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【シリーズ 依存症】「罰だけでなく治療を」クレプトマニア(窃盗症)

2017年11月01日(水)

精神科医 竹村道夫

  竹村道夫(赤城高原ホスピタル 精神科医)


シリーズ依存症第2回は『クレプトマニア』を取り上げました。
実は、クレプトマニアは日本では、依存症の中でも研究が遅れ、治療機関や支援体制が不足している分野だと言われています。
そんな中、クレプトマニア治療に取り組んできたのが、赤城高原ホスピタルの精神科医・竹村道夫さんです。これまで、1600名の常習窃盗患者を診察してきた竹村医師によれば、典型的なクレプトマニアの患者には共通点があるそうです。

 

竹村 医師の話です。



多数のクレプトマニア(窃盗症)の患者さんを診察して、気がついたことがあります。
それは、「彼らの多くは、これまでの人生で、自分には責任があるとは思われない、割に合わない役割を背負わされた体験者である」ということです。

それは幼児期の家庭環境に限らず、持って生まれた容姿・体質・障害や病気、イジメ被害、性的トラウマ、犯罪被害・・・等々、「こころの痛み」の原因になりうるものは様々です。

そして患者たちの多くは、そのような体験とこころの痛みについて話し、理解される機会をもってこなかったようにみえます。

自分の不幸な運命を考える。
そういう時、封印していた古い心の傷がうずきだす。
「人生において不利な役割を押し付けられてきた。そして充分に報われていない」という無意識が彼らを突き動かすとしたら、彼らが万引きに走る行動は、ある程度は理解できるのではないでしょうか。

これを「独善的な正当化」「歪んだ復讐感」などと呼ぶこともできるでしょう。
でも、そんな常識的な決めつけをせずに、“共感性”を持って彼らに接することが、治療の上ではとても大切です。

時間をかけて、かたくなな心を解き放ち、彼らのこころの奥底にある痛みを理解し癒すことができれば、いずれ彼らは、「バランスの取れた責任感」を取り戻すのです。

 

ハートネットTVでは、11月に三夜連続で「依存症」を特集します。
『ハートネットTV』 シリーズ依存症 10月31日(火) 第1回 ギャンブル依存症―孤立する当事者と家族―
 11月1日(水) 第2回 クレプトマニア―罰だけでなく治療を―
 11月2日(木) WEB連動企画“チエノバ”“依存症”―家族はどうすればいい?
■ お役立ち情報「依存症・アディクション」
 特設サイト「これって依存症?~“やめたいのにやめられない”あなたへ~」

コメント

「バランスの取れた責任感」という言葉が用いられていますが、感覚的責任感というのはサバイバーズギルド等も含めた過剰な責任感も含めた話だから「バランス」問題になってしまうのであって。あらゆる犯罪者に共通して見られるのは、むしろ自律的な社会的責任判断力の欠如が問題であり、感覚的な責任感という無意識な情動バイアスだけで行動が決定してしまうという、本質的な自発的行動選択、自律的論理検証性が無いから無意味な行動に陥ってしまう。本来責任感というのは「バランス」問題ではなくて、「自律」の問題として扱わなければならないはずです

投稿:srand4000 2018年01月15日(月曜日) 10時52分

クレプトマニアの当事者です

本日の番組、見ました。

当事者として、1番最後に映っていたド派手な患者の
取材とかではなく、せっかく病院まで取材に行って下さった
のだから、もっと医者の話しやクレプトマニアが抱える
課題等々の放送をして欲しかった。

次回は、より質が高く自助グループ等々が全国的に
広まりつつあるなど、より具体的な援助が求められる
場所があるなど、当事者が求めているような情報を主体とした
番組構成での放送を期待します。

投稿:スミレ 2017年11月01日(水曜日) 20時55分