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【対談 2016】ディジュリドゥ奏者・GOMA(高次脳機能障害)×脳科学者・茂木健一郎(前編)

2016年09月28日(水)

【対談 2016】ディジュリドゥ奏者・GOMA × 脳科学者・茂木健一郎 (前編)
20160928_003.jpg ▼症状を自覚するとき
 ▼絵を描くことは脳のエクササイズでもある
 ▼絵の変化は脳の変化



 『ハートネットTV』(2016年9月29日放送)
 傷ついた“脳” 見つけた“力”ディジュリドゥ奏者・画家 GOMA×脳科学者 茂木健一郎

番組で対談をしたディジュリドゥ奏者で高次脳機能障害のGOMAさんと脳科学者の茂木健一郎さん。こちらのブログでは2回に渡って、番組で紹介しきれなかった対談内容の一部を紹介します。

 症状を自覚するとき



 20160928_001.jpg  茂木   
 “高次脳機能障害”って、GOMAさんご自身もそうだったと思うんですけど、みんな「こういうことがあるんだ」ということ自体を知らないまま、いきなりそういうことになっちゃう。不安だったんじゃないですか。
 GOMA  最初は、(突然意識を失ったりする)“脳けいれん”の後遺症とかを自分が持っていること自体に気がついてなかったんですよね。それまでは全然なかったし。知らなかった時はよかったんですけど、知ってからが…その状態のこと、自分で全く認識できていないから、すごい不安なところではあるんですけど。
   茂木    そういう状態があるっていうふうに、思ってなかったってことですよね。
 GOMA  そう。気づかないうちに倒れて、気がついたら、顔をぶつけて腫れているとか、すごいケガしていて。「あれ、俺、なんでこんなケガしているんだ?」みたいなのが結構続いていて。意識が向こうに行っている時のこと、自分は全く覚えていないから、3、4年ぐらいたった時に、1回すごい大きな脳けいれんが起こって、救急車で運ばれたんですよ。その時に初めて、「そういう後遺症があるんだ」というのに気がついたんですよね。
7年目にして、ようやくちょっとその前触れみたいなのが、自分の中でも認識できるようにはなってきたんですけど。

20160928_002-1-1.png   茂木  
 
体のイメージ、情報が把握できないかもしれないってことも脳の画像からは見えるんですけど、そこらへんどうですか。自身の体。
 GOMA  最初はもう、リアルに左半身に力が入らなかったりとか、そういう感じがあったけど、最近はちょっと疲れてきているような時にそういう症状がまだあって。脳けいれんのあととか、体をスペースとして捉えている自分みたいなのもいて。
   茂木    体をスペースとして捉えてる?
 GOMA  体っていう空間の中に自分がいるっていうような。なんかそういう感覚になる時もあるんですよね。
   茂木    なるほど。そういう時、例えば、運動してる時ってどういう感じになるんですか。自分の体が、自分が支配しているものという感じがしないってことですか。
 GOMA  そうそうそうそう。自分が思ったように動かせない。そこの歯がゆさみたいなのは、やっぱり常にありますね。で、しゃべるのとかもいまだに自分が思ってるよりもワンテンポ遅れて出てくるような感覚もあるし。とにかく行動とかが全部自分が思っているよりワンテンポ遅くなってる。
   茂木    ご自身でも、ちょっと自信ないなって思っちゃうこともある?
 GOMA  やっぱりある。特に脳けいれんとかが来ると、それまでリハビリ頑張って、バーっと上がったものが、意識を失うと一瞬にしてまた、「あれ?何やってたかな?」っていうところから始まるから。しばらくはずっと、不思議な世界に連れていかれるっていうか、時間の感覚とかが本当によく分からなくなるし。空間もちょっとよく分からなくなる。でっぱりがへこんでいるのと、逆相して見えるときがあって、突き指とかすごいするんです。へこんでいると思って指を入れたら、出っ張っていて、バキッてきたりとか。よくなってきたかなと思ったらまた落ちての連続が、ずっと続いているような感覚はありますね。
   茂木    そうですか。そういうでっぱりとへこみが逆転するような錯視図形なんかもあるんで、人間の脳にとってその判断って、比較的難しいんだと思うんですよ。ですから、ちょっとした回路の不調、バランスでそういうことが起こることはあると思うんですけど。
逆にそれがひょっとしたらこういう絵のユニークさにつながってるかもしれない。作家のドストエフスキーもね、意識を失う前にいろんなものを見るって書いているけど。ドストエフスキーはこういう絵を描いてはいないんで、(見ていたのが)どういう世界だったか分からないけど、ひょっとしたらGOMAさんが描いているものと通じる何かだったかもしれないですよね。
20160928_002-2-1.png GOMA  意識をなくして、また戻ってきている経験がある人と話をすると、結構合致するポイントっていうのがあるんですよ。
   茂木    そうなんですね。そう考えると、本当に貴重なデータでもあるなって。もちろん絵としてすばらしくて、芸術作品であると同時に、「意識を失ってまた戻ってくるっていう経験はこういうもんなんだよ」っていうのを、経験したことない人に教えてくれる。すごくすばらしいなって思うんですけどね。
 GOMA  茂木さんにそんな風に言ってもらえるのは、むちゃくちゃうれしいです。



 絵を描くことは脳のエクササイズでもある


20160928_003.jpg   茂木    あと感情ですね。記憶とすごく結びついている感情が整理できないと、いろいろストレスだとかイライラとかにつながっていくんで、記憶と感情の整理を、おそらく絵を描くことでしているのかなっていうふうに思いますけどね。
 GOMA  それはあると思いますね。
   茂木    どうですか?気持ちっていうか、感情の落ち着きというのは、絵を描いていて。
 GOMA  描いていて落ち着くのもありますけど、描かない日が続くと、おかしくなってくるんです。

   茂木    おかしくなってくる。どんな感じになるんですか?
 GOMA  何やってるかわけ分からなくなってくる。すべてが途中途中で、次々行っちゃうんですよ。これをやってたと思っても、次になんか脳に降ってくると、そっちに行っちゃって。それをすぐに、追っかけて、追っかけて、追っかけていっちゃうから、全部が何やってるかよく分からなくなってきて、わーってなる。
   茂木    そこらへんはね、“前頭葉の統合作用”ってわれわれ言っているんですが、いろんな情報とか行動のあり方をまとめ上げて、ちょうどおにぎりをギューッと結んでまとめるみたいにまとめているのが、前頭葉なんで。事故の後遺症で、ちょっと前頭葉が元気なくなってるのかなと思うんですよ。そのせいでそういうことが起こると思うんですけど、絵を描いているとそれが改善されるということは、絵を描くことが前頭葉をまとめ上げるきっかけになってるのかなって。
 GOMA  うんうんうん。
   茂木    確かに絵を描くって、見て、手を動かしてっていう形で、いろんな情報を統合しないと描けないじゃないですか。だから、動作自体はそんな激しくないんですけど、前頭葉にとっては、意外といいエクササイズになってるのかなと。
 GOMA  あー、なるほど。
   茂木    なんかジムに通ってるみたいな。
 GOMA  確かに。



 絵の変化は脳の変化

 

   茂木    僕、GOMAさんの絵を見ていると、なんか初期のころの絵から、だんだんだんだん変化していって、それがGOMAさんの脳のよみがえりっていうか、回復とすごく重なっている気がして、非常に興味深かったんですけど。ご本人としては、絵が変わってきたことについてはどう感じてるんですか。

 GOMA  たまにこういう絵を並べるような機会をもらって見ると、そう思うかなぐらいの感じですね。常に感覚的には同じ感覚で描いてると思うんですよね。描き出したころのことって全然覚えてないけど、気持ち的にはそんなに変わってないんじゃないかなと思うんですけど。でも、具体的な形がだんだん出てくるようになったりだとか、そういうのって脳の発達、回復とすごく関係はあるような気はします。

   茂木    ご自身の感覚としてってことですよね。

 GOMA  そう。

   茂木    GOMAさんが絵を描いているときって、自分の中のイメージは動いてるんですか?

 GOMA  いや、動いてない。

   茂木    動いてない。1つの止まった状態。

 GOMA  止まった感じ。でも、描くとみんなに動いてるように見えるっていうのをすごく言われます。

   茂木    うん、なんかうねっているような感じっていうか、ものすごい動きを感じる。どんどんどんどん深い世界に入っていってるような、そういう印象が僕あるんですけど。
GOMAさんの絵は基本的に、自分の中にあるものを表現されてるんで、絵が変わってきたってことは、中に浮かぶイメージが変化してきてるってことだと思うんで。おそらく、脳が次第に回復すると同時にイメージ自体も変化してきて、絵の変化につながってると思うんですけど。
 GOMA 
 
(絵を見ながら)あれはちょうど最近2、3か月前ぐらいに、また倒れた時に、倒れて意識戻った時に、点じゃないのを初めて描いたんですよ。“オーロラ”って僕は名付けたんですけど、初めてああいうのを描いた。これ見た時にちょっとなんか、脳の変化が最近、7年目にしてなんかが変化したのかなって思ったんですよ。

20160928_004.png


後半に続きます⇒【対談 2016】ディジュリドゥ奏者・GOMAさん(高次脳機能障害)×脳科学者・茂木健一郎さん(後)



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