本文へジャンプ

【出演者インタビュー】荻上チキ×南野森「一歩先の想像力を」

2017年02月15日(水)

20160915_chienoba.png2月9日放送(2月16日再放送)
WEB連動企画“チエノバ”「暮らしと憲法」

『ハートネットTV』では、1・2月に4回にわたり様々な暮らしの現場から「憲法」について考えてきました。2月のチエノバは、その総まとめ!憲法学者の南野森さんをゲストに迎え、みなさんのご意見をもとに番組を放送。

収録後、まだまだ話足りないコメンテーターの荻上チキさんと憲法学者・南野森さんにお話をうかがいました!
写真・南野森さんと荻上チキさん

《左:憲法学者・南野森さん プロフィール》
九州大学法学部教授。憲法や社会の問題についてツイッターでも積極的に発信。


《右:荻上チキさん プロフィール》
評論家。ニュースサイト「シノドス」編集長。メディア論をはじめ、政治経済や福祉、社会問題から文化現象まで幅広く取材し分析。



――番組では、いつものように「憲法」についてカキコミの募集を行いましたが、いつもよりカキコミの数が少ない印象を受けました。それは、普段暮らしている中で「憲法」に対し距離を置いてしまっていることを象徴しているように感じますが、いかがですか。

 南野  その通りだと思います。「憲法」は、困っている時に直接、身近で助けてくれるものではないんですよね。直接助けてくれるのは役所や法律、行政ですので、生活する中で実感として掴めていないんだろうなと思います。だけど、憲法は目指す理想像や理念を語っているので、憲法がなくては困る、ということは理解してほしいですね。

  人は生きているうちにいろんな当事者になっていく。高齢者になる、病気になる、親になる、年を重ねていくうちに障害者になるかもしれない。あるいは、当事者の家族、LGBTや障害のある子どもの親になるかもしれない。そういう風に何かの当事者にどんどんなっていく中で、当事者性を生き「より豊かに暮らしたい」「幸せになりたい」と考えていく時に、ようやく社会の仕組みを知っていくと思うんです。そこで、当事者の権利がどれぐらい満たされているのかを考える上で、憲法の掲げている社会がどういうものなのかを知る機会が必ず訪れます。そうしたタイミングが来る前に「憲法」のことについて考えていても急ぎすぎていないと思うんです。もし、当事者じゃなかったとしても「友だちや家族が当事者になっていたらどうだろうか」という観点から憲法や法律を巡る議論をウォッチして欲しいと思いますね。

 南野 
 僕も同感ですね。大学でLGBTのことを学生に話すと「自分たちは差別しない」と言うけれど、すぐ、「自分の周りにLGBTの人はいないし、自分もLGBTじゃない」、となって、どこか他人事になるんですよね。そこで多くの人は止まっちゃうんだけど、チキさんがおっしゃったように、将来、異性愛者と結婚し、子どもが生まれたとして、その子どもがLGBTかもしれない。そういうちょっと一歩先の想像力を持つと、少数者の問題についての見え方が変わってくると思うんです。だけど、憲法にそれがどう繋がるかは、もうワンクッションもツークッションもあるので、なかなか難しいところですね。

 荻上  LGBTでいうと当事者が周りにいないというのは、確率的に言えばあり得ないんです。ただ自分にカミングアウトされていないだけで、近所や学校のクラス、サークルにいたりする。でも自分の親密圏に入ってこないと、その先にある公共の問題として考えられない。大人になっていく過程で親密圏にない問題でも、公共の問題として考える想像力を身につけることは、政治に対しても、よりたくましく考える事ができるようになると思うので、いろいろと想像力を膨らまして欲しいですね。



――お話にも出てきたLGBTの問題など、現在、多様な社会が求められています。
憲法が施行された際に想定されていなかった問題は、どのように解決すれば良いのでしょうか。

 南野 : ドラえもんのポケットじゃないけれど、憲法には13条に「幸福追求権」がわざと入れてあるんです。のちのち新しい権利が必要になった時に、そこをとっかかりに法律でカバー出来るようにって。だから大抵の人権問題は法律でカバー出来るはずなんです。

 荻上 : 例えば同性婚を認める社会にしたい場合、手続き上、憲法を変えるよりも立法化すること、社会問題化して共感を呼ぶ方がスピード感としては早い。何より今の議会制民主主義の理念からしても、世論に対して声をあげ、いろんな人の想像力を鍛えることによって、制度をそのつど作り上げていくという、今出来ることをいろいろと模索した上で憲法の議論にたどり着くという事でも遅くはないのかなと思います。

 南野 : やれる事を先にやりましょうっていう話だと思います。おっしゃる通りだと思いますね。



――
今年で70年を迎える「日本国憲法」と今後、我々はどう向き合っていけばいいのでしょうか。

 南野     日本社会の戦後70年を見ると、いろいろな問題を抱えつつも、人権という観点からすると、それなりにいい国だったと思うんです。それは、戦後新憲法が出来たということの1つの結果という気がします。だから、憲法の理念に従った国づくりをこれからももっと進めるのが良いと思いますが、もしかしたら今の憲法では人権保障のために不十分だっていうことであれば、憲法を変えればいい。いずれにしても人々が住みやすい、そういう社会にどうやったらなっていくのかを考えていきたいなと思います。

 荻上  憲法は、国民側から主に権力者などに対して、どういう風に国づくり、政治、法づくりをして欲しいのかという具体的な権利を欲する時に強い味方になってくれます。その欲する権利が現行憲法で与えられるのか、そうじゃないのかということを抜きにして改憲・護憲の議論をしてもまったく意味がないと思うんです。そもそも私たちがどんな社会をつくってこれたのかをしっかりと振り返る作業が憲法論議の前に必要なんだと思うんです。

 

コメント

そうですね。

投稿:前田いが子 2017年03月02日(木曜日) 20時47分