切になってきますよね。0次予防の「ダメ絶対」ではなくて、それと同じか、それ以上に、例えば町にポスターを貼って「もしお悩みの方はここに」のような、相談窓口につなげる掘り起こしに、力をいれていくべきだと思います。


―― 今回の放送を通して、依存症者の家族は、周囲の偏見や無理解によって追い詰められてしまうことが多いように感じました。“依存症”に関する正しい知識が広がれば、家族が孤立することも少なくなるのでしょうか?

なぜ、正しい知識に行き着かないのか、広がっていかないのかというと、まずその知識を伝えられる人が少ないということがあげられます。それはメディアなどの発信力がある人たちが、そもそも依存症に関する誤った知識を身につけてしまっているために、その偏見を取っ払うことをしなくてはいけないのが1点ですね、これは知識ベースの話。
もう1つは、やっぱり規範ベースの話です。「家族が支えるべきだ」という考え、「決して離れるべきではない、困難があっても」というような価値観、それこそ「病める時も健やかなる時も」とか、「何か困っている時に手放すなんて、それはルール違反だ」というような発想がありますよね。だけど「他人なんだから、どんなに約束したって条件が変わったら無理です」とか、「自分だけでは無理なので、誰か他人の手を借りたいんだけれど、その他人の手というものにどんなものがあるか分からない」という状況だと、それはやっぱり追い詰められてしまいますよね。それを社会規範にならって「頑張れ」というふうに押し被せてしまうような状況があるんですが、規範や心の持ちようじゃ解決しないことを認めたところで、ようやく社会が進んでいくんですね。ですから、何が辛いのか、そのことに今しっかりと耳を傾け、それを規範で押し込めてきた事柄を制度やシステムできちんと対応する。そうしたことを整えることが、必要な状況だなと思います。



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