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【認知症ケア】本田美和子「主体的に参加できる介護システム作りを」

2017年04月26日(水)

ハートネットTVロゴ認知症ケア ユマニチュードは地域を変えるか?」
 2017年4月26日(水)夜8時[2017年5月3日(水)昼1時5分]

認知症の行動・心理症状と呼ばれる暴言・暴力などの症状が起こりにくくなると言われているケア技法「ユマニチュード」。急速な高齢化で介護人材が不足する中、福岡市は、認知症ケア・ユマニチュードを施設や家庭に導入。負担を軽減し、地域の介護力アップをはかる試みの行方を伝えます。


ご出演いただいた本田美和子さんに、番組収録後、お話をうかがいました。


写真・スタジオの本田美和子さん.png【本田 美和子さん/国立病院機構 東京医療センター 総合内科 医長】ユマニチュードを紹介する活動に取り組む


――ただでさえ負担を感じている介護の現場に、じっくり対応するユマニチュードを広げるのは大変なのではないでしょうか?

これまで、ユマニチュードを導入する際、どの現場でもそういった声は上がってきました。
しかし、嫌がる相手に無理矢理入浴させようと2~3人で30分かけてできなかったことを、ユマニチュードの技術を用いた良好な関係性を確立させることによって、穏やかに受け入れてくださるようになる変化を数多く経験しています。その結果として、これまで行なっていた、いわゆる力づくでのケアの時間が短縮される、というケースが少なくありません。時間の短縮だけでなく、相手に受け入れてもらえた、という事実は、従来のまるで格闘のようなケアとの訣別となり、職員のストレスの軽減にもつながります。自分たちが良いケアを提供したいと思っていてもそれが実現できない状況が、職員の燃え尽き症候群に繋がってきていました。それが、よい関係を構築できた相手から笑顔で「ありがとう」と言われようになることで、仕事への生きがい、意欲を取り戻したという経験を今回の番組でも紹介していただいています。一見手間がかかるように見えますが、実は、もっとも効率的なやりかたでもあります。もちろん、この技術を正しく習得するには、時間もかかりますし、経験も必要です。ですから、初めてすぐに結果がでるものはなく、職場全体で時間をかけて取り組んで行くことが必要だと考えます。


――なぜ、聞き取り調査で負担の軽減結果が出なかったのでしょうか?

さきほど答えしましたように、正しいケア技術の習得には時間がかかります。ですから、わたしたちは研修直後の調査では、ユマニチュードを学んだグループでは、負担感が増える可能性を心配していました。しかし、従来のケアを行なったグループとの差がなかったことは、過剰な業務と感じた方々がいなかった、ということで安心しました。ケアは継続的なものなので、今回番組でご紹介した1ヶ月目の結果だけでなく、継続的な評価をしていきたいと考えています。とくに、ケアの効果に関する評価については、その検証方法の検討も今後の課題です。

一方、家庭へ向けた取り組みについて私たちの研究では、介護負担感、認知症の行動心理症状とも改善しました。今回、福岡市の市民講座の受講者には、受講後、3か月に渡って、ご自宅に1ポイントアドバイスを示した葉書をお送りするなど、取り組みが継続的なものになるような仕組みを工夫しました。家庭における介護力の向上は、施設の負担を軽減し、地域全体の介護力を向上にもつながります。多くの方々が主体的に参加できる介護のシステム作りに役立てることができればと考えています。


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