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【出演者インタビュー】矢野恵美さん「子どもの最善の利益への配慮を」

2016年07月01日(金)

20160701_yano001.jpg6月29日放送(7月6日再放送)
密かに産まれる命 女子刑務所 出産・育児は…-
にご出演された矢野恵美さんにメッセージをいただきました。



<矢野恵美さんプロフィール>
琉球大学法科大学院 教授

 

 

――受刑中の母とその子をとりまく現状や背景について、どうお感じになりましたか?

番組の中で、少しお話させて頂きましたが、日本では、法令の定めはあるものの、刑務所内での子育てはほとんど活用されていません。これは、母親である受刑者が収容されている女性の刑務所自体の問題―例えば過剰収容やスタッフの若年化等―が山積しています。

しかし、女性の刑務所の課題については、近年、徐々に検討、改善が加えられるようになってきました。VTRにもありましたが、私も参加させて頂いている「女子刑務所のあり方研究員会」の提言を契機とした「女子施設地域支援モデル事業」で医療や福祉の専門家が入ったり、刑務所での母親教育等も始まっています。女性受刑者のニーズを把握し、女性の刑務所のあり方について考え、対応するということを引き続き進め、その上で、今後、子ども達の現状やニーズを把握し、多職種連携しながら、子ども達への配慮も進めて頂きたいと思っています。

 

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――番組内でお伝えしきれなかった大切な視点がありましたら、教えてください。


子どもの権利条約や、バンコク・ルールズのような世界的な動向、それに応じた海外の取組みです。

「子どもの権利条約」(日本も1994年に批准)からは、「子どもの最善の利益」という観点から子どもの措置が考えられるようになってきました(3条)。そして、子どもの権利は例え親が受刑していても同じように保障されるべきであると意識されるようになりました(9条の親子の分離の問題等)。

番組ではお話しできませんでしたが、2010年に国連総会で採択され、法務省も尊重している「女性被拘禁者の処遇及び女性犯罪者の非拘禁措置に関する国連規則(通称バンコク・ルールズ)」というものもあります。条約のように法的拘束力はありませんが、そこには、子どもの保護者としての女性受刑者の立場が強調され、受刑者の子どもについても「子どもの最善の利益」が考慮されなければならないと書かれています。

そして、海外での取組みの多くは、番組でもお話したとおり、子どもの最善の利益への配慮に基づいて行われています。刑務所の中での子育てが推奨されているわけでは決してなく、親である受刑者の申請を受けて福祉機関がケースごとに調査をし、「その子にとって」最善の利益は何かを検討し、刑務所内で親に養育されることが最も良いと判断された場合にのみ刑務所内での養育が認められているのです。

ちなみに、子どもの最善の利益や、番組でも紹介のあった愛着の形成を考えると、一緒に過ごすのは母親でなくても良いので、スウェーデン、フィンランド、ドイツ等では、規定上、父親も申請して刑務所で子育てができるとされています。また面会にも力が入れられています。
 

――今回の番組を通して、視聴者の方にどのようなことを伝えたいですか。

今回のテーマには2つの問題点が含まれています。
1つは女性受刑者には、男性受刑者とは違う特性があるという点です。女性の受刑者には自身が虐待やDVを受けた経験をもつ人も多く、精神疾患を抱える人も多いと言われています。虐待を行う可能性があるなど、子どもの最善の利益にそぐわない場合を除いては、受刑している人達が親として子どもと関わっていくのですから、女性受刑者の抱える背景に配慮しつつ、彼女達にも教育や支援を行うということが必要です。

もう1つは刑務所で生まれる子どもに限らず、親が受刑している子ども達が数多く存在するという点です。この子ども達には非はなく、他の子ども達と同様に配慮されるべきなのです。この子どもたちへの配慮については、法務省だけでは対応できず、福祉機関との協働が必要ですし、医療や心理も含めた多職種連携が求められます。そしてそこには「その子どもの最善の利益」という観点がなければなりません。このことは受刑しているのが父親であろうと、母親であろうと変わりません。

今日の番組を通じて、このような子ども達が数多く存在すると言うこと、これまで、この子ども達のことがあまり考えられてこなかったということを知って頂けたらと思います。

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